非国民通信

ノーモア・コイズミ

定期昇給とはなんぞや

2024-03-24 22:20:20 | 雇用・経済

春闘の賃上げ率、2回目集計も5・25%と高水準…中小は4・50%(読売新聞)

 連合が22日発表した2024年春闘の第2回集計結果(21日午後5時時点)によると、平均賃上げ率は前年同期比1・49ポイント増の5・25%だった。15日に公表した初回集計の5・28%とほぼ同じで高い水準を維持している。

 賃上げ率は、基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた額で集計した。回答数は1446組合で、初回から倍増した。ベア分は3・64%となる。賃上げ額は4825円増の1万6379円で、ベアは4668円増の1万1262円だった。

 大手に続き、中小企業の交渉が始まっている。組合員数300人未満の企業の賃上げ率は1・11ポイント増の4・50%だった。初回集計の4・42%よりもわずかに上昇している。

 

 さて春闘も結果が揃いつつありますが、これまでに比べれば随分と良い数値が並んでいるようです。大企業であればベースアップと定期昇給を合わせて平均5.25%、中小企業でも4.5%とのことですので、このペースが続けば多少は希望も見えてくるでしょうか。私の勤務先の親会社グループも今年は業界平均を上回る賃上げを行ったらしく、その企業名が紙面を賑わせたりもしていました。しかるに組合から渡された資料に記載の賃上げ額とメディア報道で伝えられている賃上げ率がどう一致しているのか、今ひとつ私には分からなかったりします。

 私の勤務する企業グループの場合、純粋にベアと呼べる基本給部分については数百円程度の増に止まり、比率としては「ほぼ0」でした。一方で評価に応じて支払われる成果給については8000円超のアップだそうで、これをベースアップに含めて良いのかどうか疑問に思うところですが、平均的な評価であれば恩恵にあずかれるとは言えます。これに家族構成に応じた扶養手当の増額を含めると総額で1万円に到達する計算になり、大幅な賃上げを勝ち取ったと、組合はそう誇っているところです。

 単身者も今は珍しくないだけに、扶養手当を満額で計算して成果をアピールする組合の姿勢には疑問を感じないでもありません。でもパワハラ上等で接待漬けの古い体質が抜けない御用組合からすれば、結婚して世帯を持ち家族を養う、それが「普通」なのでしょう。ともあれ組合の公表するモデルケースでは1万円の賃上げ、一応は私が入社して以来の最大幅ではあります。しかしメディアの報道によると、勤務先グループの賃上げ率は組合の誇るよりもずっと大きいらしいのです。

 冒頭の引用のように、賃上げ率はベアと定期昇給の合算で発表されるのが通例です。私の勤め先の場合も、組合の発表額に「定期昇給」を追加すれば新聞やテレビで報じられているような賃上げ率に合致するものと推測されます。ただ定期昇給の「定期」とは、「誰でも定期的に」という意味ではありません。社員としての等級が一つ上がった場合の昇給分と組合のアピールする賃上げ分を合算すれば、だいたいメディアで伝えられている賃上げ率に近い計算結果が得られます。しかし昇進しなければ「定期昇給」分などないわけで、この場合はどういう計算になるのでしょうか?

 近年、初任給ばかりを大きく引き上げようとする会社も見られるようになりましたが、それまでも初任給は横ばいが基本で少なくとも下がっては来ませんでした。ただ初任給が維持されてきたにも拘わらず、日本で働く人は30年前よりも貧しくなってしまったわけです。それは結局のところ入社した後の賃上げがなかったからで、昔は入社10年もすれば給料は倍になった、一方で氷河期の採用ともなれば入社10年でも新人時代と大差ない給与のまま据え置かれているケースが珍しくありません。定期昇給が重なっていれば親世代と同じ程度の賃金を得られたはずの人が、定期昇給とは無縁で入社当時と変わらない賃金で働き続けている、日本が貧しくなった原因はそこにあるように思います。

参考、年功序列でないことだけは確かだ

 もちろん私の勤務先でも昇進を重ねる人はいます。そういう「定期昇給」を重ねる人であれば、報道にあるような大幅な賃上げと矛盾しないのでしょう。しかし、長く働いていても昇給の機会から遠ざけられている人もまた少なくありません。その場合はメディア上で流布される華々しい賃上げ率とは大きくかけ離れた給与しか得られないわけです。長く真面目に働いていれば定期的に昇給する、そんな仕組みがあれば社員も希望がもてる、仕事へのモチベーションも上がるのでしょうけれど、現実は真逆です。人件費を減らして内部留保を積み上げる上では効果的であったのかも知れませんが、その結果として日本社会はどうなったのか、日本の経済的地位はどうなったのか、顧みられるべきものは少なくないと言えます。

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