日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

日曜日の朝 ビル・エバンスのタッチ

2005-10-16 12:27:56 | 日々・音楽・BOOK
日曜日の朝はビル・エバンスのマイ・フーリッシュ・ハートで始まる。
耽美的といってもいいピアノのつぶやきと共に、スコット・ラファロのベースが半音遅れて爪弾くように支え、ポウル・モチアンのブラシがシンバルを微かにたたくと、カーテンを開いた窓から朝の斜光がさっと部屋に注ぎ込む。
薬缶に水を入れてコンロにかけ、白いナショナルのCARIOCA-MILL52Mに豆をいれてスイッチを押す。
今朝の豆は友人の送ってくれるブルマンNO1。ガーっと豆を挽く音が始まると、ぼさぼさ頭の女房が‘もう起きたの`とぶつぶつ言いながら隣の部屋から出てくる。その頃曲はアルバムタイトルの軽やかなワルツ・フォー・デビイになりすぐにデトアー・アヘッドに変わってゆく。
コーヒーの香りが漂いだす。

このアルバムは、1961年6月25日ニューヨークのビレッジ・バンガードで録音された。耽美的と書いたが何処かにかげりのあるエバンスのピアノを、心で支え奔放なプレイを展開した最高のパートナーであったラファロをこのセッションの10日後、自動車事故で失った事を考えると、何度繰り返して聴いてもこのトリオへの思いは尽きない。
同じライブの残りを収録したサンデイ・アット・ザ・ビレッジ・バンガードもあわせて聴いたりするが、僕にとってはこれは夜、ライトをスタンドだけにし、スコットランドのFINDELATER`Sなどをストレートで傾けながら聴くのが最高。お客のざわめきなどが伝わってきて、ついつい人生など考えてしまう。

とまあ格好よく書いてきたが、つい先日の日曜日、久しぶりに「ワルツ・フォー・デビイ」をかけた。日曜日が始まったと、心がほのぼのとしてきた。女房は相変わらずの格好で部屋から出てきて久しぶりだね!とのたまわった。そういえばずいぶんこの感じを味わわなかった。なぜかと考えると大リーグのせいだ。イチローが好きな僕は、起きるとすぐにBSのスイッチを入れてしまう。これもまたなんともアメリカなのだ。
球がミットに治まる音や、バットの空を切るが聞こえてきそうな緊迫感もいいが、ヤンキーススタジアムのグランドキーパーのパフォーマンスも楽しい。セイフィコ・フィールドのグランドキーパーのダンスも大好き。ここでは汽車の汽笛の音が聞こえてきたり、雨が落ち始めると大きな車輪がゆったりと動き出して屋根が移動してくる。新しく作った球場なのにそのなんとなくノスタルジックな様子もいい。

秋の夜はゆっくりと過ぎてゆく。
FINDELATER`S12年のふくよかな甘い香りをちびちびと味わいながら、こんなたわいのないことを書いていると、深夜1時を回った。アルバムはアローンに代わり、3曲目のミッドナイト・ムードになった。そうそうミッドナイト・ムードなのよ!ちょっと人恋しくなったりする。気がつくと曲はネバー・レット・ミー・ゴーにかわっている。面々と続く呟き。それにしてもビル・エバンスのソロのタッチはたまらない。
今夜もまた夜更かしか!