サッカー日本チームの敗戦は実に残念な結果だった。しかし、これで少し普通の生活に戻れるかなとほっとするのも本音だ。
何か気の抜けた気分の中、一本のワインを開けてみた。お客様におみやげでいただいたニュージーランド産のキウイワインだ。いただいておいて恐縮だが、甘いだけのものかなと思っていたが、これがとても美味しい。爽やかなキウイ独特の酸と甘みがとても良い。このキウイワインを炭酸で割ってスプリッツァーにしてみると、これがさらに美味しい。これからの熱い季節にうってつけであろう。
どこか、気持ちの中に空洞が出来たような気分をも癒してくれる爽やかさがあった。
お客様も、クアトロでこころに開いた穴を美味しいパスタとワインで埋め合わせていただきたいものである。
カリフォルニアのワイン・ジンファンデルは野性的で荒々しい酸と艶やかな果実味を合わせ持った独特な味わいの赤ワインだ。
クアトロの父はこういったスタイルのジンファンデルのファンなのである。
しかし最近そのイメージに合うジンファンデルに出会えていなかった。
クアトロ新着ワイン、セゲシオ・ジンファンデル２００８は久しぶりにクアトロの父のイメージに合うスタイルである。
ワインは一口目の印象がとても大事である。
このセゲシオはその一口目から魅惑的な香りと果実味がとても素晴らしい。
名作「キッスで殺せ」のオープニング。
「キャー」という女の悲鳴。
裸足の女が闇の中から走ってくる。
何者かに追われているのだろうか。
そして映画史上あまりにも有名なオープニングタイトルが画面の上から被さってくる。
その後、女を助けた探偵マイク・ハマーは、女がいい残した「私を忘れないで」という言葉から事件へと巻き込まれていく。
男は、セゲシオのジンファンデルの香りにまず魅了され、次にその液体を口に含むと、ワインが語りかけてくる。
「私を忘れないで」
この後、男は・・・。
スペイン・ラマンチャで作られる“オベハ・アル・ロメロ”は表面をローズマリーで包んだ羊乳チーズだ。
羊乳ならではのきめの細かい乳脂肪のコクと甘みに、爽やかなハーブの香りが素晴らしい余韻を楽しませてくれる。
名作「第三の男」のラストシーン。
ウィーンの並木道をアンナがこちらに向かって歩いてくる。
脇で男がアンナを待っている。
アンナは男に見向きもせずに通り過ぎていく。
男はゆっくりとタバコを吸う。
セリフや解説はなく、切ないメロディーが流れるだけ。
この後、男はアンナを追って行くのだろうか、このままアメリカへ帰るのだろうか、最高の余韻を残す名画だ。
オベハ・アル・ロメロの爽やかな余韻がのど元を過ぎていく。
片手には白ワインが注がれたグラスがある。
この後、男は・・・。
クアトロ新着フランス産“ガプロン”はチーズの名産地オーヴェルヌ地方の伝統的なチーズだ。
ゴールネットに突き刺さったサッカー・ボールのような形をした円球形のチーズだ。
このチーズは牛のミルクからバターを取り出した後の脱脂ミルクを活用し、ガーリックやペッパーで味付けをしたもの。脱脂ミルクにフレッシュなミルクも足してあるので、ミルクの味わいもしっかりとしている。
このチーズは別名“姑のおっぱい”と呼ぶらしい。
役目を終えたおっぱいという意味なのだろうか、とても意味深長である。
奥の深い包容力のあるその味わいは、ほっとして安心できる姑の味わいなのだろう。
赤ワインでも白ワインでもビールでも合わせやすいチーズである。
今日のクアトロのおすすめは、牛肉のカルパッチョだ。
青森産黒毛和牛Ａ５ランクのカルパッチョを前菜でいかがだろう。
先制点の欲しいところで、ドッカーンと決まったフリーキックのような美味しさが、ファンの熱狂を呼ぶに違いない味わいである。
さらに、クアトロの父が選んだ赤ワインを合わせれば、今日のゲームは決まりである。
だめ押しには、セットプレーからのチーズプレートがおすすめだ。
ハーブで包まれた羊のチーズ“オベハ・アル・ロメロ”
ガーリックとペッパーがアクセントの“カプロン”
オランダの千日熟成のゴーダ“ゴーダ・ミレニアム”
白カビで覆われたブルーチーズ“ブルー・デ・ネージュ”（写真）
シャープな味わいの“ゴルゴンゾーラ・ピカンテ”
ロワーヌの名産である山羊のチーズ“サントモール・ドゥ・トゥーレーヌ”
と、チーズのタレントは豊富だ。
そして、締めくくりは、陰干しブドウから作られた食後酒パッシートというクアトロ最強の作戦である。
