田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

許すまじ!! ホームレス狩り/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-22 00:03:55 | Weblog
3

翔子が向こう側からVのサークルを崩そうと攻め立てる。
ミイマのいない寂しさをみせず。
健気に夢想流の剣をふるっている。
「おう、日本の美少女剣士すばらしいね。Beautifulね」
マスターは腕を斬りおとされた。
まったく気にしていない。
青い血も止まってしまった。
だが、再生ははじまっていない。
美香には興味があった。

超常現象にはどんなことにでも興味がある。
どうしたメカニズムで腕が再生するのか? 
SFXのように。
『ターミネーター』のシュワちゃんみたいに。
腕がニョキッと生えてくるのだろうか。
それとも接着剤で接合するのか。
IP細胞のように万能の細胞のなせることか。
わからない。
もっとも美香には――。
じぶんのT能力だって――。
どこからくるのかわかっていない。

こどものころからふたりとももっていた。
姉妹で泣くとオモチャが天井にはりついた。
遠くにいる父の声が身近にきこえた。
そんな才能を努力して強化しただけだ。
「美香ちゃん。なに考えているの」
マスターが近づいてくる。
「オネエ。雑念にとらわれないで。パワーがダウンしているよ」
香世が美香の力が弱った分を補おうとしている。
真っ赤な顔だ。
サイパワーをフル稼働させている。
「モタナイヨ。オネエ、どうする」
美香も集中した。
だがそのと――。
すでに――。
マスターは美香&香世のパワー圏の外に逃れてしまった。
長々とあくびをしている。

「ああつかれたな。わたしになにをしたのかな」

まったく、疲れているようすなどない。

白装束のクノイチ48が数人中空に跳んだ。
白いチョウが花にたわむれているようだ。
だが相手は、吸血鬼。
近づけば鉤爪がおそってくる。
牙が血をすいたくて伸びてくる。
たがら、上からの攻撃がいちばん有効だ。
爪も牙も届かない距離から目や喉を標的とする。
皐月手裏剣をなげる。
金属より木製の手裏剣によわいなんて。
ヘンなヤツラダ。

背後で悲鳴がした。
ホームレスにVの群れおそいかかっていた。
「血に飢えているのでね。ちょうど、狩のお時間だったのですよ」

マスターが解説している。
白い雪に真っ赤な血が飛び散った。
何人殺せばすむというのか。
美香は浮船をぬきはなった。

許せない。
指剣もかまえた。
許せない。

両手を垂らした。
このほうが速く走れる。
両手を八の字にかまえて疾走する。

ホームレスをおそう吸血鬼。
許せない。
「止めて!!」
叫んでいた。
その声だけで、吸血鬼がふっとんだ。
「止めて!!!!」
口元から血を垂らしていた。
吸血行為にふけつていた。
Vが倒れた。
抵抗のできないホームレスを狩る。
許せる行為ではない。
美香は叫びながらVの群れに指剣と浮船をふるう。
両腕に吸血鬼を斬る手ごたえが伝わってきた。


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クノイチ48雪上の乱舞/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-21 10:13:30 | Weblog
2

 アツシの手はかじかんでいる。
 リャカーのパイプの取っ手に。
 へばりついているようだ。
 むりしてひきはがそうとすれば。
 パイプと手の平の間で。
 パリッと音がしそうだ。
 凍っている。冷たい。寒い。
 だがうれしかった。
 こころは、ほのぼのとしている。
 
