Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

フランクフルトへと

2020-06-28 | マスメディア批評
金曜日の中止になったオペルンフェストの特番は面白かった。今回目玉となる1973年「ばらの騎士」と2006年「ラトラヴィアータ」の前宣だけでなくて、関連周辺話題にも振って如何にもオペラファンを喜ばせる内容だった。その一方でオペラオタクから玄人までに聞かせる番組内容になっていた。劇場も聴衆も地元のメディアもオペラを取り巻いてとても程度が高い。これだけの内容を消化できる街は世界に殆どないと思う。

よく考えてみれば、ミュンヘンの劇場の聴衆の玄人筋の割合は高く、その他の常連さんもとてもオタクだ。番組にもクナッパーツブッシュ指揮で舞台に立っていた人も番組に出ているのがまさにそれだ。

土曜日放送の「ばらの騎士」で世界に名を馳せたブリギット・ファスベンダ―の話しは何度も繰り返されている内容だったが、電話の向こうで話すのを聞くと同じ内容でも活き活きしてくる。指揮者のカルロス・クライバーとの最初の仕事はシュトッツガルトの劇場での「ばらの騎士」で脇役を歌った時で、その後1972年になってオクタヴィアン役に際して指揮者が受け入れたから印象は悪くはなかったのだろうと笑わせた。1961年からそこのメムバーとして殆どのシュトラウスのオペラを歌っていたので、劇場に伝統として残っているその精妙さなどがよく分かっていたと語る。

作曲家に薫陶を受けた歌手がまだいて、ハンス・ホッターやクルト・ベーメなどが歌ってと、その精妙でリズミカルに鮮明な音楽を学んだと言う。それどころか練習ピアニストなどは作曲家直々のテムポ指示を受けていた人たちだった様だ。そこにカルロス・クライバーが現れ、新制作の稽古をつけて行った。その奔放な指揮振りでどの公演も新鮮に初日のような音楽をしたという。その裏では楽屋に名刺に添えて「君はどうしてああしたのだ」と書き於いた。意味を尋ねると「君は八分の一のアウフタクトで歌った。あれは四分の一だ。」と直させたという。楽譜に眼を落とすことなく振ったことなど、そしてゾフィー役を務めたルチア・ポップとの関係への証言となる。

仲も良かったファスベンダ―には楽屋でもポップ自身が語っていて、一時同棲をしていたこともあって、仕事場でも決して問題は無かったのだが、後年クライバーが最後に指揮を下りることになるポップが伯爵夫人を歌う練習時には指揮台と舞台の上でもいざこざがあってポップが涙していたと語る。

新制作「ファルスタッフ」でタイトルロールを歌う予定だったヴォルフガンク・コッホがヴィーンの自宅で電話に答えた。準備も何もなしに自宅で料理をしてワインを二本ほど開けてという生活は得難いものと語っていた。又半年もの休憩で声を作っておく必要もないので練習もしないでいると話している。一度レストランで、非番のアニヤ・カムペとマネージャーと奥さんと一緒に入って来て、白ワインやら赤ワインを発注するの一部始終を見ていたことがある。あの時は「パルジファル」の新制作週間だったと思う。その人物像を垣間見たので全く其の侭の話しだった。

そして最後に肝心なことが質問された。新制作「ファルスタッフ」新シーズンに順延になって近々実現するかという問いに対して、上手く嵌め込めそうだと答える。期待するが、保証は出来ないけどと。なにかというと、プランにはキリル・ペトレンコの名前が出ておらず、指揮者不明になっている。それが意味するのは、日程などを審査するとベルリナーフィルハーモニカーのアメリカツアーがキャンセルになるかどうかに掛かっているとみて間違いない。既に肝心のカーネギーホールはキャンセルされたが、フロリダは駄目だとしてもシカゴやボストンの日程がまだ残っているからだ。これらが中止に決まれば、十月末から十二月中間までは新たにプランニングが可能となる。

先ずは「ファルスタッフ」の稽古を始めておいて、その間にベルリナーフィルハモニカ―とのアルテオパー公演やバーデンバーデン公演をこなせば、新制作公演が可能となる。同じ演出家の既に練習を終えている新制作「フィデリオ」も公演できればコロナで失ったものの多くを取り返すことが可能となる。さて何が実現するか?



参照:
政治的パフォーマンス 2020-03-24 | 歴史・時事
蝙蝠食べるジキル博士 2020-02-01 | 生活
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