日々・from an architect

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四国建築旅(4) 鳴門のモダニズム建築Ⅰ・増田友也の鳴門市庁舎と市民会館

2009-08-21 15:01:59 | 建築・風景

DOCOMOMOに選定した四国のモダニズム建築は、日土小学校、香川県庁舎、坂出市人工土地、海のギャラリー、それにブリッジで接続された鳴門市庁舎と市民会館の公共建築群である。いずれも戦後に建てられた建築だ。

選定建築は2008年度選定を加えると145選になった。
どの建築も魅力的で、技術へのトライを含めた歴史的な価値や、その地域での位置付け、更に設計した建築家の軌跡を考えるとその存在はかけがえがない。しかし選定に関わった僕たち各自が全ての建築を見てはいない。しかし見ないと当然のことながら実感を得られない。
竣工した建築のコンペの1次審査が通って8月4日に現場審査のある藤本さんのスケジュールや飛行機の都合(如何に安いチケットを取れるかが僕たちの大問題・苦笑)を調整し、日土小学校見学・シンポを挟んだので、四国を2回も横断する羽目になった。高速道路通行料が割引になったのはありがたい。
でも四国は広い。実感した。

さて今回どうしても見たかったのが増田友也の設計した鳴門の建築群だ。
増田友也は1914年(大正3年)兵庫の生まれ(私事だが亡くなった母と同い年)。京都大学を卒業後満州炭鉱工事課に勤務し1994年に応召、戦後京都大学で教鞭をとった(1950~78)。
1972年に三一書房から刊行された現代日本建築家全集にも作品が収録されたように一時代を築き、1981年67歳で亡くなった教育者でもある建築家(今で言うプロフェッサー・アーキテクト)である。

その増田友也は、鳴門市に20の建築を建てた。
DOCOMOMO選定会議で、材料の研究者加藤雅久さんからこの一連の建築を紹介されたとき、ホーという溜め息ともつかぬ空気が流れた。
代表作といわれる京都大学の総合体育館は知っているが、鳴門の建築群はほとんど誰も知らなかった。写真が提示され資料によって概要の説明がされると皆の好奇心が刺激された。

数回の会議の最後に、同時代に建てられ、意匠や材料にも一貫性のある広いブリッジで繋がっている市庁舎(1961)と市民会館(1963)を選定した。市庁舎と繋がっている職員共済会館(1972)も群としての位置付けを明解にするためにと加藤さんは推薦したが、今回訪ねてみて感じ得たのは、10年を経た共済会館は明らかに増田の建築空間の捉え方が違うことの確認が出来たことだ。時代は変わっていくのだ。今回は2棟の選定でよかったと思った。
同時に感じ入ったのは、70年代の共済会館の空間構成は、吹き抜けでトップライトから光が注ぐホールのコンクリートの打ち放し壁をきれいな面として使い、これは今の時代のデザインポリシーと同じだとやけに新鮮だったことだ。

駐車場に車を止め、先ず目に入ったのが市民会館。一瞬市役所の側に何故工場があるのかと思った。異色の意匠で初めてみた僕は度肝を抜かれたのだ。
内部には舞台があるがフライタワーはない。中央ホールは平面で、体育館併用のようだ。舞台の反対側には段状の客席がある。その段の上がブリッジと同じ高さで、ブリッジから出入りができるようになっている。

<写真 左手に市民会館、正面に市庁舎。ブリッジの下は駐車場と通路になっている>



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4 コメント

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Unknown (ソクシラベ)
2009-08-21 18:07:13
お邪魔します。
まだ、残暑が厳しいようですが、いかがお過ごしでしょうか。
特に外でする仕事は大変ですね。
よろしかったら、私のブログに遊びに来てください。
時事ネタのほか、住宅や測量、地質調査などの話題を扱っています。
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これは格好良い! (moro)
2009-08-23 10:11:46
写真の良さもあるかもしれませんが、これは格好良いですね。内藤廣氏やチャールズ・ムーアも思い浮かべてしまいます。1961・63年にはこの建築が在ったのですね。
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ありがとうございます (penkou)
2009-08-24 16:38:15
ソクシラベさん
コメントありがとうございます。
ソクシラベとはなんぞや?と思ったのですが、お仕事と関連があるのですね。興味深く拝見しました。これからも何卒よろしく。
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60年代は面白い! (penkou)
2009-08-24 16:42:44
moroさん
写真で見ると格好いいですネエ(自画自賛)。
格好良いといわれると、鳴門の人たちが喜びそうですね。
60年代は面白い。共通項がありながらも如何に自分のものをつくろうかと腐心している、それが読み取れます。
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