 姉妹の役に立っていることが。
 ホームレスのオジサンたちが。
 よろこんでソバをたべてくれたことが。
 うれしかった。
 
 あいつらの手に握られていた鉄パイプ。
 ひとを傷つけるためのものだ。
 ひとを、殺めるためのものだ。

「アツシくん。このままお店に帰って」

 なにかやろうとしている。

「ふりむかないで。そのままゆっくりと……お店に向かって歩いて」

 姉妹は雪の花を咲かせた桜の古木の影に潜んだ。

「モモ。後をつけられる?」
「感度、OK」

 歯をむいたホームレスVの襟に。
 クリップほどのマイクを刺しておいた。
 姉妹は桜のゴツゴツした幹に手をおいている。

「オネエ。百子さん、みえないね」
「さすがクノイチ48のリーダー。わたしにも……みえない」
「忍者映画みたいだね。白装束で穏行してるのよ」

 少年たちはVとつれだって樹木の奥にあるいている。博物館の方角だ。

「翔子。百ちゃんそこからだとみえる?」
「雪の乱反射でみえない。なにか白いものが雪の上を這っている」
「それよ」
「でも美香の予想があたったね。それってT能力なの」
「闇法師にきいたの」
 
 マスターVの鉤爪を避けずに体でうけた。
 体をはった。
 Vの鉤爪を封じた。
 美香がVの片腕を斬りおとした。
 それから、法師にすがった。
 そして法師がきれぎれのことばでいった。
「ここのモリではない。ヤッラの巣窟はこの森ではない。武器を銀でコーテングするのだ」
 ほとんどテレパシー。
 声にはなっていなかった。
 頭に直接つたわってきた。メッセージ。
 でも……たしかに法師のことばは姉妹につたわってきた。
 理解することができた。
 MVはいかにも庭園美術館の奥の森に住んでいるようなことを発言していた。
 だがいくら捜査してもみつからなかった。
 Vの巣窟、あるいは寺院らしきものはみあたらなかった。
 そこで神宮の森。
 早稲田の森。早稲田には森と呼ばれるほど樹木はないが。
 そして上野の森。
 森と名のつくところは、神社仏閣の森までくまなく探した。
 そして四日目の雪の朝、ついに美香&香世の地元。
 上野の森に探索の輪を狭めた。
 
「なに、悩んでいる。なにも悩むことはない。こうしてやればいい」
 少年たちが血吹雪を上げて倒れた。
 雪が赤く染まった。
 体をヒクヒクさせている。
 エイドリアン、ヴァンパイア・マスターが中空にういていた。
 もちろん両腕とも健在だ。
 回復力はなみの吸血鬼のものではない。
 さすが、マスターと賞賛する。
「役立たたずは、レンフイルドにすることはない。血を吸っていいぞ」
 少年たちをつれてきたホームレスを装ったVにいっている。
「でも……わたしの人選がまずかったのかと……」
「だから、そのことでは悩むことはない。そこにいる美香ちゃんに邪魔されたから、ホームレスの血を吸い従者にすることには失敗したのだ」
 
 姉妹の追尾はしられていた。
「出てきたらどうだ。美香ちゃん」
 MVがフワッと雪の上におりたった。
 雪の上に立っている。足跡はつかないだろう。
 雪の上に浮かんでいるようだ。
 
 姉妹は剣を抜かない。
 美香は指剣さえかまえない。
 なにで戦おうとしているのか。
 剣も指剣もかまえずに。
 MVと美香&香世はにらみあった。
 そのまま三人は膠着。雪の上で凍りついた。
 MVの顔に苦痛の色がひろがった。
「うぬ。なにしている」
 姉妹は思念をとばしていた。
 念力をほどばしらせていた。
 T攻撃だ。
 ハジメテのT能力による攻撃念波。
 姉妹の体から霊気が放射されている。

「参る!!」
 百子が雪の中から舞い上がった。
 MVの頭上に刀をきらめかせた。
 美香が斬りおとした腕。再生した腕が。
 また斬りおとされた。
「銀の刀で斬られた腕は、どうしたら再生できるかしら」
「推参!!」
 つぎつぎと白装束のクノイチ48が雪のなかからあらわれた。
 レンフイルドがマスターを円陣をつくって護衛した。
 白装束、アーマーは銀でコウテングしてある。
 いままでのように。
 吸血鬼の鉤爪の攻撃で。
 生命を落とすことはあるまい。
 百子はそう願っていた。


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わたし少年を消せない?/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-20 11:35:54 | Weblog
Part2 超能力wars

