Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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核内封入体は神経細胞の防御反応?

2004年10月16日 | 脊髄小脳変性症
神経細胞における細胞内封入体は多くの神経変性疾患で認められるが,その意義については不明な点が多い.ハンチントン病(HD)をはじめとするポリグルタミン病では,1997年に初めて核内封入体(NII)の存在が報告されて以来,NIIが細胞障害を引き起こすのか,逆に防御的に働くのか,もしくはそのいずれでもないのか議論が重ねられてきた.
今回, NIIの意義に迫る研究が報告された.HDの病因蛋白であるハンチンチン(Htt)の伸長ポリグルタミン鎖を発現するexon1部分にGFPを融合させた蛋白をラット線条体初代培養細胞に一過性に発現させ,同一の細胞を経時的に顕微鏡下において観察できるautomated microscope systemを用い,NIIの有無が生存期間に及ぼす影響が検討された.結果としては,細胞死は発現蛋白量と伸長ポリグルタミン鎖長に依存すること,NIIが形成されない細胞では細胞死を来たすが,NIIが形成された細胞はより長期間生存することが分かった.すなわち,NIIは細胞内にびまん性に存在するHttのレベルを低下させることで生存期間を延ばすものと著者らは結論付けた.
この研究は,長く続いたNIIの意義に関する論争に終止符を打つものとしてNature articleに取り上げられたものと思われるが,今回の結果をin vivoにおいてそのまま当てはめてよいものか少々疑問を感じる.つまり①培養細胞を用い,②Httのexon1部分のみを,③一過性に強制発現させた実験が,ヒトの脳内で長期に亘って生じていることを正確に反映しているのであろうか?何となくすっきりしないが・・・・

Nature 43; 805-810, 2004 
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