Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

今が素晴らしければそれで良い

2009-12-26 | ワイン
昨年に続いて批判的ワインリスト「よーみよ2008」の編集作業に取りかかっているが、先ずはクリスマスの感想だけでも纏めておこう。

今年の目玉は何と言っても2006年産グローセスゲヴェックスに手をつけることであった。とは言ってもただの二本しか残っていなくて、これを片付けようと思った。瓶詰め後二年少々しか経っていないので本来なら若飲みにあたるのだが、この腐りの多かった難しい年であり、葡萄の熟成と共にワインも早熟なのである。そして将来性が薄いのは多くのブルゴーニュやドイツのワインに共通している。

決して2006年を購入していなかった訳ではないが、飲めるものは既に飲んでしまっているものが殆どで数本も残っていない。そこから今まで手をつけられなかったグランクリュの特に重さのあるバッサーマン・ヨルダン醸造所のそれを、栗入りのザウマーゲンに合わせた。ザウマーゲンと言えば昨年フォン・ブール醸造所の2005年産イエズイーテンガルテンとの相性に感動したので、今年もこれが目玉であった。バッサーマン・ヨルダンのそれもビュルックリン・ヴォルフのそれについで素晴らしい筈であった。

結果、期待が大き過ぎたためか大変失望した。深みに欠けた。なるほど、2006年産の特徴である一種の苦味が確認出来、それにも拘らず芯の通った張りは流石にその土壌の格に見合う立派なリースリングであったが、これだけのドイツワインの伝統を築いた醸造所の上から二つ目の土壌のワインとしてはお粗末としか言えない。

倍もする価格のビュルクリン・ヴォルフ醸造所のそれと比較してはいけないのだが、もう一寸巧く纏めて欲しかった。現に、フォン・ブールは糖価は高いかも知れないがもっと巧く醸造しているに違いない。試飲をして購入していてみっともない訳だが、もう少し開いてくるものを待ち侘びていたのである。なるほど、デキャンターに移したその液体を継ぐ度に味の変化が起こり、一瞬残糖感が感じられたかと思うと次ぎの瞬間には引き締まりという按配に若干液体の化学的な不安定さを感じさせるほどであったのだが、結局大きな時間差や余韻をもって大きな華は開かず仕舞いであった。一気に一本空けてしまっても全く堪えないその酒質や純粋醸造にはそれだけの価値があるのだが、今後このワインを購入して行くかと尋ねられると、買えるならビュルクリン・ヴォルフ、買えるフォン・ブールとなって、これは外されるであろう。現に今年はこの醸造所でこれだけを購入していない。その意味から、まだ開けていない三つ目の地所ホーヘンモルゲンからのそれは少し期待出来るかも知れない。

さて、ビュルクリン・ヴォルフの2008年産カルクオーフェンは、その失意を十分に癒してくれた。そこで求められた新鮮なグランクリュの素晴らしさは必ずしも毎年得られるものではなく、今年飲んだ2008産リースリングの最高峰であったことは間違いない。吹き上がるトロピカルフルーツの香りの裏のベースに、その美しい酸の発散の裏を覗くようにして、何処か培養酵母の癖のようなものを嗅ぎ取るのはまるで性格の悪い小姑のような通人の中の通人である。そのような気持ちを起こさせない華やかさは、その辺りのリセに通う少女と言うよりも二十三四の場の雰囲気をその存在で一瞬にして変えてしまうような飛びぬけた美人なのである。上の癖は、敢えて言えば、横顔の鼻筋が少し尖っていると言うぐらいのものであろう。そして、このリースリングとなにも何年付き合おうとかは一切考える必要がないのである。今が素晴らし過ぎて、そんなことなど思い浮ばないほどなのである。それだけで良い。

さて、このように名門醸造所が集まるダイデスハイムの勢力地図に変動が起こっているかどうかはクリスマス二日目の審査結果を待って講評することにしよう。
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小馬鹿にした弁明の悲惨さ

2009-12-26 | マスメディア批評
日本国民の失望感は極まったようである。鳩山首相の弁明は、「私腹を肥す気はなかった」というもののようだが、巨額脱税行為に対して、その清い意思を主張して潔白を有権者に訴える姿勢こそが、田中角栄ファミリー直系の金権体質なのである。その潤沢な金を使ってあの「田中角栄先生」だって小沢何某以上に国政、特に日中関係改善にどれ程尽くしたことだろうか。