1

東京にめずらしく雪が降った。
上野公園にも5センチほどの積雪があった。
アツシがリャカーを引いている。
美香&香世。神妙な顔で雪景色を眺めている。
毎日みなれている公園だ。
それがまったくちがったようにみえる。

雪。
が降ったからか。
雪。雪。が広い大地を純白にうめつくしているからか。
雪。雪。雪。雪。が、樹木に白い花を咲かせているからか。

ゆきゆきゆきゆきゆきゆきゆきゆき。
雪。雪。雪。雪。雪。雪。雪。雪。
ユキユキユキユキユキユキユキユキ。

ホームレスのおじさんたち。
どこにいったの?
姉妹の心情はそこにあった。
闇法師のおじさんとの別れがあった。
いずれ会えると、法師のおじさんは言っていた。
あれから歴史のほんを読んだ。
歴女といわれても恥ずかしくない。
沢山読んだ。
それで上野の彰義隊のことがわかった。
官軍がきらいになった。明治維新てなんだったの。
あれから戦争ばかりつづいた。

坂本竜馬がきらいになった。
新撰組。
大好き。

考えてみる。
但馬家のルーツは幕臣だ。
そのためかな。
そのためかな?
美香がつぶやく。
香世がつぶやく。
ふたりはおなじことを考えていた。
『竜馬』をみなかった祖父の気持ちがチョッピリわかった。

みんなどこなの。
みんなどこなの。

リャカーに積まれた発泡スチロールの容器から。
天ぷらそばのいいにおいが積雪で人のいない公園にひろがっていく。
ポッリポッリと人影がわいた。
トイレから。
樹木の下に移動させたブルーの小さなテントから。

毛布をまきつけ。
プチプチシートをまきつけ。
ビニールのゴミ袋をまきつけ。
レジ袋を広げてつなぎあわせて。
まきつけていた。

「さあ、あたたかな天ぷらそばよ」
「さめないうちに召し上がってくださいチュ」

香世が劇画のセリフのノリで声をかけている。
ふたりとも照れているのだ。

「法師のオジサンみかけたひといないかな」
くびをよこにふった。
だれもしらないらしい。

「まだありますよ」
アツシが感激している。
泣き声で勧めている。

「まだ、ありますよ」
「容器ごともちかえってもいいかな」
「どうぞ。どうぞ」
容器ごと……。
美香&香世がどうじに顔をあげた。
妖気がただよってきた。
容器ということばを耳にするまで――。
まったく、気づかなかった。
少年たちだ。
手に手に鉄パイプをさげている。
まさかのまさかだ。
この白昼、いくら目撃者がいないからといって。
ホームレス狩をする気!!

「あいつらの雰囲気。そっくりだ。ぼくを襲ったヤツと」
「兆子さんに助けられたときの?」

アツシがウナヅク。

「どうせ、生きていてもなんの役にもたたない。クズだ。死んでみたら」

少年たちのホームレス狩だ。
このまま放っておけば、何人か哀れな男たちが殺される。

「オジサンたち、逃げて」
「なぜ、オジョウサンたち、おれたちの味方する」
「法師のダチなのよ。いなくなった法師を探しているの」
「なにうじうじいってる」

パイプがふりおろされた。少年は固まった。
ナイフで突きかかってきた。少年は凍った。

そしてホームレスのひとりが牙をむいた。少年はフリーズ。
牙をむいた男も凍結した。

「人の血なんかすうと、ソバの味がわからなくなるわよ」

美香は男があの夜たたかった吸血鬼のひとりと視認した。

「オネエ。新しい念力がみについたわね」
「みなさん、いまのうちにこの場をはなれてください」

この少年たちをわたしは消すことはできない。美香は悩んだ。


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わたし広い所でも戦える/超能力シスターズ美香&香世  麻屋与志夫

2011-01-19 12:54:27 | Weblog
26

 その闇の中へ美香がふみだした。
 広大な庭園を常夜灯だけがてらしている。
 いたるところに、闇が滞っている。
 まだ機動隊員が銃を乱射している。
 最後の一人になるまで戦う。
 そんな気迫が銃にはこめられている。

