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Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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ナルコレプシーが自己免疫疾患である新たな根拠

2004年12月15日 | 睡眠に伴う疾患
ナルコレプシーは有病率約0.1%の睡眠障害で,昼間の睡眠発作,情動脱力発作,睡眠麻痺,入眠時幻覚を主徴とする.ナルコレプシーでは遺伝要因の関与が示唆されており,約5%が家族性に発症する.一方,HLA-DQ遺伝子との強い関連もあり,自己免疫疾患の可能性が示唆されているが(MSやRasmussen脳炎との合併例も報告されている),脳組織や髄液での炎症所見や,特定の自己抗体も同定されていない.イヌにおいても孤発例と家族例のナルコレプシーが認められ(canine narcolepsy),これらは常染色体劣性遺伝形式で,浸透率は100%である(原因遺伝子はhypocretin receptor type 2).canine narcolepsyの表現型はヒト・ナルコレプシーと類似するが,イヌを用いた神経薬理学的実験の結果,ナルコレプシーの病態には①モノアミン系の機能低下と②コリン系の感受性の増大という脳内の生化学的バランスの異常が深く関わっていることが示唆されている.また興味深いことに免疫抑制剤や抗炎症剤がcanine narcolepsyの表現型の発現を遅らせることも報告されている(このことも自己免疫の関与を示唆する).
今回,ナルコレプシーにおける自己抗体の関与を証明する実験がオーストラリアから報告された.9人のナルコレプシー患者と9人の健常コントロールの血清からprotein A sephalose columnを使用してIgGを精製し,マウスに注射,すでに確立されているbladder stripを用いたbioassay系(副交感コリン作動性神経伝達への影響を調べる)を行った.この結果,ナルコレプシーIgGはムスカリン作動薬carbacholに対する膀胱収縮反応に対し増強効果をもたらし,アセチルコリン放出もコントロールと比べ有意に増加した(p<0.0001).以上の結果は,ナルコレプシーにおける自己抗体の関与を示唆するとともに,ナルコレプシーの診断に有効なbioassayが確立されたことを意味する.これまでナルコレプシーの診断は病歴,PSG,ヒポクレチンをベースに行ってきたが,ナルコレプシーの診断から除外され特発性過眠症に分類される患者が少なからず存在した.このような症例がこのbioassayでどのような結果を示すのか非常に興味が持たれる. Lancet 364, 2122-2124, 2004
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