日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

はまった「池袋ウエストゲートパーク」

2008-10-13 11:44:45 | 日々・音楽・BOOK

朝、家(うち)を出るときに「なんか面白い本ない?」と聞いた。
これどうかなあ、と妻君に渡された文庫本。そして嵌まってしまった。
石田衣良の「池袋ウエストゲートパーク」。
石田衣良?聞いたことがある。今旬の人気作家だ。
どれどれ、と思いながら読み始めた。乗った小田急通勤電車の1時間10分。あっという間に新宿に着いてしまった。

舞台は池袋、(おれたちはカッコつけるときはいつも「ウエストゲートパーク」と呼んでいた)西口公園。`おれのPHSの裏側にはプリクラが一枚貼ってある。おれのチームのメンバー五人が狭いフレームになだれ込んで写ってる色のあせたシール`という書き出しで始まる。

一人称で書かれる主人公のマコトは、少年課の吉岡のいう,ヤー公のファームだという高校を卒業してプーになった、と自己紹介をする。ところがこのプーは、大柄で闘いにも強く、感性豊かでカッコいい若者なのだ。池袋西一番街でおふくろのやっている果物屋を手伝っているが、そのおふくろとのやり取り、思わずにやりとしてしまう。この子ありてこの親ありか?いや逆かな!プーは店先にバルトークの弦楽四重奏を流したりする。続編に、僕が気になっている現代音楽の旗手ジョン・ケージが出てきたのにはまいった。
そしてマコトはトラブルシュータになっていくのだけど、まあ僕にとっては裏世界の出来事。でもGボーイズをはじめ、登場人物の誰もがあまりにも魅力的に生き生きと描かれており、今の若者も捨てたものではないと、困ったことにこれは、ル・ポルタージュではないかと思ったりしてしまう。石田衣良の世界に同化してしまうのだ。

ことに女だ。映像作家加奈。こんな書き方をする。
`思い出しただけで胸が痛くなるようなキスってあるよな。誰かの歌にもある。いつか愛の謎が解けるって`
文体。僕にはない、いや誰もが持ち合わせていなかった軽いこんな書き方。`おれたちは手をつないで眠った。バカみたいだろ。・・・だれかと本当につながって感じた初めての夜。恋が始まるのはそんなときだ`
初恋は初恋だから終わるのだが、マコトが心底持っている人に対する慈しみと愛情、これが僕たちの読後感をさわやかにする。人が死んだりするにも関わらず。マコト=石田衣良なのだろうか!

ふと気がつくと、妻君がⅥを読んでいて、家に来た娘がⅦを読んでいる。僕はⅣを読み上げて次は妻君が図書館から借りてきたⅤ「半自殺クラブ」だ。