日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

愛しきもの  愛用している3本の筆記用具

2011-06-19 10:24:47 | 愛しいもの

休日を除いての僕の午前中は、メールの対応で過ぎ行く。
一昔前、事務所(オフィスとか格好良くアトリエといいたくて、時折そう書いたりするがどうも気恥ずかしい)にPCを入れる前は、手紙や葉書を書くことで過ぎていった。ときおり事務所に来た妻君にまた書いているのと呆れられものだ。手紙と葉書は僕の人とのコミュニケーションの大切な手段でもある。
慌しいときや、書いていておさまらなくなって欄外に小さな文字にして書き加えたりするものだから、僕が読み返してみても判読できない文字があったりして、どうしようかと思っても、まあいいやと投函してしまう。申し訳ないとちょっぴり気にしている。

でもそうであっても嬉しいことに、僕の手紙や文字を喜んでくれる人も結構いるのだ。
時代が変わり、メールなしでは何も出来なくなり、原稿もWORDがなくては書けなくなってしまったが、それでも手紙は手書きである。欠かせないのが「万年筆」だ。

写真の左は「シータ」である。セーラーの`85周年記念万年筆 10―5000」スペックを見ると、ペン先は21金クロスポイント仕上げ(KICA処理)、蓋は真鍮で胴は本漆仕上げと書かれている。
封筒に宛名を書くときに使う。太いので具合が良く、意外といい字ジャン!と自画自賛し、一人でニヤリとしたりする。「心ゆくまでお楽しみください」と取扱説明書に記載されているが、至極と言いたく、正しく楽しんでいる。

でもこの万年筆では手紙の本文は書きにくい。太すぎるからだ。そして手に取るのが中字のモンブランである。品番などは失念した。でもこれもまた吾が人生には欠かせない。胴の重さと材質感、僕の指との一体感、愛しき万年筆である。

右のは、ペリカンのシャープペンシル。細見のスーべレーンD400。シャープペンの芯は柔らかい方が好きで、0,5ミリでは4Bを、建築のプランニングのスケッチに良く使うの0,9ミリは2B。アアルトは7Bで建築のイメージのあの独特の味わいのあるスケッチをしたと言われているが、さて7Bなんてのがあるのかナア?
さてこの愛しきペリカン。常用している芯はパイロットENO2B、0,7ミリである。

何事にも、ささやかな物語がある。
僕の親友の一人、かつて僕は彼にくっついて十数年、写真を撮り歩いた。
木戸征治、高知県土佐清水の分校、富ちゃんの入学から卒業までの6年間を追いかけて「ちんまい分校」(1983年あかね書房刊)を発表し、過疎になっていく長野県の豪雪地帯小谷村戸土集落にただ一軒残った赤野さんご夫婦の生活を8年かけて撮って「家族原点」(1986年晶文社刊)という写文集を出し、写真展を行った写真家である。
彼の(写真の師を彼と言うのはおこがましいが)還暦の祝いに、ほしかったとずっと思っていたと言う懐中時計をプレゼントした。

翌年の2月の誕生日に、僕がもらったのは、このペリカン・スーベレンD400である。写真が僕の人生の一翼を担っていた、その伴侶なのだとも言いたい。