非国民通信

ノーモア・コイズミ

それでも消費税に固執する人たち

2010-04-21 22:54:14 | ニュース

増税路線へ転換模索=削減限界、与野党協議に活路-鳩山政権(時事通信)

 鳩山政権が増税路線への転換を模索し始めた。衆院選マニフェスト(政権公約)で約束した歳出削減による財源捻出(ねんしゅつ)という基本方針が行き詰まりをみせているためで、3月中旬から持論を展開し始めた菅直人副総理兼財務相に加え、仙谷由人国家戦略担当相も13日、消費増税を含めた税制抜本改革の必要性を強調した。消費増税を掲げる自民党を取り込み財政健全化の道筋を議論することで、今夏の参院選での争点化を防ぐ狙いもありそうだ。

 鳩山由紀夫首相に菅、仙谷の両氏を加えた「新トロイカ」。毎週のように昼食をともにし、官邸主導の政権運営を目指す3氏だが、13日は仙谷氏が消費税論議を一歩前に進めた。同氏は「今の税収のままなら(財政的に)大きな壁にぶち当たる」と危機感をあらわにし、消費増税を争点に任期途中での衆院解散も選択肢になり得るとの考えを打ち上げた。

消費税率、15年に10%…衆院財金委員長(読売新聞)

 民主党の玄葉光一郎衆院財務金融委員長は、18日のフジテレビの番組で消費税率について、「次の総選挙までは引き上げない。年金抜本改革も含めて1、2年で制度設計し、4年後くらいには確実に上がっているという姿にしなければならない」と述べた。

 税率については「基礎年金を全額税でやるなら4%分ぐらい必要になる。2015年の段階で10%が、ひとつの数字ではないか」と指摘した。

 さて、公務員(官僚)叩きや議員定数削減、「官」の縮小という方向性に関しては主立った与野党間で意見が一致しており、もはや「カイカクを競う」状態にある、それぞれどの党が最も主張をエスカレートさせるかを争っているような状態ですが、税制論議も似たような傾向が見えてきました。一応、菅は所得税に関しても増税の可能性を示唆したことがあるとはいえ、同時に消費税増税の可能性も除外しないと明言していただけに、やはり周囲と合意の形成できる税制、つまりは消費税増税が決着点となりそうです。民主と自民で一緒に消費税増税を主張すれば、どちらか一方だけが有権者の反発を買うことはなさそうですし。

 仙谷は税制再建を重視して消費税増税を考えているようで、この辺は「たちぽん」の与謝野氏の同志と言えますね。舛添と法人税論議で意気投合していた鳩山だったら、さらなる法人税減税の原資として消費税増税を考えているでしょうか。一方で玄葉財務金融委員長は年金を例に挙げ、基礎年金を全額 消 費 税 でまかなった場合は4%ほど必要になると語っています。別に消費税でなくとも法人税や所得税でも年金財源に回すことは可能なはずですが、政財界で「増税」と言ったら消費税のことを指すのがお約束です。

 財政再建のために消費税増税しようという連中に比べれば、年金を含む社会保障財源として消費税増税を訴えるのは、とりあえず使途の面ではマシと言えますけれど、過去の実績はどうでしょう? 社会保障目的と称して消費税額を増やしておきながら、結局は法人税減税の財源に回されたことがあったようななかったような…… まぁ過去の繰り返しになるとは限りませんが、そもそも消費税のような逆進性の強い課税形式を社会保障の財源とするなら、その逆進性を埋め合わせるためにはより一層の社会保障の充実が求められるわけです。そうなれば、さらなる財源が必要になってしまいますよね。菅は菅で「増税をしても使い道を間違えなければ景気は良くなる」と主張しているそうですが、それはあくまで貯蓄性向の高い富裕層に課税して、その分を公的支出に回した場合の話です。消費性向の高い低所得層に負担の重い消費税では、税の逆進性によって相殺される部分も多くなります。何とも非効率的ですね。

 日本の場合は消費税率の最高税率こそ5%と抑えられている一方で、軽減税率が設けられておらず、生活必需品だろうがお構いなしに一律5%の消費税が課されています。一見すると消費税率が高く見える国でも、最高税率が高いだけで生活必需品に課せられる消費税は著しく税率が低かったり無税であったりして、実は消費税の税収はそれほど多くなかったりするものです。中には10%に止まらず、15%、20%まで消費税率を引き上げろと要求する論者もいますが、この軽減税率を設けず一律20%の消費税など課そうものなら、一気に日本は世界トップの消費税大国に躍り出てしまうことになります。世界随一の「超」逆進税制国家の誕生ですね。こうなると生半可な社会保障では埋め合わせが利かなくなることでしょう。スウェーデンよりも福祉を手厚くしても、やっぱり格差が埋まらないことに……

 ところがこの軽減税率に関してすら否定的な声もあるもので、中には「レジで手間がかかる」みたいな思わず目眩のしてくるような理由を持ち出してくる人すらいるから大変です。まぁ「最低賃金を引き上げると経済が破綻する」などと、実際に最低賃金を大幅に引き上げた国では起こった試しのないことが日本では起こるかのように語る輩もいます。だから実際に軽減税率を設けている国では発生しなかった問題が、日本に限っては大問題になるかのごとく主張する人が出てくるのは不思議なことではないのかも知れません。ついでに「税制はできるだけシンプルで効率的に~」とか言い繕う人もいるわけですが、それなら間接税なんてやめて直接税に一本化してしまったらどうかとも思いますね。

