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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

Trentemøller / "Harbour Boat Trips 01: Copenhagen"

2009-06-05 18:58:51 | music9
Copenhagen


□ Trentemøller / "Harbour Boat Trips 01: Copenhagen"

I Turn My Face To The Forest Floor
Devil’s Water
Melody Day (Four Tet Remix)
The Copenhagen Experience #1 / Tained Love

Release Date; 20/05/2009
Label; hfn music
Cat.No.; hfn01cd
Format: 1xCD

>> http://www.hfn-music.com/ (Samples)
>> http://www.anderstrentemoller.com/


>> tracklisting.

01. Grouper: Heavy Water/I’d Rather Be Sleeping
02. Gravenhurst: I Turn My Face To The Forest Floor
03. Emiliana Torrini: Lifesaver
04. I Got You On Tape: Somersault
05. Beach House: Gila
06. The Brian Jonestown Massacre: Anenome
07. The Raveonettes: Aly, Walk With Me (Nic Endo Remix)
08. The Hypothetical Prophets (Proroky): Back To The Burner
09. Suicide: Cheree
10. Muscleheads: Phosphorescence
11. David Garcet: Confidence (New Wave Remix)
12. Rennie Foster: Devil’s Water
13. Caribou: Melody Day (Four Tet Remix)
14. The Raveonettes / Trentemøller: She’s Lost Control
15. A Place To Bury Strangers: I Know I’ll See You
16. Suicide: Ghost Rider
17. Khan: Fantômes
18. Trentemøller: Vamp (Live Edit)
19. Two Lone Swordsmen: Kamanda’s Response
20. Copenhagen Collective: The Copenhagen Experience #1 (Trentemøller Edit)
21. Soft Cell: Tainted Love



デンマーク・エレクトロニカシーンの新星、Anders Trentemøllerがデビュー以来初めて手掛けるDJ Mix Compilation。Poker Fat傘下の新進レーベル、hfn musicの立ち上がりにあたって、ミックス・シリーズ『Harbour Boat Trips』の第一弾リミキサーとして起用されました。


2006年にリリースされたTrentemøllerのスマッシュ・ヒットアルバム、"The Last Resort"はヨーロッパで7万枚のセールスを記録、音楽各誌の大絶賛と受賞を受け、一躍トップ・クリエイターの仲間入りを果たし、今年に入ってはDepeche ModeのRemixerにも抜擢されました。


『北欧エレクトロニカ』など、何かと鳴り物入りに喧伝される"The Last Resort"の作風は、私にとってはどうにも耳触りが心地良過ぎて、逆に狐につままれたような、気を許せないような...と、何となく素直に聴くことが出来なかったのですが、今回、Trentemøllerのインスピレーションのルーツを垣間見せるという、このコンピレーションを聴いて、「あぁ、なるほどな。」と、一気に溜飲が下がったような思いがしました。



今作に収録されているのは、ネオフォークやポストロック、パンクを筆頭に、彼が日常の様々なシーンで愛聴しているという幅広いジャンルの楽曲たちを、自身の得意とするミニマリスティックなシンセ・サウンドやハウスビートに滲ませた、湿っぽくも尖りのある、錆色の哀愁に溢れた内容。

"The Last Resort"や、自身のRemix集である"The Trentemoller Chronicles"で見せたエレクトロ・テクノな響きよりも、どこか60-70年代のバンドサウンドに通じるような、アコースティックな音色が主張している曲が大半を占めています。


一曲目を飾るGrouperの"Heavy Wataer"は、アルバムの冒頭から北欧の透明な空気を吹き込むボーカルトラックですが、実はアメリカのオレゴン発信のユニット。この曲に限らず、他の収録曲の出自は北欧勢に限らずUK、アメリカの音源が意外と多いです。

面白いのは、1970年代に活動したシンセ・パンクデュオ、Suicideから二曲を取り上げ、アルバム全体のカラーに馴染ませていること。アルバムのトリを務めるSoft Cellは、Suicideに大きく影響を受けたバンドだし、Trentemøllerの同郷デンマークのロック・デュオ、The Raveonettesがここでカヴァーしてる"She’s Lost Control"を書いたJoy Divisionも、彼らの作風を色濃く継いだフォロワーとされています。



"Copenhagen"の全体色に関しては、19曲目の"Two Lone Swordsmen"のフィーチャーも興味深いものがあります。TLSのAndrew Weatherallは1980年代からクラブシーンにおいてロックとテクノの融合を試みた第一人者であり、あのPrimary Screamを輩出したプロデューサーで、裏舞台の実力者として余りにも有名。"Copenhagen"におけるポストロック、テクノとの折衷的なコンセプトのオリジンが、そこに集約されているとも思えます。


アルバム中で強烈なアクセントとなっているCaribou(a.k.a. Manitoba)の"Melody Day"は、70年代グループサウンズに通じるレトロなサイケロック様式。序盤で妖精の如く澄んだ存在感を見せつけるEmiliana Torriniの"Lifesaver"は、港に浮かぶボートの軋みが効果的に使われた、漂うようなトリップホップで、"Copenhagen"のテーマカラーを固着させる作品の一つと言えるでしょう。



他にもジャンル問わず様々な楽曲が彩り豊かに配されていますが、作品全体を俯瞰して受ける印象は、それぞれの楽曲がアクのある歌謡曲の体を成しているにも関わらず、まるでアンビエントみたいに溶け込んで聴こえるということ。何時か何処かで微睡みながら、或は白昼夢の中で耳にしていた「ふすま越しの歌の輪郭」の朧さが心地良い、そんな情緒が感じられます。