日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

07北海道の旅(3) 横から舞い上がる雪

2008-03-27 13:06:50 | 建築・風景

11月なのに雪だという。それは楽しみだと、僕なりに万全の用意をした。万全といっても昨年買ったヨネックスの雪用の革靴、それに手袋と毛糸の帽子だ。
JAL機の窓から下を見た。雪がない。
迎えに来てくれたMOROさんと笑顔で手を振る。一年ぶりだ。雪の少ない所を選んで千歳空港をつくったとはいえ、ないねえ!と問うと、札幌市内はですねえ、と意味ありげだ。
夜から降り始めた。
そして2日後、釧路へ向かう。反住器(毛綱毅曠の設計した母の為の住宅)を訪ね、毛綱毅曠(もずなきこう)のお母さんにDOCOMOMOで選定したプレートを差し上げ、厚岸に建っているやはり選定した「北大臨海試験場」を観るためだ。そして毅嚝建築ツアーをやる。

市内の高速道路は閉鎖している。雪が積もったのだ。MOROさんは車間距離を取って慎重に慎重に車を走らせる。それでも時折ツッとすべる。スタッドレスが3年目、喰い付が衰えた。スリリングで北海道に来たのだと僕は面白がったが、MOROさんは来年はタイヤを取り替えなくちゃと心配げだ。

通り道の夕張は雪に埋もれている。まちの中心で左折し、そして右折する。この季節から雪と対峙しなくてはいけないのは厳しいと思った。この地にさえ箱物を乱立させることになった時代、日本中がそれが当たり前でそれが社会を、つまりまちを活性化させ、生活を豊かにすると思い込んだ時代があったのだ。いや今にしてもと考えさせられた。でもここで生きていかなくてはいけない人がたくさんいる。故郷だからだ。
やりかけの高速道路の工事の現場が時折現れる。政界で問題視されている課題を思い出した。ここに高速道路がいるのか。高速道路はバイパスだ。まちを通過してしまう。まちが置き去りにされてしまうのではないかと気にかかる。

その高速道路に乗った。日が差し始めたが、微かな風でも雪が舞う。驚いてMOROさんに「ホラ横から吹いているよ!」とまくし立てると、何が珍しいのかと意に介さない。北海道の雪はサラサラでどこででも横に飛んでいくのだ。

ところで滑ってひっくり返り、したたかに頭を打った。一瞬何が起きたのかわからなかった。気がついたらカメラを持った右手を差し上げ、カメラは?と叫んでいた。
釧路へ行く通り道に「水の教会」があるという。ふと思い出したMOROさんがよってみましょうか?と言ってくれた。断るわけがない。この教会は、池の中に十字架を立てた安藤忠雄さんの代表作。ところが教会を持つホテルの玄関が雪に埋まっていて足跡もない。一ヶ月の休館。しょうがないと未練がましく戻りかけた途端滑った。雪靴を過信した。道が凍っているのだ。靴底のゴムがMOROさんのスタッドレスと同じになったのか?

釧路の夜、ホテルのマッサージのおばちゃんに雪道の歩き方を教わった。チョコチョコとね、こうやってと実演入りだ。ほんとはね、もんじゃあいけないのよ、と首にはそっと、そして肩と背中、腰、ふくらはぎ、何処を押されても飛び上がるように痛い。痛い痛いと身をねじると、おばちゃんは喜んで、話が弾んだ。身の上話だ。

07年の秋は一ヶ月の間に、韓国、新潟、宮古、そして北海道。面白かったがさすがにこたえた。行く年、来る年、身体に来るのだ。身体は、いやだと言っても年齢(とし)を教えてくれる。

<写真 夕張の街路>