クアトロ・シェフは組閣人事に取りかかった。今晩にも発表されることだろう。
問題は、一塁手である。左利きというだけでクアトロの父が候補なのだが、いかんせん老齢である。他の内野手の組閣は早くに進んだのだが、ここには若手が起用されることになっている。若い内野手の送球をクアトロの父が処理できるかが心配である。
クアトロ・シェフが、草野球チームを結成することになったのだ。今晩、顔合わせと初練習が行われる。ここで各ポジションのテストが行われるわけである。
クアトロ・シェフの人脈で結成されたチームである。月に一度、練習をして試合が出来るチームにしたいとクアトロ・シェフは抱負を語る。
そして、勝てるチーム作りを目指すという。そこで弱いチームの対戦相手を募集することになる。
クアトロの父は伝説の背番号3に袖を通したが、メンバーが揃うまでの繋ぎ人事に起用されるようである。その後は、対戦相手探しなどの広報に回されそうである。
私はパルミ5世。新着のハモンセラーノは、体のカビを落として貰ったら見られるようになった。いや中々どうして貫禄さえ伺えるのだ。
早速ハモンセラーノは大活躍をしている。今日のお昼もクアトロのお客様から引っ張りだこである。特に今日は、サンダニエルのプロシュートとこのハモンセラーノの食べ比べが出来るのだからお客様も大喜びである。
食べ比べの感想を聞いて回るクアトロの父だが、両者良い勝負のようだ。脂身の味わいに個性のあるハモンセラーノを良しとする人、肉の味わいが濃厚なサンダニエルを良しとする人に分かれるようである。そでも両方とも美味しいですよと付け加えられるようだ。
それにしても、田舎者だと思っていたハモンセラーノがとても上品な味わいで人気を集めていることに、嫉妬するパルミ5世である。
密かに忍び寄る不審な足音。パルミ5世は、金縛りにあったかのように身動きが出来ない。「お前はだれだ」
やっとの思いで、声を絞り出すように叫んだ。
返事はない。一層に恐怖は募るのだった。
パルミ5世は、ふと閃いた。
「オーラ」と呼びかけてみた。
「オーラ」と返事が返ってきた。
何だ、ハモンセラーノか。やっと全身に血の気が戻ったパルミ5世であった。サンダニエルの後を受けてやってきたスペインの生ハムであった。
ハモンセラーノはスペイン語で「山のハム」ということらしい。いかにも山育ちという感じて、とてもむさくるしい生ハムである。身体中カビに覆われている。クアトロの父に体のカビを落として貰って少しは見られるようになった。
さて、その味わいはいかがなものなのだろう。
今日もクアトロのお造り人は、魚の形を整え、様式美を求め、お造りを作るのであった。
〆てから何時間たった魚だろうか、その魚はどういう切り方がよいのだろうか、少しでも綺麗に飾って送り出したい。クアトロのお造り人は神経をすり減らすのだった。
〆てまもない魚はコリコリっとした食感が美味しい。薄めに切って出そう。食べ頃になった魚も薄造りにして塩だけで食べて貰うのもよい。熟した魚はやや厚めに切ってもっちりとした食感を楽しんで貰おう。ドレッシングで食べるのか、しょう油で食べるのか、それによっては切り方を変えなくてはいけない。
せっかくの鮮度の良い魚は、お頭を飾ってきれいな魚の目を見せてあげたい。魚の切り身の色合いによってお皿も変えなくてはいけない。
クアトロのお造り人の道に終わりは無いのだ。
お造り人のいる変わったイタリアン、クアトロ・スタジオーネは好評営業中。