Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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安楽死と医師介助自殺の問題を正しく議論するために

2020年08月18日 | 医学と医療
先日,教室の先生方と,ALS患者の嘱託殺人事件をきっかけとして俄に議論されている「神経疾患における安楽死と医師介助自殺(physician-assisted suicide;PAS)」について議論しました.

まず伝えたかったことは,安楽死やPASが行われてきたオランダ,スイスのいずれもが倫理的に難しい問題に直面しているという現状です.例えばオランダでは認知症が安楽死の原因の第3位になるまで増加していますが,「かつて安楽死を希望しても,現在は自分がその状況をまったく理解できないひとを安楽死できるものなのか」という問題が生じています.またスイスにおけるPASのうち,神経変性疾患は14%にまで増加していますが,①自殺願望に取り憑かれ,明晰な考えができない可能性をどう判断するか?②治療やQOLを高める処置が十分に行われたか?またそれをどう判断するか?③たとえ自殺が認められたとしても,その時期はどのように決定するのか?という問題が生じています.

議論を通じて伝えたかったことは2点です.①安楽死やPASは「自己決定権」を根拠として行われるものの,それらは無条件で正当化され優先されるものではないこと,②私たち医療者は患者さんに,難病を患っても生き生きと暮らす患者さんがいること,そしてそのための医療やテクノロジー,支援制度があることを的確に伝える必要があるということです.スライドをご覧ください.



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