非国民通信

ノーモア・コイズミ

大半は給与面の問題なのだが

2015-12-20 11:37:51 | 雇用・経済

(宅老所の現場から)「人として向かい合えるか」(朝日新聞)

 介護職の人材不足は深刻だ。千葉労働局によると、介護職の有効求人倍率は3倍前後の状況が続く。県によると、団塊の世代が75歳以上になる2025年は、今より約5万人多い11万5千人が必要になるが、現在の増員ペースだと、2万3千人が不足する見通しだ。

 不人気の理由の一つは低賃金だ。同労働局によると平均月収は17万~21万円、全職種平均より2万~5万円少ない。国は4月の介護報酬改定で、職員賃金が平均1万2千円相当上がるよう加算制度を拡充した。

 淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授(46)は人材不足による介護の質低下を懸念する。一方で「達成感が感じられる職場は離職率が低い。すべてを給与面では計れない」と指摘する。

 

 さて「マトモな」求人には応募者が殺到し就職難が続く一方で、時給700円のアルバイトを募集する事業者は人手不足を嘆くという昨今ですが、介護人材の不足もまた深刻視されているわけです。必然的に高齢化が進む中で将来的な不足は千葉だけでも2万3千人との予測が伝えられているところ、信頼性はどれほどのものでしょう。この手の予想は甘い見通しに立ったものが多いと言いますか、10年後には思い描いていたよりも危機的な現実が待っているかもしれません。

 先日は「上司から提案されたら、転職を思いとどまる条件」のアンケート結果を取り上げました。結果は「給与額が現在の1.5倍になる」を選んだ人が圧倒的多数で、その他の条件を挙げた人は微々たるものでした。個々人を掘り下げていけば様々な問題はあるとしても、最大公約数的な問題は「カネ」なのです。稼げる職であれば激務でも汚れ仕事でも人は集まる、逆に薄給であれば人は集まらない、志を持った人でも離職していくもの、それが現実です。

 例によって介護職の不足の原因として低賃金が指摘されています。国は職員賃金が1万2千円相当上がるよう加算制度を拡充したとのことで、まぁ何もしないよりはずっと良いことです。しかし同時に介護職の月収は全職種平均より2万~5万円少ないことも伝えられています。1万2千円程度でも賃金が上がるのは、間違いなく良いことでしょう。しかし、もくろみ通りに報酬が上がってもなお、他の職種の平均を下回っている現状は変わりません。離職者を思いとどまらせるだけの対価としては、まだまだ不足があります。

 なお淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授は「達成感が感じられる職場は離職率が低い。すべてを給与面では計れない」と語ります。いかにも典型的な日本的経営感覚といった風情ですね。こういう人が、本当に必要な対策――すなわち待遇改善――の必要性から目を背けさせてきたと言えます。ブラック企業の代名詞的存在であるワタミでは「ありがとうを集める」のが仕事だと説かれているように、「やりがい」なり「社会貢献」なり「達成感」なり、偉い人はそうした精神論で押し通すことを好むものです。それが良い結果を生んでいるかどうかには目もくれず……

 しかしまぁ「達成感」とやらは、何によって得られるのでしょうか。苦しい仕事でも巨額の賃金で報いられるなら、「やり遂げた」と概ね達成感は得られそうです。逆に過酷な仕事にもかかわらず微々たる給与しか与えられないのなら、それは徒労感をもたらすものではないでしょうか。同じ作業に従事させる場合でも、多額の報酬を受け取ったグループは「有意義な仕事をした」と感じ、逆に対価を支払われなかったグループは「無駄な仕事を強いられた」と感じると、心理学の本で読んだ記憶があります。まぁ、当たり前の話ですよね。達成感が感じられる職場は離職率が低いのかもしれませんけれど、では最も汎用的に達成感をもたらしてくれるのは何か、それを考えれば結局は同じ結論にたどり着くはずです。

 

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1 コメント

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Unknown (nordhausen)
2015-12-23 18:59:43
>10年後には思い描いていたよりも危機的な現実が待っているかもしれません。

今や少子高齢化が凄まじい勢いで進行していますからね。そもそも、少子化が進行している要因が、不安定な雇用及び低賃金にあるのですがね。出生率を上げて少子化を少しでも抑制したければ、賃金そのものを上げて子供を大学まで行かせるだけの経済水準にしないと難しいのではと思います。

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