非国民通信

ノーモア・コイズミ

平凡な人では活躍できない社会

2016-03-23 23:15:40 | 雇用・経済

「スーパーウーマンばかりじゃない」 大卒主婦のホンネ(NIKKEI STYLE)

高学歴で専業主婦というと、女性活躍の視点からは「もったいない」と思いがちだ。ただ、その選択をした裏にはいくつもの理由がある。1000人の主婦調査とインタビューから、意外な事実が見えてきた。

(中略)

 やむを得ず主婦になったと回答した人で最も多い理由は、家事・育児と仕事の両立が難しいこと。ところが意外にもほぼ同数の31%と目立ったのが「夫の転勤」だった。「特許事務の仕事をしていたが夫の赴任で地方に住んだら、事務所自体がほとんどない」(40代)。都市部を離れることで再就職がより難しくなる例は多い。

(中略)

 「子どもを犠牲にするか、自分が倒れるまで頑張るかの二択しかない」(30代)。「スキルがあるために責任ある仕事をする立場になってしまい、結果家事育児に支障をきたす」(40代)。有能ゆえに仕事への責任感を抱え込み、だからこそそこまで打ち込む仕事生活を選べない。

 あれも、これも、私がやらなきゃ。女性活躍社会の実現とはチャンスだけでなく、「スーパーウーマンになれ」との責務と感じる人が少なくないようだ。

 

 女性の活躍云々は安倍内閣発足時から連呼されていますけれど、進捗はどれほどのものでしょうか。確かに日本の場合、政財界の要職に占める女性の比率は至って低い、シングルマザーの就労率の高さとは裏腹に、それ以外の女性が会社で働く率もまた国際的に見て低いわけです。この現状を変えようとするかけ声は結構ですが、そろそろ成果の端緒は見え始めなければいけません。しかるに女性を(日本企業から需要のある)安価な非正規労働力として活用したがっているのか、それとも男性と肩を並べるキャリア女性を増やしたがっているのか、今なお判然としないところすらある気がしますね。

 さて日経新聞社の調査によると、大卒女性が主婦になった理由としては定番の「家事・育児との両立が難しい」の他に「夫の転勤」が多かったようで、この結果を報道は「意外」と評しています。そんなに、意外なのでしょうか? まぁ人によっては夫の転勤=単身赴任が当たり前、それは妻側のキャリアとは無関係と、そう考えている場合も多いのかも知れません。しかし、これもまた社員が「仕事優先」で動いてくれるという雇用側にとってのみ都合の良い前提に基づいた社会認識であるように思います。

 引用元では「『スーパーウーマンになれ』との責務と感じる人が少なくない」とも伝えられています。「働かせる」側は会社での仕事のほんの一部しか理解できないものである一方、「働く」側には生活上の負担も色々とあるわけです。「仕事だけ」の昔ながらの男性社員ですら過労死するのが日本社会なのですから、それと家事・育児の両立はスーパーウーマンにならないと難しい、夫側も(世間の女性が結婚したいと思うほどの)収入がある職に就くのであれば相応に拘束される仕事である場合が多いでしょうから、家事の分担だって男がスーパーマンでない限り期待するのは無理筋です。

 いろいろな面で二極化しがちなのが日本社会でもあるのかも知れません。会社勤めも然り、仕事優先を当然視されて闇雲に地方へ飛ばされたり深夜まで付き合いを強いられたり、それを受け入れないとマトモな収入のある職に就くのが難しい、逆にスーパーウーマンでなくとも家事・育児と両立しうる範囲の仕事となると薄給の非正規雇用ばかりになってしまうといえます。結果として非正規に止まったり専業主婦に甘んじる人も多い、このような有様ではやはり女性の活躍とは言いがたいでしょう。都合良くスーパーウーマンが畑から取れるのでもなければ、もう少し何かを改めなければならないはずです。

 結局のところ、女性だけではなく男性の場合も含めて「ほどほど」の働き方を日本の会社が認めていないことに大きな問題があるのかな、と思います。つまり「スーパー」ではない「平凡な人」を想定した雇用ですね。とりわけ昨今は、たかだか正社員ごときで特別なものを期待されがちですけれど、そうなると必然的に「仕事優先で生きられる人」すなわち「家事育児の負担を配偶者に押しつけられる人」しか活躍できない社会になってしまいます。そうではなく、「ほどほどの働き方」でも年金受給年齢まで雇用が保障され、子供を育てて老後の資金も蓄えられる程度の収入が得られる、そうならなければなりません。しかし「ほどほどの働き方」が許されない、それを望むならば非正規しか道がないのが今の日本で、その欠陥が少子化や男女格差にも繋がっていると言えます。


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2 コメント

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Unknown (IG)
2016-04-03 04:42:29
> 「ほどほど」の働き方を日本の会社が認めていない

まあ会社に限らず、消費者を含め、すべての日本人でしょうね。企業というのは消費者の要望に応えようとする組織であり、株主・銀行(の預金者)の望むことを行う組織であるわけで。

注文した品物が指定した日時にちゃんと届く、電車が定刻に来る、電気・ガス・水道がいつでも使える、銀行預金の残高が何もしなくとも正しく維持される等、日本では当たり前だけど、世界の他の国々ではまったく当たり前ではないことはたくさんあります。

確か、日本在住のフランス人だったかが、日本社会を「高度に管理された温室」と評していましたが、この「温室」を維持するための代償というのが結構大きいと思いますね。

サプライ チェーンの中にいる人々が高度に協調しながら働かなければ、こうはできないわけでして、どうしても負担が重くなると。海外のサプライヤーから日本の消費者・バイヤーはかなり嫌われている、という話も聞きますしね。とにかく細かい注文が多くて対応が大変、そのくせ支払いが渋い、ということみたいですが。

Unknown (非国民通信管理人)
2016-04-03 11:21:33
>IGさん

 そういう認識は典型的なホルホル言論ですね。「海外」が「日本とは違って」管理されていない/日本は特別、という思い込みは改めた方が良いですよ。

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