第182回日本神経学会関東地方会にて,本邦初のAPP(アミロイド前駆体蛋白)遺伝子重複によるAlzheimer病症例が報告されたが,今回は,これまで報告されたAPP遺伝子重複によるAlzheimer病家系の特徴についてまとめたい.
まずAPP遺伝子重複によるAlzheimer病は昨年,フランス人5家系においてはじめて報告され(Nat genet 38; 24-26, 2006; Brain 129; 2966-2976, 2006),次いでオランダ人家系(Brain 129; 2977-2983, 2006),フィンランド人家系(Neurology 63; 234-240, 2004; JNNP 2007 e-pub ahead)も報告された.各家系間において表現型の相違はあるが,以下の点でおおむね共通している.
1. 常染色体優性遺伝で,若年発症(40~50歳代発症)の認知機能障害が必発で,脳出血,てんかん発作を合併しうる.
2. 脳出血は,T2*画像における皮質下のmicrobleedsとしてとらえられることや,比較的大きな脳出血を呈することがある.
3. てんかん発作は脳出血後の症候性てんかんとして生じることがある一方,脳出血の既往のない症例でも生じうる(つまり原疾患に伴う症状として,てんかん発作が起こりうる).
4. APP遺伝子が存在する21番染色体のトリソミーが原因であるDown症候群類似の症状(精神発達遅延,外表奇形,奇形,血液疾患など)は呈さない.ただしDown症候群では加齢に従いてんかん発作を合併するが,この点は類似している.
5. MRI所見としてはperiventricular,parieto-occipital regionに虚血病変と考えられる異常信号を認める.
病理所見としては
1. 脳実質におけるアミロイドの沈着に加え,高度の脳アミロイドアンギオパチー(CAA)を認める点が特徴的である.通常のアルツハイマー病ではスペアされる大脳白質でもCAAを認める.
2. 老人斑はAβ42,血管にはAβ40が主として蓄積している.Aβ40は神経細胞内にも沈着している(これは通常のアルツハイマー病では見られないが,Down症候群ではある).
3. 病理所見は通常のADやAPP点変異とよりもDown症候群に似ている
遺伝子解析から分かることは
1. 優性遺伝性若年発症アルツハイマー病のおおむね10%程度が重複よ推測される(点変異はその倍の頻度).
2. 重複のサイズは表現型に影響しない.重複範囲の検討からAPP遺伝子のみの重複で,early-onset dementia + CAAという表現型が生じるらしい.
3. APP遺伝子重複のメカニズムは不明(今後,genomeのfine mappingが必要)
以上の結果より,APP重複による早発型アルツハイマー病は臨床・病理学的にDown症候群と似た点が多い.もし若年発症例で,家族歴を認め,T2*画像におけるmicrobleedsを認める症例で,APP遺伝子の点変異を認めなかった場合には,積極的にAPP遺伝子重複についても検討する必要がある.
まずAPP遺伝子重複によるAlzheimer病は昨年,フランス人5家系においてはじめて報告され(Nat genet 38; 24-26, 2006; Brain 129; 2966-2976, 2006),次いでオランダ人家系(Brain 129; 2977-2983, 2006),フィンランド人家系(Neurology 63; 234-240, 2004; JNNP 2007 e-pub ahead)も報告された.各家系間において表現型の相違はあるが,以下の点でおおむね共通している.
1. 常染色体優性遺伝で,若年発症(40~50歳代発症)の認知機能障害が必発で,脳出血,てんかん発作を合併しうる.
2. 脳出血は,T2*画像における皮質下のmicrobleedsとしてとらえられることや,比較的大きな脳出血を呈することがある.
3. てんかん発作は脳出血後の症候性てんかんとして生じることがある一方,脳出血の既往のない症例でも生じうる(つまり原疾患に伴う症状として,てんかん発作が起こりうる).
4. APP遺伝子が存在する21番染色体のトリソミーが原因であるDown症候群類似の症状(精神発達遅延,外表奇形,奇形,血液疾患など)は呈さない.ただしDown症候群では加齢に従いてんかん発作を合併するが,この点は類似している.
5. MRI所見としてはperiventricular,parieto-occipital regionに虚血病変と考えられる異常信号を認める.
病理所見としては
1. 脳実質におけるアミロイドの沈着に加え,高度の脳アミロイドアンギオパチー(CAA)を認める点が特徴的である.通常のアルツハイマー病ではスペアされる大脳白質でもCAAを認める.
2. 老人斑はAβ42,血管にはAβ40が主として蓄積している.Aβ40は神経細胞内にも沈着している(これは通常のアルツハイマー病では見られないが,Down症候群ではある).
3. 病理所見は通常のADやAPP点変異とよりもDown症候群に似ている
遺伝子解析から分かることは
1. 優性遺伝性若年発症アルツハイマー病のおおむね10%程度が重複よ推測される(点変異はその倍の頻度).
2. 重複のサイズは表現型に影響しない.重複範囲の検討からAPP遺伝子のみの重複で,early-onset dementia + CAAという表現型が生じるらしい.
3. APP遺伝子重複のメカニズムは不明(今後,genomeのfine mappingが必要)
以上の結果より,APP重複による早発型アルツハイマー病は臨床・病理学的にDown症候群と似た点が多い.もし若年発症例で,家族歴を認め,T2*画像におけるmicrobleedsを認める症例で,APP遺伝子の点変異を認めなかった場合には,積極的にAPP遺伝子重複についても検討する必要がある.