本邦より多系統萎縮症(multiple system atrophy; MSA)における突然死の頻度や特徴,予防的治療の効果についての検討が報告された.対象はGilman分類におけるprobable MSA患者47名であり,5年間の経過観察が行われた.予防的治療は,①睡眠中の高度の低酸素血症(CT90>10%;検査中にSpO2が90%を下回る割合が10%を超す),②声帯外転麻痺,③繰り返す誤嚥性肺炎を認める場合に行っている.具体的な方法としては,①②に対しては非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)を行い,③に対しては気管切開術を行っている.最終的に,上記の基準を満たし,同意を得られた25名に対し予防的治療が行われた.
結果としては,NPPV は適切な圧設定により,いびきや喉頭喘鳴をほぼ消失させ,さらに睡眠中の低酸素血症を改善することができた.死因に関する検討では,5年間の経過観察中の死亡者は10名,うち7名が突然死(!)で,6名が睡眠中に死亡していた(残りは肺炎,窒息,肺癌が1名ずつであった).既報と比べ(誤嚥性)肺炎による死亡者が少ないが,本研究は嚥下造影検査などで嚥下障害に対し早期から介入を行い,適宜,胃瘻造設を行っており,十分な嚥下対策を行えば,誤嚥性肺炎を減少させられる可能性を示唆してる.
また驚くべきことに,突然死例7名のなかに気管切開術施行例が2名,NPPV施行例が3名含まれていた.すなわち,気管切開術やNPPVでも突然死を完全には防げないこと,言いかえれば上気道閉塞以外のメカニズムでも突然死が生じうることが明らかになった.今後,どのような機序で夜間の突然死が生じるのかを明らかにすることが,突然死の予防法を確立する上で重要であるが,少なくとも気管切開を行ったあとも夜間の睡眠呼吸障害(おそらく中枢性無呼吸やCheyne-Stokes呼吸)の出現に注意する必要がある.
J. Neurol 2008 e-pub ahead of printing
結果としては,NPPV は適切な圧設定により,いびきや喉頭喘鳴をほぼ消失させ,さらに睡眠中の低酸素血症を改善することができた.死因に関する検討では,5年間の経過観察中の死亡者は10名,うち7名が突然死(!)で,6名が睡眠中に死亡していた(残りは肺炎,窒息,肺癌が1名ずつであった).既報と比べ(誤嚥性)肺炎による死亡者が少ないが,本研究は嚥下造影検査などで嚥下障害に対し早期から介入を行い,適宜,胃瘻造設を行っており,十分な嚥下対策を行えば,誤嚥性肺炎を減少させられる可能性を示唆してる.
また驚くべきことに,突然死例7名のなかに気管切開術施行例が2名,NPPV施行例が3名含まれていた.すなわち,気管切開術やNPPVでも突然死を完全には防げないこと,言いかえれば上気道閉塞以外のメカニズムでも突然死が生じうることが明らかになった.今後,どのような機序で夜間の突然死が生じるのかを明らかにすることが,突然死の予防法を確立する上で重要であるが,少なくとも気管切開を行ったあとも夜間の睡眠呼吸障害(おそらく中枢性無呼吸やCheyne-Stokes呼吸)の出現に注意する必要がある.
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MSAの突然死につきまして
早朝の血圧が高い 患者さんは突然死が多いので
脳出血や心筋梗塞の血管障害が多いはずだ
突然死が多いのは当然だ
との指摘を受けたことがあります。
起立性低血圧のために 血圧を上げているもので
早朝の血圧は ただでも 高い患者さんがいるのに さらに上がっていることがあります。
たいがい 突然死の患者さんは 入院中ではないので
剖検もできていませんし 運ばれた先でも 死体検案のみで終わっていることが多く 原因は不明です。
血管障害は 気管切開していても 防げないので ありうると思っていましたが 対策が現実にはありません。血圧を丁度良くする画期的な治療法があると良いのですが。。。。。
NPPVでは 声帯開大不全の進行には 有効性が乏しいことがあるのは 都立神経病院の先生方が報告したように思います。
先生の所では 突然死には 剖検がなされていましたか?
どこまで治療を行うかは患者さんのお考え次第ではありますが,私どもは本当に突然死を防ぐためには,気管切開術を行い,PSGでCheyne-Stokesや中枢性無呼吸があれば人工呼吸器装着と考えています.
アンビューをしながら、家族を呼び出し、アンビューを外して「今心臓は安定して動いていますが、息をしていない」ことを説明、無呼吸を皆で確認しました。そのうえで、人工呼吸をつけるかどうか意向を確認して機械を装着しました。
残念ながら低酸素脳症になってしまいました。
現在、自発呼吸は安定していますが。無呼吸時は機械の起動が必要と考え、BiPAPの加圧はゼロでつなぎっぱなしです。