「くるわ。くるわ」
 という香世のツブヤキが後から追いかけてくる。

 美香はバラヘンスの外にいた。
 庭園の真ん中にいた。
 ミイマが真っ直ぐにサタンに迫っていった。
 真っ向勝負を挑んだ。
 堂々としていた。
 その動作。
 美香は感動した。
 あれほど美香を悩ませていた広場恐怖症。
 治っていた。快癒していた。
 ミイマの勇気への賛歌。
 ミイマへの尊敬の念。
 それが恐怖症を治した。
 人の存在は、肉体だけではない。
 心にささえられているのだ。
 翔子、百子、みんなに勇気をあたえてくれた。
 そして美香にも――。

「くるわ。オネエ、くるよ」
 香世が追いすがってきた。
「おねえ。広場だよ。パリヤはる」
「その必要はないみたい」

 黒い森からそのものがあらわれた。

 闇よりも暗いもの。
 闇をさらに恐怖で暗くするもの。
 サタンが去った後だ。
 これほどの負のエネルギーを放射するのは。
 数え切れぬ肉塊となって横たわるものを避けるでもなく。
 そのものは――。

「ヴァンパイア・マスター。エイドリアン。やはりあなたでしたか」
 アンデイが美香の隣に並び、赤毛の男をにらんでいる。

「えっ!? この男が。マスター」
「赤い毛のロックグループが日本に向かったというので……おいかけてきてみれば、やはりあなたでしたか」
「サタンに呼ばれたのでな」
「日本になんのようですか」
「投資だよ。投資。日本はいま、食べごろだからな」
 とんでもない応えがもどってきた。
「さきほどのつづきといくかい。かわいい美香ちゃん」
「まて、わたしが相手だ」
「いいえ。アンデイ、わたしにやらせて」
 
 サッと、美香は指剣をかまえた。青い炎が剣の形となった。
 マスターが鉤爪でおそってきた。

「その爪、際限なくのびるとおもって」
 百子と翔子がアドバイスを美香の背にとばす。
 爪とつめが交差して金属音をたてた。
 脅しているのだ。チャリン、チャリンと音をたてて美香に迫る。
 美香は後退する。
 マスターと美香。
 ふたたび、にらみあった。

「きたならしい鉤爪で脅かさないで」
「なら、これでどうだ」
 高く跳んだ。
 とび蹴りががおそってきた。
 体術でくるとは!!
 予想していなかった。
 美香は胸をうたれた。
 回し蹴りがおそってくる。
 中空でからだを回転させた。
 恐るべき体技だ。
 無重力の空間で動いているようだ。
 跳ばされた美香。
 さらに爪がのびてくる。
 黒い嫉風が2人の間に割って入った。
「闇法師」
「美香。浮船を使え。あの剣に乗って戦え」
「なにものだ」
「野上吸血鬼族の長。闇法師としれ」
「どけ」
 
 闇法師は避けなかった。
 体をさばいて伸びてきた鉤爪をやりすごす。
 十分にみきれたはずだ。
 それが避けなかった。

「美香。いまだ」
 美香は浮船を空に投げ上げた。
 そしてスケボウにみたててとびのった。
 虚空に浮いているマスターに指剣を叩きこんだ。

 切り口の肩から血しぶきが噴いた。
 青い噴水のようだった。
 
 どさりと大地に倒れた。
 
 闇法師が。

「おじさん、法師のおじさん」
「心配するな。おいらは、吸血鬼。死にたくても、死ねない。復活する。そしたらソバを馳走になる」
「どうして。どうしてこんなムチャスルノヨ」
「美香ちゃんの相手は、おいらだ。なにせ美香ちゃんが生まれたときからの馴染みだからな」
 美香&香世が闇法師の胸にすがった。

「おじさん、はやくもどってきて」
「あいよ。日本の女を外来種から守りぬくためにな」
 さすが、江戸時代の怨念が凝固して形成された吸血鬼。
 日本古来の鬼。
 古いことをいう。
 闇法師が若侍の顔になっていた。
 上野の彰義隊で討ち死にした若武者なのだろう。
 目には涙が光っていた。


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さあ、黄泉の国へ/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-18 17:41:53 | Weblog
25

遅れて到着した機動隊。
吸血鬼に発砲する。
隊員にはふつうの暴徒としかみえていない?

