サングレは、クアトロの新着チーズである。サングレはいけないこととは思いながらも、前の住人の置き忘れていったノートを開くのだった。
そのノートは、9月から3月までしか販売されない、モンドールのものだった。モンドールはジュラ山脈で育ち、エビセアという樹皮の中で熟成するチーズだった。モンドールは季節限定のチーズということもあり、多くの熱狂的なファンを持つチーズだ。ここ、クアトロでも人気ものだったようだ。
偶然なのか、運命のいたずらか、サングレもジュラ山脈で育ち、エビセアの樹皮にくるまれて育ったチーズだ。私とモンドールの違いは何なのだろう。そのノートには、引き裂かれたページがある。そこにこそ、モンドールとサングレの生い立ちの秘密が隠されているのだろうか。
サングレは、知ってはいけない謎へとせまるのだった。
※モンドールは無殺菌乳で作られるため夏場は傷みやすく製造されない。サングレは、モンドールと同じような製法で作られるチーズですが、殺菌乳を使うため、年間を通して製造されています。モンドールと比べると穏やかな味わいのサングレですが、モンドールの食べられない夏場にはかえっておすすめの味わいと云えそうです。