Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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てんかん様活動はアルツハイマー病の治療標的となるかもしれない!

2024年03月27日 | 認知症
「高齢者てんかんの原因としてアルツハイマー病(AD)を考える」ことは有名ですが,それ以上,深く考えたことはありませんでした.最新号のNature Reviews Neurology誌に「そう考えるのか!」と唸ってしまった総説が出ています.以下,ポイントを箇条書きにします.

◆AD患者における神経細胞の過興奮性は健常者の2〜3倍高い.
◆高齢者てんかんやてんかん様活動は,ADに認められる認知機能障害の数年前から先行して出現しうる.
高齢者てんかんはADの非認知的前駆徴候かもしれない.
◆さらにこの興奮性亢進はADの進行を促進する可能性がある.
◆AD動物モデルでも,認知機能障害に先行して,皮質ネットワークの神経細胞の興奮性亢進が生じ,てんかん様活動はAβやリン酸化タウの沈着を引き起こす.
◆老化したApoE4ノックインマウスでは,自発的痙攣発作を認めるが,ApoE3ノックインマウスでは認めない.
◆てんかんは新たな危険因子である可能性がある.しかし治療介入可能で,抗認知症薬や抗てんかん薬が候補となる.
◆治療介入を逃さないために,高齢者てんかん患者における神経心理学的検査と,早期AD患者における長時間脳波検査が必要である.



図は病態の全体像を示していますが,まずタンパク質レベルでは,Aβとリン酸化タウの凝集が生じ,この結果,細胞レベルでは興奮と抑制の不均衡が生じ,病的な興奮性亢進が引き起こされます.この興奮性亢進は病的タンパクの蓄積をさらに促進し,さらに睡眠や記憶機能を含む神経細胞ネットワークの正常な機能が阻害されます.この結果,認知機能障害がより早期に出現したり,進行が加速したりします.

以上より,ADにおけるてんかん様活動の検出は,治療介入可能な新たな危険因子として臨床的に今後,重要となる可能性があります.
Kamondi A, et al. Epilepsy and epileptiform activity in late-onset Alzheimer disease: clinical and pathophysiological advances, gaps and conundrums. Nat Rev Neurol. 2024 Mar;20(3):162-182.(doi.org/10.1038/s41582-024-00932-4

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