「助けなければ。あのままではみんなやられてしまう」

異能部隊の百々隊長がバラヘンスからとびだす。
父の闘争心。
父の勇気。
ときとして、ウザかった。
でも……なぜ、戦いつづけるのか理由がわかりかけてきた。
父の行動をみて、わかった。
ミイマも太古から戦いつづけてきた。
これは人と人の戦いではない。
人と吸血鬼の戦い。
とだけはいえない。
これは神と悪魔の戦いなのだ。
神の創造した人を闇に落そうとする悪魔との戦いなのだ。

光と闇の戦いなのだ。
そして、わたしたちは光の戦士。
神の代理人。
光の戦士なのだ。

わたしたちは、その聖戦に選ばれし者。
戦いつづけるとこそ、わたしたちの定めなのね。

「みんな、こちらからは弓が射ることが出来るのよ」

ミイマがクノイチ48に示唆する。

「そうよ。Vを射るのよ」

百子が元気になる。
ミイマが堂々とバラヘンスの外に歩み出た。

「あなたの住む場所はこの東京ではない。この森でもない。あなたの住むべき場所は煉獄。地獄におちるがいい」
「なにぬかす。陽光の下に住めないから、地下街だとか、こうした暗い森に隠れている」
「地獄にもどりなさい」
「バカか!! おれはこの日本が好きだ。滅ぼし甲斐がある。いまがチャンスなのだ。政治も経済も混乱している。ナイフ魔が横行している」
「刺殺事件が多いのは、あなたが煽動しているからでしょう」
「そんな堅いこといわないで、美魔ちゃん。おいらと遊ぼうよ。ジャマだけでもしないでくれるかな」
「なにふざけているの」
「ふざけてなんかいない」
「ふざけているわよ」
「美魔。GGのいない寂しさに狂ったか。おれさまに勝てるとおもってか」
「しかり」
「GGを黄泉の国から蘇らせることだって、おいらには可能なのだ」
「なんども、おなじこといわせないで。おなじことばで誘惑しないでくれる」

拒絶のことばを行動であらわした。
ミイマはまっすぐ平然と歩いた。
街を散歩しているようだ。
歩調にみだれはない。
そのまま……サタンにだきついた。
大きく白い天使の羽がひらいた。

「おい、なにする。なにする。やめろ――」
「あら、道案内してくれるのでしょう」
「やめろ。やめろ」
「翔子。百子。GGとすこし遊んでくるね」
「ミイマ!! やめて!!!」

ミイマのやろうとしているとがわかる。
このまま戦っても勝てる相手ではない。
ならば、GGに会いにいく。
このまま黄泉の国へ。
サタンを道案内にして。
バサッと羽ばたきする。
そのまま虚空に消えていく。

止める、ことができなかった。
ミイマの決意を翻すことができなかった。
 
庭園美術館の広い芝生の庭に。

闇が訪れていた。


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どうして魔王が現れたの?/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-17 06:55:13 | Weblog
24

笛をきいて森から帰還してくる。
クノイチ48のメンバーがぞくぞく走ってくる。
足もとがふらついている。
上半身を前に倒している。
息も絶えだえの――疲労。
生命のせとぎわでの戦い。
を、くりひろげていた。
もっとはやく笛をふけばよかった。
彼女たちを追撃してきた吸血鬼には。
翔子、純、美香&香世、アンデイが向かう。
迎撃する。
吸血鬼のあとから異能部隊があらわれた。
吸血鬼のむれは森を抜けた広場で挟みうちとなった。

挟撃したかにおもわれた。
百子はそうみた。
だが!!

