lens, align.

Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

砂漏の生命 - ghost in a sandgrass.

2009-06-26 06:05:24 | Science
人間が「自我」や「意識」と呼ぶ処のもの、即ち「心」の実存を捉えるにあたって、「死」あるいは「忘却」は避けては通れない要素である。

心によって演繹的に情報という形態を付与される心という存在の循環性は、その本質をパラレルな構造に転写することによって俯瞰可能になる。「心が存在するかどうか」ではなく、「心を定義する」座標次元へのジンバル転回だ。



夥しい量の砂粒が敷き詰められたガラスケースを想像してみてほしい。その砂の一粒一粒が、宇宙の森羅万象を発現するn次元要素(n>0)と置いてみると、単位的環としての総体に対して標数となる個々の砂粒の挙動は、準同型の素環を為す。


このような空間において、人間という要素にとって心は内側に秘された概念的な存在ではなく、万物の振る舞いを決定する一要素として外側に並列される。自明なことに、自我と意識、精神とされるものは絶えず外界と相互作用して発現するものであり、物質に一元的に準位し共変するものである。



では「自我」とは誰のものであろうか。

これらの砂を敷き詰めたケースの底を破断すると、砂の摩擦運動による粉体流が発生する。媒質としての砂の流れには固有の構造が発生するが、ここで重要なことは、サンドケースというdomainの外側に流れ落ちる砂の運動が、系の内部の粉体流の構造を決定するという様態にある。


最初に砂のケースを単位的環と置いたのは、物質現象と精神活動の間にある可換性を明白にする為であるが、サンドグラスは宇宙の総体の例えであると同時に、その粉体流のクラスターにhomomorphic(準同型写像)を持つものとして表現するものである。

ドメインの外側へと落ちる砂は内部の相を時間依存的に破断し、また形成している。さながらサンドグラスの内側に魂を宿すかの如く、「失われることによって発現している」のである。砂を落とす現象は重力に拠るものであるが、ここではエントロピーによって引き起こされるあらゆる相転移への定向性と置き換えて頂きたい。



「死と忘却」・・・意識が忘却の賜物であるように、サンドグラスの中の死は、位相的かつ時間的に生者の振る舞いに写像される。このグラスケースはあるいは、宇宙の中にある個への回帰的な逆写像、自己同型と捉えられる。ここで命題が循環する。

「心」の座す所とは何か。


「他者(自己)の忘却」が「自己(他者)の意識」を構築するとは理解出来ても、日常の感覚においては、その関係性が"n次元連結的"であるとまでは及ばないかもしれない。これはユングによるところの集合的無意識は全く別の概念である。それでは、「自己の死」は、系の内部に散逸する自己にとってどのように反映されるのか。自ら至ることによって持ち出せない場所、答えはそこにしかない。


因って人間がそれぞれ主観する自己意識は共有のものであり、同時に固有の存在でしか有り得ない。ただ、他者の死は我々と共にあり、忘れられることによって思い出されている。「心」とは、そうして普く熾されるところのものなのだ。




□ clip.

工学:自由落下粉体流の破断とクラスター形成の高速追跡
High-speed tracking of rupture and clustering in freely falling granular streams
pp1110 - 1113

Freely falling granular streams break up into characteristic droplet patterns similar to liquid flows, but the clustering mechanism remains unresolved. Here, imaging and microscopy data reveal that tiny cohesive forces are responsible, corresponding to a granular surface tension some 100,000 times weaker than in ordinary liquids.

John R. Royer et al.
doi:10.1038/nature08115
Abstract: http://forcast.emailalert.jp/c/abrvadczjpfO6Lbb
Article: http://forcast.emailalert.jp/c/abrvadczjpfO6Lbc




粉粒体媒質:砂の流れの中の構造
Granular media: Structures in sand streams pp1064 - 1065

An ingenious experiment that involves dropping a costly, high-speed video camera from a height of several metres reveals how free-falling streams of granular matter, such as sand, break up into grain clusters.

Detlef Lohse and Devaraj van der Meer
doi:10.1038/4591064a
Standfirst: http://forcast.emailalert.jp/c/abrvadczjpfO6LaB
Article: http://forcast.emailalert.jp/c/abrvadczjpfO6LaC