まさにここに、こうした世論や社会を小馬鹿にしたような朝日新聞を代表とするような広くは文化界と呼ばれる論壇が存在して、その程度の教養の金満家の政治家を擁く国がある。これが、象徴天皇制の元に構築が叫ばれる二大政党制の金満家庭子息子女が興じる「政治ごっこ」の本質なのである。

FAZ新聞はそうした日本の様子をクリスマス前に伝えていた。ドイツの新聞の第一面の社説であるから連邦共和国との比較で話を進める。世論調査では、「最高の年月は過ぎ去った」、60年代、70年代もしくは70年代、80年代へとそれは遡ると言う。つまり、西ドイツの経済奇跡、上昇する分け前の感覚に形づくられた時代であった。

多くのドイツ人は、工業社会の時代は過ぎ去ったと感じており、将来は他の地域に委ねられていると信じ込まされている。特にアジアでの「西洋の利権構造」への攻撃が進行しており、今千年紀の最初の十年間の終わりに防御しかないと考えている。

しかしアジアの全てで勃興の気配が満ちているのではないと、日本について語りはじめる。二十世紀の経済大国日本は、現在でも世界第二位の国民総生産を誇るが、そこに満たされている悲観的気分は、ドイツ人からしても殆ど「悲惨な状況」なのであると。それはアジアの他国と裏腹に日本の没落が避けようもないと考えられているからだと解説する。

中国の成長と自意識に影響を受けながら、自らはこの二十年間全く良い事はなく、国際舞台では度重なる意気消沈へと沈んで行ったと日本を映し出す ― それは、失われた二十年と言われる経済隠語や、なにも保守政治家の自殺程度で解決するようなものではない。そのなかでも最も将来を悲観させるものが人口構成の問題で、その点に関してはドイツよりも遥かに高齢化や人口減少 ― なるほど外国人移住問題がここに絡む ― が早く進んでいると説明する。

そしてどんなに少なく見積もってもと、戦後の工業国としての復興や合衆国によって授けられた民主主義への移行を挙げ、両国の自明な類似点を挙げながら本題へと記事は進む。国際社会での存在感の少しづつの増加として、ドイツにおけるアフガニスタンへの軍事派兵など、グローバリズムへの対応への過負荷を述べ、将来的に過剰な唯物依存への懐疑となる。

その一方では、地政学的には、依存から脱却して可能性を拡げたとして、冷戦終結以降の連邦共和国の合衆国への関係に言及しつつ、同じように日米同盟が必ずしも自明では無くなった鳩山政権の戦略的政策を紹介する。

鳩山首相の主張する同格の関係とは、一体どういう意味なんだと訝る。北朝鮮の脅威や中国覇権の増加を横目に、「日本は本気で安全保障に投資するつもりなのか?」、「そんな事は新政府から聞いたことはない」と米軍基地移転の「ローカルな問題」で、安全保障を揺さぶる政策を、刺激以上のものだと切り捨てる。しかしこの点に関しては沖縄問題を加味しなければいけないことであり、この記者がそれを十分に考慮しているとは言い難い。しかし、それだけに尚更、困窮の中産階級は国民社会政治を支持していると言うのに、鳩山の北京への接近や緊張緩和の外交が、合衆国との安保関係に代わる訳がないだろうと非難する。そこには、中国市場の分け前に与りたいドイツ企業の魂胆と嫉妬が若干代弁されている。

そして、こうした変換はなにも齎さないと断言しつつ、最後に連邦政府の環境と比較して、隣人が助け合うEUやNATOの環境 ― 鳩山が目指している ― は日本には現時点では残念ながら無いとする。そのためには二十一世紀を形成する政治的賢明さが要求され、そのためには大国が崩壊した後それが為したものや創造力を自由に使いきれるドイツのような自尊心が要求されるのだと結論付ける。

まさに、ここに日本のマスメディアが国民を軽く不遜じ、同時に自らをそれよりは上等なジャーナリストや学識文化人と崇め、政治家や官僚や財界と共に特権階級を形成維持したいと思う魂胆が問題視されているのである。



参照:
Die Zukunftsskeptiker, Klaus-Dieter Frankenberger, FAZ vom 22.12.09
首相釈明会見~政権に打撃か~ (虎哲徒然日記)
死刑制度に懐疑的になりつつある私 (Today's Crack)
大きな舵きりの象徴的ご真影 2009-12-17 | マスメディア批評
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