Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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原発性ジストニアにおけるSCA17遺伝子変異の頻度

2004年10月23日 | 脊髄小脳変性症
SCA17は本邦で発見された疾患で,TATA結合蛋白(TBP)遺伝子におけるCAGリピートの伸長により発症する.本疾患はTBP geneがcoding領域にpolymorphicなCAGリピートを持つことから,脊髄小脳変性症(SCD)の原因遺伝子になるのではないかという仮説のもと,原因不明のSCDをスクリーングした結果,小脳失調・てんかん・痴呆を呈した小児例1例(孤発例)を発見したのが発端である(Hum Mol Genet 8;2047-53, 1999).その後,家族例が報告され,SCA17という疾患名が付いた.その後の検討で,SCA17は小脳失調,痴呆,パーキンソニズム,舞踏運動など多岐に亘る臨床像を呈することが報告された.また局所性ジストニアを呈した症例も報告されている.
 今回,TBP遺伝子のCAGリピート伸長が原発性ジストニアの原因となるのかについて,ドイツのグループが検討を行った.SGCE遺伝子(epsilon-sarcoglycan gene;myoclonus-dystonis syndrome)やDyt1遺伝子の変異が否定された288人についてTBP遺伝子のCAGリピートを検討したところ,1例も伸長(47-63 repeat;健常は29-42 repeatと定義)を認めなかった.少なくともジストニアの原因として,SCA17は頻度が高いとは言えない,というのが結論である.
 話はそれてしまうが,なぜ遺伝子発現の根本とも言うべき基本転写因子の異常で,中枢神経にのみ障害が生じるのか何とも不思議である.

J Neurol 251; 1232-1234, 2004
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