Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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アルツハイマー病治療にBBB通過性ACE阻害薬が有効?

2004年10月23日 | 認知症
アルツハイマー病(AD)では,中枢神経内においてRenin-Angiotensin(RA)系に異常が生じているという仮説のもと,BBB通過性ACE阻害薬の効果を検討した報告が本邦よりなされた.対象は65歳以上の軽症~中等症のAD(MMSE 13-23点)で,高血圧を合併する症例.脳卒中・IDDM・内分泌異常・気管支喘息・閉塞性肺疾患の合併例は除外.計162名をランダム化し,A群にはBBB通過性ACE阻害薬(perindoprilコバシル, captoprilカプトリル),B群にはBBB非通過性ACE阻害薬(enalapril, imidapril),C群にはCa拮抗薬を使用した.この結果,1年の観察期間でA群でのみMMSEの低下を認めなかった.
 すでにperindoprilやindapamideの使用はADの発症率を低下させることがprospectiveに報告されているが,この結果はBBB通過性ACE阻害剤がADの治療にも有効である可能性を示唆する.非常に興味深い結果であるものの,Reviewerも指摘するとおり,以下に挙げる方法論的な問題があり,妄信するのは危険である.①A群の2つの薬剤がともに効果があるのか不明,②B, C群の知能低下の程度が予想されるものより大きい,③副作用が予想以上に少ない,④ランダム化にもかかわらず,二重盲検が行われていない.⑤評価項目がMMSEのみ.Reviewerはこの論文をアクセプトすべきか迷ったようだが,その刺激的な内容を考慮して採用したらしい.本研究はADの病態機序をRA系から考えるという新しい観点が必要であることを示した点と,強固なエビデンスを作るためには良くデザインされたstudyが重要であることを示している.

Neurology 63;1324-1325, 2004
Neurology 63;1145, 2004(Commentary)
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