Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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多系統萎縮症に対する抗αシヌクレイン抗体第2相試験のプレスリリース

2024年02月05日 | 脊髄小脳変性症
日米の国際共同臨床試験として開始され,岐阜大学も国内3施設のひとつとして参加している多系統萎縮症治療薬Lu AF82422(図下:αシヌクレインC末端に対する抗体)のAMULET試験(第II相試験)の結果が公表されました.
Lundbeck announces supportive phase II results with Lu AF82422 in the treatment of Multiple System Atrophy from the AMULET trial

要約
◆多系統萎縮症(MSA)患者61人(Lu AF82422投与群40人,プラセボ投与群21人)を対象とした小規模な概念実証試験において,臨床的およびバイオマーカーの各エンドポイントにおいて有効性のシグナルが認められた.
◆AMULET試験では,主要評価項目であるUMSARS総スコアによるMSAの進行抑制において統計学的有意差は示されなかったが,Lu AF82422投与群ではMSAの進行が抑制される傾向が観察された.

つまり主要評価項目は達成できなかったものの,副次的な臨床評価項目およびバイオマーカーにおいて有効性を認めたため,抗αシヌクレイン抗体療法に「支持的」な結果であったということになります.とりあえずホッとしました.現在参加している患者さんに対する継続投与も決まりました.詳細なデータは後日,公開されるそうです.

ただシンシナチ大学のAlberto J Espay教授はそのTwitterで「negativeな結果をsupportiveと言い換えている」と批判をしています.たしかに主要評価項目は達成できず,明確な進行抑制効果を認めたわけではありません.病因タンパクに対する抗体療法,とくにαシヌクレインやタウといった神経細胞内に存在するタンパクに対する抗体療法は容易ではないことを示唆しているのかもしれません.アルツハイマー病におけるAβ抗体療法の効果の程度を考えても,単純に病因タンパクを除去すれば済むということではないのだと思います.





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