日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

都会の朝に

2013-09-07 21:47:23 | 日々・音楽・BOOK

鍵を忘れて事務所に入れない。妻君に電話をして「今何処?」と聞く。急行に乗り換えるために海老名駅のホームにいる。新宿に着くまでに1時間ちょっとだ。ふと思いついて近くの喫茶店「ブラジル」に入った。入ってみて分かった、この店初めてではない。妙なことだが鍵を忘れたことがあったんだとふと懐かしくなる。一段下がったフロアの席に腰掛けた

可愛いこの持ってきてくれたコーヒーを飲みながら、流れてくるピアノソロに耳を傾ける。その合間に、入った左手のテーブルの白髪の二人の四方山話が聞こえてきた。消費税、原発、テーマは生々しいが笑顔で取り交わす二人を見ると常連さん、町衆なのだ。松本の旅館「まるも」の喫茶店、町衆の拠り所、その朝の光景が浮ぶ。そうだ、京都のイノダ珈琲店の一角に、町の旦那衆の溜まる大きなテーブルがあって、新聞など広げたり談笑している様子を見ながら旅の風情を楽しんだりしたこともあった。
新宿にも、こういう都会の朝があるのだ。

さて、仕事だ。ノートを取り出し古材を使った移築的な新築家屋のディテールのスケッチに取り組む。繰り返し収まりを模索していた集大成的な寸法がぴたりと収まった。特段のことでもないごく当たり前の収め方なのだが。
ホッとした途端、締め切りの迫る建築家を伝える原稿が気になる。大阪の建築家、竹原義二さんの口から出たチャールス・ムーア。シーランチが瞬時に思い浮かぶと同時に、ムーアの作品集の表紙の彫刻的な装飾のある派手やかな写真が頭を掠めた。

ところで、この日から2,3日経っての妻君からの一言。
「アンタ、カギ、スペアヲ、フデバコに、イレトイタンジャナカッタッケ?」
そうだった。あった!