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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

The Village

2005-05-13 00:42:13 | 映画
───言葉を連ねて何になる? -ルシアス・ハント『ヴィレッジ』

※若干ネタバレ含みます。

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M・ナイト・シャマラン監督の"The Village"を観ました。
予告と前説から予想していたオチがズバリだったので、驚きは全くなかったのですが(実際安易に推理出来ます。)この作品の魅力は何と言っても長閑な映像美に散りばめられた寓話性にあります。"Unspeakable"の描写も実に不気味で、子供の頃に想像に描いた恐怖を見事に再体現しています。時々フォーカスをずらしたり、カメラを揺らしたりと"映像で語ること"に重点を置いているのが良く汲み取れる。

森に閉ざされた村、年長者が抱える「秘密」(秘密は隠されることでそれ自身を語っている。)そして「無垢への回帰」。このお話は普遍的に語られる怪談などの民間伝承の本質的なありように着想を得ています。「まやかしの恐怖」の存在理由。盲目のヒロインが伴侶を救うために灰色の森に踏出すシーンからは戦慄とカタルシスが同時に伝わってきます。人は恐れるから勇敢になれるのだと。まやかしによって植付けられた恐怖と対峙しながら、手探りで道を拓く姿には、人間の普遍的な要素を感じずにいられない。目が見えていても見えなくても、森は誰に対しても森であって、誰もが自分の知っているだけの現実と向き合わなければならないのです。そしてその普遍性が、外界から閉ざされた無垢のはずの世界に悲劇を齎してしまう。比喩的に言うと、まやかしが現実を食らい表出する瞬間。それは現実に起こっている問題そのものの写し身であった。しかしヒロインは手探りで辿った道の中で現実に乗り越えた脅威をコントロールして、まやかしから降りてきた"怪物"をその中に捕えてしまいます。

私達も知ることが出来るでしょうか、自分にとって得体の知れないものの由来が、自らの存在と深く関わっていることを、あるいはそれ自身に欺かれているということを。超過の道は真実に通じているかもしれない。だけど彼女が最後には恋人の元に帰還したように、自分にとって最も大切なものの所在こそが、自らの居場所であり、帰るべき場所であるのだろうなと思う。

その村は閉ざされてはいなかった。外界に対して最も強い意思を行使している境界だったのです。何より継ぐ者達の未来が、その外界に対して与える影響こそ、掟を作り上げた年長者にとって最も大きな価値を生むものになるだろう。というお話についてのお話。James Newton Howardとヒラリー・ハーンによる、儚くも力強い美しさを放つ音楽も終始素晴らしい。


□ Tunes of the Day

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□ Enigma / "The Screen Behind The Mirror"

Push the Limits

Enigmaにとって最も革新的なサウンドだと感じるのがこちら。
Karl Orffの『カルミナ・ブラーナ』から"O Fortuna"をベースモチーフに、
1stアルバム"MCMXC a.D."の反芻を基型とする本作品にあって、
鋭い自己言及を投げかけています。アルバムで用いられるパーツを
総て凝縮し、ドラムループを規則性に従って分散、階層化させ
立体感を演出。さながら『音のアーミラリスフィア』といった
様相を呈しています。グラウンド・ビート後拍のニ音の強弱を反転させた
まるで反射音のようなリズムがアルバム全体に満遍なく顕れていますね。
ピチカートの主旋律には、低音部の対旋律を絡めており、構造的な主題も
一貫しているようです。"Traces(Light & Weight)"は、"Camera Obscura"
(写真装置の暗箱)のプリズムに射し込みスクリーンに漂い揺らぐ光子の
質感や、その出自に関わる形而上の感覚を覚えさせる見事なコラージュ。
"Smell of Desire"では"Mea Culpa"のダイアログと"Sadeness"の反転聖歌
が再解釈の内に反復される他、表題曲で現れる"The Rivers of Belief"のギターフレーズ
など、作品全体に装置的な細工を施していて、聴くたびに発見や啓示が絶えません。
私がこの5年間、そしてこの先も最も強く対峙し続けているであろう作品です。


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□ Harland / "Salt Box Lane"

In the Dark
Salt Box Lane


Shelley Harland。ソロアーティストとして活動する傍ら、
Junkie XL、Pole Folderなど、数々のクラブ・ハウス系作品に
ヴォーカルを提供、DeleriumのライヴツアーにはKristy Thirskと
デュオで参加し、Pillofiteを結成。Delerium"Chimera"の
アウトトラックで、iTunes等で聴ける"Above The Clouds"を
共作、ヴォーカルを取っています。

最近ではSleepthief"Desire of Ages"の壮大なEnigma/Delerium系
サウンドにのせて、素晴らしい歌詞を書き上げて歌っています。
何処か幼さを残しつつ、エキゾチックな感触も併せ持っているのが魅力。