非国民通信

ノーモア・コイズミ

全く支援になっていない

2007-03-12 22:24:42 | ニュース

働く一人親に月1万円 生活保護脱却へ就職支援 「母子加算」段階的廃止(産経新聞)

 厚生労働省は4月から、15歳以下の子供を持つ1人親の生活保護世帯に対し、親が働く世帯には月1万円、働いていなくても、職業訓練や自立支援プログラムを受けている世帯には月5000円の就労促進費を支給する。「母子加算」の段階的廃止に伴う措置で、就職を促して、生活保護からの脱却を進めるのが狙い。

 母子加算については、16~18歳の子供のいる世帯では、17年度から、16年度支給額の3分の1ずつの減額が始まり、19年度にゼロになる。

 この4月からは、15歳以下の子供のいる約9万1000世帯を対象に、同様に3分の1の減額がスタート、21年度には全廃される。就労支援金は、21年度までは減額後の母子加算額と比較して多い額を支給する。

 生活保護の支給額は世帯の年齢構成や居住地域で細かく分かれているが、例えば、東京23区に住む「母30歳、子9歳の2人世帯」の場合、18年度は毎月生活費分12万4080円と母子加算2万3260円が支給されている。19年度の母子加算は、その3分の1に当たる7750円が減額される。この場合の加算額は1万5510円となるため、親が働いていても就労促進費の1万円は支給されない。

 母子加算の廃止は政府の社会保障費抑制策の一環。生活保護を受けずに勤労収入で生活する1人親世帯よりも生活保護世帯のほうが収入が多いケースもあり、不公平感を解消する目的もある。厚労省は「社会福祉事務所は就労相談など自立支援プログラムを用意しており、保護世帯の『自立』を促したい」としている。

 保険会社で請け負い仕事をしていたこともあるのですが、そこの保険会社によると二人世帯が生活に必要な額は月に24万円だそうで、趣味や旅行などのゆとりある生活のためにはプラス14万円が必要なんだそうです。保険会社の人は「生活には最低でも月に24万円はかかりますよ」と、そう言って傷病や疾病、死亡時の備えを迫るわけですね。それにしても、国の定める健康で文化的な最低限度の生活にかかる費用との間で随分と金額の開きがありますね。厚生労働省の人と保険業界には、是非並んで話をしていただきたいものです。

 いずれにせよ、この政策にはおかしなところだらけです。ただでさえ母子家庭は貧しいのにその母子加算を削減する辺りから問題があるわけですが、その代替措置であるはずの就労支援金はわずかに1万円、社会保障費抑制策の一環と位置づけられていることからも明らかなように、母子家庭の側からすれば差し引きの受給額は確実に減るわけです。その就労支援金にしたところで、減額後の母子加算額と比較して多い額を支給するとのこと、つまり現状では母子加算額は減るものの、その母子加算額が1万円を切るまでこの就労支援金受給資格は満たせないわけで、実質的には手当が減るだけで得るものはない、一方的な削減です。

 勤労世帯よりも生活保護受給世帯の方が収入が多いケースがあり、そこに不公平感が云々と問題をすり替えようとする輩もいるようです。しかし生活保護支給額は国が定める健康で文化的な最低限の生活にぎりぎり必要な額であって、働いてもそれ以下の収入しか得られないというのであれば、それは最低保証賃金が低すぎることを示している訳で、どちらが調整されるべきであるのかは言うまでもないはずです。いずれにせよ母子家庭の場合、生活保護水準以下の賃金で働く勤労世帯=ワーキングプア世帯は生活保護は受給していなくとも母子加算を受給している割合は低くないわけで、今回の制度改正は勤労世帯側にとってもマイナスであり、どう解釈しても公平性を保つものではありません。

 そもそも母子加算の本来の目的は、ワーキングプア世帯と生活保護受給世帯の不公平感云々ではなく、子どもの面倒を見ながら働く人と自由に働ける人との格差を補填するものであったはずです。つまり小さい子供を抱えており、その世話が必要となると勤務形態に融通が利かない、フルタイムで働けない、残業、転勤ができない、子供の事情のために休暇を取れる環境である必要があるなど、こどもを抱える母親には様々な制約があるわけです。そしてその制約は捨てるわけにはいかないものなのです。

 現時点では、フルタイム勤務をベースに残業あり、転勤あり、休日出勤あり、変則シフトあり、休暇の取得は原則禁止、その辺を受け容れないと正社員として働けないケースが大半を占め、昨今では派遣社員ですら残業や変則シフトなどの条件を呑まなければ仕事が見つからない有様です。自分一人で働ける人はまだ、我慢すれば仕事にありつけるかもしれません、しかし、小さな子供の世話をしながら働かねばならないとしたらどうでしょうか?

