Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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安楽死・医師介助自殺における倫理@第11回難病医療ネットワーク学会学術集会

2023年12月02日 | 運動異常症
「死にたい」と話される患者さんにしばしば遭遇しますが,そのようなときに患者さんや主治医の若い医師にどのように声をかけたらよいか悩みます.「死にたい」という気持ちが本当に強くなると,その先には安楽死や医師介助自殺(physician-assisted suicide; PAS)という選択肢があり,実際にスイスでのPASを希望される患者さんが増加していること(デスツーリズム)が報道されています.また日本でも安楽死を法制化しても良いのではないかという意見も聞かれます.学術集会の大会長講演では,難病と安楽死・PASの倫理について議論しました.以下,要旨とスライドです.

◆安楽死・PAS・尊厳死の議論をする前に,それぞれの定義を正しく理解する必要がある.
◆安楽死を合法化した国において安楽死の目的は,肉体的苦痛の解放から,精神的苦痛の解放に変化した.その後,認知症や神経難病患者における増加が生じた.
◆オランダではすでにALS患者の死亡の25%が安楽死・PASになっている.
◆難病患者等からの「安楽死後臓器提供」が4つの国で合法化され,増加している.
◆カナダでは安楽死と緩和ケアが混同されている.
◆安楽死・PASを合法とした国で「すべり坂=本人の意思に反した安楽死」が起きている.
◆安楽死は「自己決定権」を根拠として行われている.
◆現代は個人の「自己決定権」が絶対視され,患者の家族や医療者などと患者の関係など,「関係のなかの医療」という視点が乏しい.          
◆「自己決定だから仕方がない」と安直に考え,向き合わないのでなく,「自己決定」の理由や背景を理解する必要がある.
◆精神的苦痛は安楽死によってのみ解決されるものではない.
◆死を望む人に対し,なぜ死にたいのかを理解しそれを思いとどませること,そして十分な緩和ケアのスキルを身につけることが大切である.

下図は今回ご紹介した本ですが,とくに「安楽死が合法の国で起こっていること」はご一読をお勧めします.
スライドへのリンク


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