Exciting, Radical, Suicidal.これはStroke最新号に掲載されているreview articleの題名である.具体的に何を意味するかと言うと,興奮性細胞障害,フリーラジカル,アポトーシスのことであり,現在,脳梗塞(とくにpenumbra領域の細胞死)においてとくに重要と考えられている3つの病態機序である.MGHのドクターらによるこのreviewでは,上記3つをテーマとした論文数の推移(1970年代から現在)を調べているが,興奮性細胞障害・フリーラジカルは1990年をピークとして,その後,減少傾向にあり,アポトーシスは1993年から現在に至るまで増加傾向という結果になった.そして,これらのうち2つ以上の領域にまたがる研究はきわめて少ないことを指摘している.一方,脳梗塞においてどの細胞の「細胞死」に注目した論文であるかという観点で見てみると,neuronが圧倒的に多く,かなり減ってglia,さらに減って血管内皮細胞という結果であった.
著者らの言いたいことは,神経保護のターゲットとなるpenumbraに起きる細胞死は,単純にひとつのカスケード(例えば上記3つのうちのひとつ)によって支配されるのではなく,かつそのkey playerもneuronだけではないということである.細胞死にはそれを引き起こすいくつものカスケードのcross-talkがあり,さらに細胞同士の間でもcross-talkがある.おそらく,いずれかひとつのカスケードをブロックしただけでは十分な治療効果は得られず,neuronal survivalのみに効果をもつ治療だけでは不十分ということになるのかもしれない.今後の方向性として,複数の細胞死カスケードを同時にブロックし,かつ複数の細胞をターゲットとした治療の開発を目指すべき,というわけである.そのためには実験モデルの見直しなども必要だが(例えば,現在,頻用されるげっ歯類は大脳白質がきわめて少なく,gliaの研究に向かないなど),いずれにしても現在の脳梗塞の基礎研究の多くが臨床へのtranslationができていない状況にあり(t-PAと低体温を除く),研究の方向性の見直しは必要なのだろう.
Stroke 36; 189-192, 2005
著者らの言いたいことは,神経保護のターゲットとなるpenumbraに起きる細胞死は,単純にひとつのカスケード(例えば上記3つのうちのひとつ)によって支配されるのではなく,かつそのkey playerもneuronだけではないということである.細胞死にはそれを引き起こすいくつものカスケードのcross-talkがあり,さらに細胞同士の間でもcross-talkがある.おそらく,いずれかひとつのカスケードをブロックしただけでは十分な治療効果は得られず,neuronal survivalのみに効果をもつ治療だけでは不十分ということになるのかもしれない.今後の方向性として,複数の細胞死カスケードを同時にブロックし,かつ複数の細胞をターゲットとした治療の開発を目指すべき,というわけである.そのためには実験モデルの見直しなども必要だが(例えば,現在,頻用されるげっ歯類は大脳白質がきわめて少なく,gliaの研究に向かないなど),いずれにしても現在の脳梗塞の基礎研究の多くが臨床へのtranslationができていない状況にあり(t-PAと低体温を除く),研究の方向性の見直しは必要なのだろう.
Stroke 36; 189-192, 2005