日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

建築写真って何だ! ニコンの24mmシフトレンズD

2008-03-09 16:45:34 | 写真

ちょっと大げさだが、これは事件だ。
2月22日、ニコンのPC24㎜、F3,5Dアオリ機構(シフトとチルト)レンズが発売されたのだ。
「D」?デジタル対応だ。写真雑誌の新製品紹介欄には、さり気なく「広角シフトレンズ登場」、そしてニコンでは今後シフトレンズをシリーズ化していくとしか書かれていない。
ヨドバシカメラによって、レンズのカタログを手に取った。やはりフルサイズカメラD3に使えると書いてある。D300にも使えるようだが、広角を使って建築を撮るのにはフルサイズでないと役に立たない。
そうかやはりニコンはフルサイズの廉価版、つまりキャノンのEOS5Dに対応する機種を近じか売り出すのだろうと思った。そのカメラには、フラグシップ機D3にはないダスト処理(ごみ対策機構)もなされるに違いない。これは間違いがないと確信する。

素粒子にゴミのつくのが嫌で、僕はレンズ交換をしない。それじゃあ一眼レフを使う意味がないジャン!と、建築の仲間たちに笑われたばかりだ。癪にさわるが事実そうなのだ。これは「事件じゃないの?」

僕はPC28mmは持っているがニコンには24mmがなかった。キャノンにはTSE-24というシフトもチルトもできる24㎜のレンズがあり、それが使えるデジタルフルサイズカメラもある。
このレンズを使いたいために多くの友人が、ニコン党からキャノン党に転向した。僕はどうしても踏み切れない。そんな腰軽ではないのだ。と言いたいが、いやいや実態はやせ我慢、愛妻にまた買うのか、「馬鹿じゃないの!」と一蹴されるのが眼に見えている。
それより何より、幾つものフィルムカメラとレンズを持っているし、どうも使い込んだニコンこだわっているのです。結構「俺は保守的なのだ」とふと思う。

3月5日、DOCOMOMO主催で選定した「東京拘置所」(小菅刑務所)を見学した。若き歴史学者Yさんに「行ってきましたと」と自慢げに池辺陽の設計した「鹿児島宇宙空間観測所」の写真を見せられた。あまりにも見事にシフト(縦線の垂直)がなされているのでカメラは何?と思わず聞くと、案の定キャノンの5Dに24mmのシフトレンズ、フーっと溜息が出た。ニコンから24mm出たよというと、エーッと今度は彼のほうが愕然とした。彼は転向者(失礼!)なのだ。

デジタルになると、ソフトで収差(ディストーション)修正やパースペクティブも直せるというが、ディストーションはともかくシフト調整はなかなか旨く行かない。それにファインダーを覗いて確信を持ってシャッターを押すのが撮るということだ。デジタル補正を頼りにしては撮れない。
サーて、値段だってねえ!レンズだけだって30万円を越える。

写真家Nさんからメールが来た。仕事として初めてデジタルで撮った(D300)写真が東京新聞に掲載された。カラーのはずがモノクロになっちゃったと笑っていうが、送ってもらった新聞の写真を見てドキッとした。名コンビ、作家森まゆみさんと組んだ3月1日の芸術欄、`根津教会`と木造3階建ての`はん亭`の写真。シフトはなされていないが存在感のある温かみのある建築の姿だ。これがシフトでカチッと撮られていたら、この二つの建築の街の中にある存在が表現できなかったに違いない。

人の眼は不思議だとおもう。建築の上部はパースペクティブ、つぼまって見えるのに、まっすぐに建っているように感じている。
建築写真とは何か?シフトレンズなんて・・・アホか!
楽しい悩みがまた始まった。

<写真 左・東京拘置所 右新聞記事>