僕が仲良くなる人間は皆変だと愛妻が言う。その筆頭は「あんた」自身だと言いたい様だ。
僕はこの言葉を誇りに思う。だって林昌二さんだって坂田誠造さん鈴木博之さん内田青蔵さん篠田義男さん大澤秀雄さん松隈洋さんだって、それに東海大の助教授になった渡邊研司さんも年齢を越えての仲良しだし、僕の周りにいる人は皆単に親しいという言葉を超えて仲の良い人だといえるからだ。
松波秀子さんという素敵な女性建築歴史の研究者だっている。工学院大学の初田教授は、若き日建築家を志したそうで、何処かで許しあえる共通認識が生まれた。建築写真を撮る清水襄さん飯田鉄さん中川道夫さんもいる。建築東京でユニークな写文を連載している下村純一さんとも、本音で言い合える仲だ。
それに何より、一緒になってから三十数年たつ我が愛妻は、色々と言いながらも僕を認めているようだ。と書いてみて本当かな!とちょっと気にならないでもないのだが、変だというのは、つまり世の規範では捉えきれない「変に面白い人達」だと言っていると僕は勝手に解釈している。娘はといえば、そんな僕たちの会話を聞いていて、なんとなくにやりと含み笑いをしているような気がするのだ。そこがね、僕が我が娘の好きなところなのだ。
さてこのブログに時折、その変だという友人達を書いてみようと思う。
「素描 建築の人」なんておかしなタイトルにしたのは、建築家だけでなく、建築に志を持つ様々なジャンルの人との交流も考え書いてみたいからだ。書きたい人は「人」つまり建築人ではなくやはり「家」と言いたいのだが、ジャンルがまたがると共通語がない。それに、とは言え僕の勝手な思い込みでしか描けない、つまり「素描」としかいえないとも思うからだ。
< 金澤良春という建築家 Ⅰ >
リード文に書いた仲良しの建築家とはいえないかもしれないが、金澤良春さんは筋金入りの変な建築家だ。言い換えればなんとも不思議な素晴らしい建築家だ。
松下電工汐留ミュージアムで行われた「西澤文隆建築と庭実測図展」を覗いたとき、偶然にも金澤さんがギャラリートークを始めるときで、大勢の人の背後で何事かと聞き始めたのだが、次第に引き込まれていつの間にか僕は展示されている原図に張り付いていて、いつの間にか質問などしていた。
そしてトークの後西澤さんの図面だけでなく、彼の描いたチベットの寺院の展示実測原図を見ながら話し込み、すっかり意気投合した。それが彼との出会いで、わずか1年半前のことなのだ。
でもなんとしたことか、どんどん仲良くなっていく。
僕の事務所を訪ねてくれた金澤さんは、西澤文隆没後20年を記念して出版される重い豪華本「日本の建築と庭・西澤文隆実測図面集」を置き、これから行商するんですよと笑う。そして、彼がトライし始めた抱えきれないほど大きな実測原図を筒から出して、打ち合わせテーブルに広げ始めた。見せたいという思いに溢れていて圧倒される。そこが変なんだけどその原図が凄いのだ。
<この項6/18に続く>