 子育てに支障のない範囲で働ける仕事を探すとなると、今度は最低保証賃金ぎりぎりの仕事しかない、働いても生活保護水準以下の賃金しか得られない、それが現実です。子育てと両立できる範囲の仕事にはまともに稼げる仕事がないから、それで生活保護が必要になってくるわけで、その生活保護受給世帯を減らしたいと思うのであれば、子育てしながらでも就労可能であり、かつ充分な賃金を得られる仕事を必要な世帯に行き渡らせねばならないはずです。

 そのためには、託児施設の増設と改善、正社員と同待遇の短時間勤務の導入促進、正社員の待遇を底上げして、残業不可、転勤不可、変則シフト不可、休日出勤不可でも正社員として採用されるように是正すること、職務経歴に空白期間のある人に対しても門戸を開くこと、こういった施策が必要です。いくら自立支援と銘打ったところで、まともな働き口が増えない限り解決になるはずもなく、子を持つ母親の雇用情勢を劣悪なままに放置しておきながら、母子加算を先行して減額する、これは弱者の切り捨て以外の何者でもありません。

 

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5 コメント

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1万円といえば (京成パンダ)
2007-03-13 15:07:11
松岡くんが愛飲してる水2本ってことですね。温室育ちの安倍やそのお友達には庶民の生活なんて想像できないんでしょうな。「美しい国」づくりの第一歩は安倍政権の壊滅、選挙で叩き潰してやりましょう。
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Unknown (非国民通信管理人)
2007-03-13 23:38:42
牛乳1リットルや食パン1斤の値段は知っていたが、それは、政治家が困窮者を批判したとき、やり返す格好のネタになったからだ。 ―――ポリー・トインビー

大統領候補のほとんどが、牛乳の値段を知らなかったというのは偶然じゃない。こういう連中はもう何十年も安売りチェーン店の中に足を踏み入れたことはない。 ―――マイケル・ムーア

そして我らが松岡くんは水1リットルの値段が5000円くらいだと思っているわけですね。母子家庭や貧困層の実態をまるで無視した福祉政策もむべなるかな、です。仰るとおり、「美しい国」のためにお坊ちゃま達には早々に退陣願いたいものです。
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あのね、 (y-burn)
2007-03-14 15:55:30
よい子のみんな~、お役人の言葉は真に受けちゃいけないんだよ~

「自立支援」って言葉はね、
「お前ら社会的弱者はうちらは面倒見らんのじゃ、勝手にやってのたれ死ねや、ゴルァ。浮いた金はうちらのボーナスなんじゃ~」
ってのを、砂糖でコーティングした言葉、なんだね~。
わかったかな~?

こんなクズのような精神でないと、お役人ってやってられないんだね~。

あれあれ~、将来の夢は公務員、って言ってるね~そこの君?

いいから、表に出ろ!性根たたき直したる!
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Unknown (非国民通信管理人)
2007-03-14 23:16:10
 考えてみれば公務員って不思議な仕事ですよね。普段は公務員を良く言う人なんていないのに、親が子供に就かせたい職業のナンバー1、現実に就職を考える時期の学生が望む就職先としても常にトップを争うわけですから。

 民間企業ではほとんどが派遣社員などの非正規雇用に置き換えられてしまった一般職、転勤なし残業なしの一般職的な仕事が公務員には温存されている、しかも将来的な雇用の継続と昇給が保証されているわけで、これは子育てに追われる母子家庭の母親にも勧めたい仕事であるような気がします。どうせならもう、国民全員公務員にしてしまえ、そんな風に思うこともあります・・・
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Unknown (うぺぽ)
2007-03-22 19:25:10
将軍様の国は国民皆公務員ですよ。^^馘首になったら即餓死ですけどね(笑)
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