Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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若年性ALSの原因として念のため検討すべきこと

2005年07月20日 | 運動ニューロン疾患
若年性ALSは25歳未満に発症する稀な病態で,その特徴として,進行が緩徐,かつ生存期間が長い(発症後30年以上の生存)ことが挙げられる.原因として,常染色体優性遺伝のALS4(senataxin 遺伝子変異;novel DNA/RNA helocase,AOA2の原因遺伝子でもある),常染色体劣性遺伝のALS2遺伝子(alsin; putative GTPase regulator)が知られている.ALS2遺伝子変異は原発性側索硬化症の若年型,若年性ALS,infantile-onset HSPと種々の運動ニューロン疾患の表現型を呈しうることが判明している.
 今回,24歳に発症し,現在73歳の若年性ALS症例(男性)がドイツから報告されている.手指の筋萎縮・筋力低下にて発症し,下肢に麻痺が及び,発症2年後には,球麻痺,さらに痙性が出現した.発症7年目に入り進行は緩徐化.13年目の段階で上肢の弛緩性麻痺と痙性歩行の状態.22年目には歩行器が,29年目には車椅子が必要になった.49年目の現在,人工呼吸器や持続的な栄養管理は不要の状態である.頭部MRIは比較的高度のびまん性の皮質萎縮を認めるが,FLAIRでもほとんど白質病変は認めない.家族内類症や血族婚はなく,弧発性と考えられる.
 さて診断は何か?結論としてSPG4,spastin遺伝子の新規変異が原因であった.具体的にはエクソン1における挿入型遺伝子変異(重複,c.304_309dupGCCTCG)を認めた.種を明かせば,SPG4は純粋型の常染色体優性HSPのなかで頻度が高いことから(40%を占める),著者らは念のためチェックしたところ変異が見つかったというわけである.この症例は,spastin変異の表現型の多様性を示唆すると同時に,今後,若年性ALSを経験した場合には念のためspastin変異も鑑別診断リストに加えるべきであることを示唆している.

Neurology 65; 141-143, 2005
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