ザ・クアトロ

クアトロの父のたわごと

マキシム

2007年09月06日 | 食べ歩きの話

Ph01 再び美味しいものの話に戻る。感動的に美味しいには至らなかった美味しいものの話。パリの「トゥール・ダルジャン」で気をよくしたクアトロの父たちの一行は、数日後パリ「マキシム」に挑戦した。伝説のレストランである。「トゥール・ダルジャン」はフランス語を話せる方のお世話で食事が出来たので、事はスムーズに運んだ。「マキシム」では、フランス語に疎い4人組での挑戦だった。
古めかしいエントランスからダイニング・ホールに入ると、そこはベル・エポックの世界だった。回りは装飾を施された暗い色の鏡が張り巡らされている。その鏡を背にしてベンチシートがホールを取り巻く。かっぷくの良い老人が、一人で食事をしている。この店だと絵になる。
飛び込みの客である怪しげな日本人4人組はあまり歓迎されていないような雰囲気だ。隅っこの席に案内された。この空気を変えるべく、この4人組のリーダーである社長は、英語まじりの会話で高級ワインを注文した。メドックの年代物である。帰ってから経費で落とせるか心配な金額だ。しかし、これでどうにか空気は良くなってきた。その後の注文も、このワインを飲むのならばこれだろうとばかりに、美味しいものを届けてくれる。
食事が進むと、オニオングラタン・スープが登場した。このスープを注いでくれた人は、日本人だった。
「あなたは、日本人ですか」
「そうです」小声で話す。
「僕たちは言葉が解らず往生していたから、始めから貴方に注文をとってもらえば良かった」
『あんな高いワインを注文しなくても良かったのに』
「こまってらしたのは、解っていたのですが、自分はスープを注ぐだけの係なので、他の仕事に手を出すと大変なことになるのです」
「そういうものなのですか」
悲しそうな目をした日本人の従業員に出会ってしまい、せっかくの「マキシム」の食事もオニオングラタン・スープのちょっとしょっぱい味しか覚えていない。
あの日本人は、パリ「マキシム」で修行してきましたという肩書きで、日本で活躍しているのだろうか。

コメント
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