日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

巡り来た新春に想う

2012-01-02 18:24:56 | 日々・音楽・BOOK

お屠蘇は暮れに妻君の兄貴からもらった大月市笹一酒造の「しぼりたて生原酒」になった。
毎年お蕎麦とともに従兄弟の`ひろっちゃん`が送ってくれる亡くなった母の名にちなんだ「千代の光」と思っていたのだが、ついつい暮れの内に飲んでしまった。でもこれがないと年が越せない年越しそばは、京都松葉やの「にしんそば」をちゃんといただいたのでお許しあれ!
お正月になると出てくる京都の店で手に入れた朱色の漆を塗った大きな片口で、それぞれの好きなお猪口に注ぐ。娘はいつものごとく、沖縄の小橋川つる子さんが絵付けをした小ぶりのぐい呑みだ。僕は金城次郎の魚が浮かぶお猪口、妻君のは?さてね!
乾杯をしたあと、わが夫婦と娘の間でお年玉のやりっこをして今年が始まる。

今年は僕の年「龍」だ。僕の人生の`区切りの年`だとの実感がある。
録画してあったヨーヨーマの弾くバッハの無伴奏組曲6番のサラバンドを聞きながらこの一文を書き始めたが、渾身の思いをこめて弾くその表情を見ているとなぜか涙が止まらなくなる。生きていくことを考えたいと思う。

大晦日に書き、元旦に届いた写真家木戸征治さんからの葉書の中の一文を書いておきたい。彼は僕の写真の師である。
「天変地異、世相の変調や波乱はあっても季節は巡る。3mもの深雪下、もうフキノトウが眠りから萌芽へと動き出すかすかな兆しと予感、また春は来る・・・毎回のノートのプレゼント恐縮です。取材メモや記録に熱が入ります」。ありがたい心根に感謝、とある。
年末に今年1年のスケジュール表のあるノートを送った返礼である。

もう25年になるのかと思うが、木戸さんは積雪が3メートルを越し、時には4メートルにもなる豪雪地、過疎になっていく長野県小谷村戸土に一家6人だけで暮らしている赤野さん一家を9年にわたって撮り続けて「家族原点」というヒューマン・ドキュメント(写文集:晶文社刊1986年)を出版した。
娘がまだ幼稚園児だったころから僕たち一家は、木戸さんと一緒に小谷温泉や戸土に行き、塩の道を歩いたりして写真を撮ったが、赤野さんを招いた「雨飾り山麓冬たより」(山と渓谷社刊1987)の出版パーティの其の日、会場の準備をしているときに赤野さんの訃報が入り、赤野さんを偲ぶ会になったことを忘れない。

こうやって年は巡るが、3mもの深雪下に春の鼓動があることも確かなことだ。

<画像 娘からのお年玉>