 そもそも日本では消費税導入以前に「物品税」があったはずです。生活必需品には課税を控え、奢侈品には高めの税率を課す――ヨーロッパの「最高税率は高いけれど生活必需品はその限りではない」消費税に近いのは、日本の場合は消費税ではなく、消費税と入れ替わりで廃止された物品税の方ではないでしょうか。もうこの際、「消費税廃止、物品税復活」とか言ってみたら面白いような気もしますが、まぁ逆進的な課税方式の方が何かと好まれるのかも知れません。抜本的な議論とか言いつつ、ひたすら消費税増税を考え続けるだけなのが慣例ですから。

 そうでなくとも、酒税とかたばこ税とか品目別に間接税が課されているものはそれなりにあります。一部の喫煙者を見るとむしろ治療の対象と見た方が良いのではないかと思えたりもしますが(ほんの1時間も喫煙を我慢できなかったり、喫煙に良い顔をしない人をファシストと罵ったり)、ともあれ嗜好品には多めに課税するなど一律ではない課税方式は日本でも機能してきたはずです。間接税に執着するにしても、単に税収を増やすことだけではなく、徴税もまた格差是正の一環であることを踏まえた議論でないと聞くに値しません。軽減税率を設けると思うように税収が増えないので、何が何でも消費税を税収の柱にしたい人、どうしても消費税ではないと嫌とばかりに駄々をこねている人には受け入れがたいものなのでしょうけれど、そうした人の「趣味」に振り回されてはたまりません。

 

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6 コメント

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Unknown ()
2010-04-22 00:10:09
消費税増税はあまりにも馬鹿げています。
使途がなんであろうと、国内経済には大打撃ですよ。
これなら、まだ何もしない方が年金もその他社会保障も長続きします。
それでも、政治家たちはやろうとするんですよね。自分たちの面子のために。
本当に趣味と言って差し支えないと思いますよ。

政治が小さな政府を志向しているのか、北欧型の仕組みを志向しているのか全く見えてきません。
これは国民それぞれにも言えることですね。
中福祉中負担なんて、ガラパゴスの国が勝手に定義した造語で、言い逃れ以外の意味は全くありません。
はぐらかすんじゃなく、ただ真面目にやってもらいたいものです。
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Unknown (HANAKO)
2010-04-22 15:41:35
国民から収奪する目的で物より心とかいう価値観を広めている所があります。あの「ジパング」読者の人も私にそんな事を言いたそうだったし、そういう価値観が広まると進んでこの国では国民は国の為に犠牲になりそうです。
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消費税 (コンポコ)
2010-04-22 20:01:54
私としては生活必需品は課税しないか、今の5%より低くするかにし、宝石等の嗜好品は高めの課税にする形がいいのではと思います。

一般市民で消費税増税に賛同している輩は単なる思考停止か、威勢のいい言い方をしている増税論者に自己を同一化し、自分が強くなった気分になって酔いしれたいだけだと思います。
どちらもバカなのは間違いありませんが。
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Unknown (ヒイロ)
2010-04-22 21:44:04
「消費税増で社会福祉を充実させた」と真顔で言う人間がいたら「どの口が言っているんだ」ですね。
「法人税の引き上げとか、所得税の累進課税を強化したら、優遇税制を廃止したら(以下略)」と言うなら「逃げたければどうぞ」と何度でも言うつもりです。

HANAKO様の投稿で「衣食足りて礼節を知る」という諺を思い出しました。そちらの方が「物より心」より必要なことでしょうから。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-04-22 22:04:23
>魚さん

 ある意味で二刀流と言いますか、国民向けの口実として北欧型のモデルを提示し、そのための財源として一律消費税、そして法人税を減らして結果的には小さな国家を目ざすと、微妙な「使い分け」があるような気がします。何とも一貫性のない不誠実なやり方ですし、国民もどっちを望んでいるのだというところがありますが。

>HANAKOさん

 経済的な豊かさよりも精神的な豊かさを、経済的に豊かでない人々に押しつけようとする傾向はありますね。貧乏人は富国強兵のために奉仕せよと、そういう政治の性質は変わっていないのでしょう。

>コンポコさん

 消費税増税に賛成する人の中には、「自分で買い物をしない人」も多いような気がします。たぶん主婦層だったら消費税の一律増税の負担をリアルに感じるでしょうけれど、生活必需品は「配偶者/ママ」が買う、自分が直接買うのは趣味の品ばかり、そういう人だと消費税の一律増税に抵抗がないのかと。

>ヒイロさん

 とりわけ経済系の論議ではデータや実例が無視されたり、都合良く取捨選択される傾向がありますね。社会福祉を充実させた国で、本当の財源はどうだったのかとか、法人税や所得税の累進課税を引き上げた国から本当に金持ちが流出して経済が悪化したのかとか、そういうのはどうでも良いのでしょう。初めに結論ありきですから。
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Unknown (HANAKO)
2010-04-22 22:16:39
ヒイロ様
同意ありがとうございます。本当に最近物より心の風潮の影に国に為に犠牲になれという風潮を感じておりましたので。
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