Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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細菌性髄膜炎の新しい診断マーカー

2004年11月01日 | 感染症
脊髄造影の合併症として,稀ながら症候性の無菌性髄膜炎を発症することがある.造影剤誘発性無菌性髄膜炎は,通常,急性発症し,発熱,項部硬直を呈し,重症化することがある.検査所見では白血球増加,CRP上昇,髄液多核球増加を呈する.治療として抗生剤は理屈上は不要であり,副作用を来たしうることを考慮するとその使用は最低限にとどめるべきであるが,実際には細菌性髄膜炎との鑑別が困難なため,多くの症例では抗生剤を使用しているものと思われる.
 今回,造影剤誘発性無菌性髄膜炎と,細菌性髄膜炎の鑑別に,血漿プロカルシトニン(PCT)が有効かを検討した研究が報告された.PCTは,近年,敗血症のマーカーとして注目されている分子量 13kDaの蛋白で,カルシトニンの前駆蛋白として甲状腺のC細胞において生成される.炎症時においては,肺や小腸の神経内分泌細胞や,血液の単核細胞においても生成されるとの報告がみられる.すでに細菌性髄膜炎とウイルス性髄膜炎の鑑別に,血清PCT測定が有用であることが報告されている.
今回,造影剤誘発性無菌性髄膜炎1例と,細菌性髄膜炎の7例において,血清PCTを測定した.この結果,血清PCTは前者では上昇を認めず,両者の鑑別にも血清PCTが有用であることが示唆された.
血清PCTは,今後,細菌感染症の早期診断に使用される可能性が高いが,重症の細菌・真菌・寄生虫感染症の診断のパラメーターであり,細菌感染に対する全身的な反応の過程でのみ生成される.すなわち,ウイルス感染,慢性炎症性疾患,自己免疫疾患,アレルギー性疾患はもとより,局所に限局した細菌感染では上昇しないことを認識しておくべきである.

Neurology 63; 1311-1313, 2004
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