日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

ライカM9と LUMIX GF1:40ミリの世界

2009-10-04 21:21:00 | 写真

ライカ包囲網に囲まれている。と言ったって3人だけど、仲良しだし身近にいるので困るのだ。
一人は著名写真家Tさん、二人は建築家、ラージファーム(大手設計事務所)のHさんとアトリエ派のMさんだ。3人ともライカM8を使いこなしている。僕は持っていない。

M9発表の3日前、Mさんからメールが来た。「M9が発売されます。買っちゃいませんか!」。えっと思って添付されているライカ社から送られた英語で書かれたプレゼンメッセージを開いた。文字を辿るとFULL SIZE とある。そこに掲載されているプレゼンのための写真にも味がある。
まいった!デジタルのレンジファインダー機でフルサイズとは・・僕が持っている数本のズミクロンやエルマリートがそのままの画角で使えるではないか。ニコンD700とPCE-24mmを使ってみて、写真はフルサイズだ!と実感し、宣言したばかりだ。
Mさんに電話した。撮像素子は日本製らしいですよという。へー、日本製ねえ!「買っちゃいましょうだって?そんなこと言ったら我が家は即離婚ですよ」と笑った。

追っかけてHさんからもメールが来た。「M9がでますね」、とあって「ライカショップに行ってみようと思う」と書いてある。返信した。「ショックですよね、ライカは日本の技術を追いかけているのだと思っていたら追い越された、でも日本製の撮像素子だって?」。
Hさんに案内してもらって三菱一号館を一緒に見学したときに撮った写真を葉書にして、同じことを書いて写真家Tさんに送った。メールで返信が来た。「M9を予約しました。馬鹿です。」

急にライカのレンズを使いたくなった。
Tさんに秀逸な職人を紹介してもらってオーバーホールをしてもらい、なんと買った新品のときよりもシャッターの感触がよくなったM6がぼくの手元にある。若いがすごい職人がいるのだ。でもいまの僕はデジタルだ。僕を囲んでいる包囲網もデジタルなのだ。

オリンパスのEP-I。マイクロフォーサーズ。M9を予約したTさんが白いEP-Iを持ってきた。しっかりしたつくりで魅力的、Mマウントアダプターを使うとズミクロンが使える。三茶ペンクラブをTさん達とつくってハーフサイズカメラで「まち歩き」をした僕だ。
ただマイクロフォーサーズは焦点距離が2倍になる。17ミリは2倍の34ミリの画角になる。と思っていたところにLUMIX GF1が発売された。パンケーキレンズ。20ミリF1,7.つまり40ミリF1,7だ。

戦略だといってしまえばそれまでのことだが、カメラ雑誌のLUMIX開発者の発言が目に留まった。「GF1を最初に発売したのでは受け入れられなかったと思う、また電気屋が・・と」。
彼らは解っている。建築の仲間にいわせれば、僕のイメージはいつも持ち歩いているデッカイ一眼レフなのだそうだ。
写真を撮るのは『一期一会』。二度撮れないというのは実感、でもシンポジウムの写真を記録するのにD700を持ち歩くのは大変だ。一期一会に耐えられるコンパクトな信頼できるカメラを常にバックに入れて持ち歩きたい、いつ何が起こるかわからない日毎のドキュメントを撮り続けたいというのが僕なのだ.

こういう言い方は、ちょっとカッコいいでしょう!カッコいい生き方を宣言するのはカッコいいと思っていたら、既に宮脇檀さんが「カッコいい」が人生観だと言っていた。読んでいると父への想いに涙が出てきてしまうお嬢さんの宮脇彩さんが書いた「父の椅子 男の椅子」(PHP刊)。
がっくりしたが、でも僕は僕だ。

悩む僕はTさんに諭された。「LUMIXパンケーキは秀逸、40ミリに慣れたほうがいい」。撮ってみて納得した。
初めて使う40ミリの画角。これで「まち」が撮れる。40ミリの町は魅力的だ。切れ味がいい。ズミクロン35ミリは人臭い。LUMIX GF1を買ってしまったのだ。

ところで「余話」を。

Hさんは銀座を歩いたつい先日、奥さんを連れてライカショップに行った。ボーナスをつぎ込んでといったら、置いとく場所がないから今までのカメラを整理してね、と易しく奥さんに諭された。
僕も言われた。「今までのをみんな処分して買ったら!」
でもそうはいかない。D700は僕の分身だ。GF1をいじくりまわしてにやついている僕を見てあきれられたが、うれしいことに我が生活も安泰、歳をとってくると妻君も優しくなる。
そのLUMIX GF1は僕の期待に応えてくれそうだ。

撮り始めたら40ミリの『まち』と、40ミリの「女」はなんとも魅力的だ。

<写真 ズミクロン35mmをつけたGF1>