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Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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原発性神経リンパ腫症を理解する:301例のシステマティックレビュー

2025年04月30日 | 末梢神経疾患
原発性神経リンパ腫症(primary neurolymphomatosis;PNL)は血液悪性腫瘍,主にB細胞リンパ腫が末梢神経系に直接浸潤する稀な疾患です.診断時には神経症状のみを呈することが多く,かつ他の神経疾患との鑑別が非常に難しい疾患です.これまでsystematic reviewは存在しませんでしたが,Eur Journal of Neurol誌の最新号に,フランスから自験例2例を含めた301例の検討が報告されています.結果は以下のとおりです.

・年齢の中央値は60歳,男性が61%.
・B細胞リンパ腫が73%と最も多く,次いでT細胞リンパ腫9%,NK/T細胞リンパ腫3%,その他11%.
慢性経過44%,亜急性38%,急性17%.
・神経所見は非対称性が79%で,感覚障害が75%,運動障害が64%に認められ,下肢優位は59%にみられた.痛みを伴わない症例が56%.
・神経所見の分布はでは,ニューロパチーが36%と最多で,多発単神経炎24%,神経根症15%,腕神経叢障害11%,馬尾症候群10%,脳神経障麻痺11%(図1).



・診断までに要した期間は中央値8か月,最初の検査で確定診断に至ったのはわずか28%.
・誤診としては,脊椎変性疾患(19%),CIDP(18%),炎症性ニューロパチーや血管炎(15%)などが多い.
・脳脊髄液検査は72%に異常が認められた.神経伝導検査は97%,MRIは94%,PETは82%で異常を認めた.
・神経生検は171例で施行され,うち57%でリンパ腫細胞の浸潤を認めた.
・治療は82%で施行され,うち90%が全身化学療法を受けた.41%はリツキシマブ併用療法を受けた.
治療効果は45%が症状の安定または改善を示し,55%は進行した.
・再発率は24%,再発までの中央値は5か月.
1年後の生存率は73%,全生存期間の中央値は28か月(図2).
・生存率に影響を及ぼした因子はB細胞リンパ腫であることのみで,リツキシマブ併用の有無は関連しなかった(図3).

以上より,PNLはやはり診断困難な疾患であり,非典型的な末梢神経障害を呈する症例に対しては,画像検査と神経生検を積極的に行う必要があることを改めて認識しました.治療後も再発率が高く,長期生存率も2-3年であることから,今後,さらなる診断・治療への取り組みが求められる疾患と言えます.

Chakroun S, et al. Primary Neurolymphomatosis: A Literature Review. European Journal of Neurology. 2025;32:e70173.(doi.org/10.1111/ene.70173


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