つぶやいている。
つぶやいている。
香世が。

「くるわ。くるわ」

美香が。
動きを止めて。

「来る。くる。クル」
「みんな。引いたほうがいい」

ふたりで、どうじに叫ぶ。
翔子と純。

もちろん。
濃い霧のようなもの迫るのを。
感じている美香&香世。
そしてアンデイも退却した。
勝っているのに。
敵を圧倒しているのに。
もどってきた。

「どうしたの? 香世ちゃん」
「直ぐそこまできている。黒い。黒い。嘔吐したもののかたまりみたいな」
「そう。嘔吐物みたいな、気持ち悪い存在よ」
と、美香がつづける。
そして、それが現われた。

森の木々を揺らし。
森の端の芝生を盛り上げ。
巨大なモグラのようなものがせまってくる。
異能部隊が火炎放射器を浴びせた。
なげとばされた。
なんにんかが放射器をもったまま中空になげとばされた。
ものすごい風圧だ。

バサッと虚空で羽根の音。
新手の敵だ。
百子はそうさとった。
そのものは、芝生を盛り上げてすすむものに。
バラの杖を突きたてた。
ミイマがバサッと純白に羽ばたいた。
真っ白な雪のような羽がまぶしい。
薄暮のなかで輝いている。
大地におりたった。

「敵は――」
「ご存じ、サタンだよ」

GGに、飲み屋でからんでいた。
頭の禿げあがった小男だ。

「姿た形で判断しないで。甘く見ないで。形が在ってない者。形が見えなくてもあるモノ」
「ルシファーともよばれている」
「わたしたちが、天国を追われ、堕天使になったのも、こいつのためよ」
「そして、おまえの亭主をゴールデン街で誘惑したもの。契約は成り立たなかったがな。どうだ美魔。いまからでも、おれと組まんか。GGを黄泉の国から連れもどすこともこのサタン様ならできるぞ」
「オイシイ申し出でだこと。でも断る。人は死ぬから、人なの。いちど滅んだのを呼びもどすのは罪よ」
「罪ときましたね。神への忠誠か」
 
拍手をしている。
あいかわらず狡そうな小男だ。
ドンと体に似合わないおおきな足踏みをした。
サタンが盛り上げた大地から巨大な蛇が現われた。
鎌首をみちあげた。赤い舌。チョロチョロ。
周囲には無数の蛇の大群。

「香世。バリアをはって。できればネットヘンス」
「お安いご用」

美香&香世。
どうじに応答した。
いままでとちがう。ヴジブルなヘンス。シ―ドルだ。

ミイマがバラの杖を大地に刺した。
「ツルバラの精よ。わたしたちを守っておくれ」
みるまにヘンスがツルバラで防護された。


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なぜ、わたし命をかけるの?/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-16 15:28:32 | Weblog
23

こんな惨めな戦い。
早くおわりにしたい。
森は広すぎる。
柵の向こう側。となりにの自然教育園の森がつづいている。
都内でも有数な樹木の密生する森を形成している。
クノイチ48。その半数しかまだ集合していない。
広すぎる森でみんなばらばら。
分断された。
父の指令に従えばよかった。
仕掛けるのを、まてばよかった。
わたし、あせりすぎた。
そのために、警官もふたりとも殺された。
百子は孤立していた。
血をながしていた。細かい引っかき傷がある。
百子だからこの程度ですんでいる。

ピピっと耳もとで音がた。
ヘッドホーンをつけたまま戦っていた。

「百子。いまいくね」
「翔子なの?」
「純もきてる。美香&香世も、アンデイもきたからね」

バサッと大きな羽音がした。
また新手のvampireだ。
早く来て。翔子。わたしもたないかも……。

「そんな心配いらない。わたしアンデイ。みんなほらあそこまできている」

襲ってきたBVを片手ではねとばす。すごいパワーだ。
この男が、ミイマのようにWVのアンデイ。
みんなが、わたしのために集まってくれた。
友だちが、クノイチ48をサポートするために駆けつけてくれた。
たすかった。これでなんとか戦える。

「百子、わたしが代わる」
「ありがとう。翔子」

そして、純。翔子の彼、純も戦線に復帰した。

「よかった。よかったね。翔子」
「みんな呼びもどした方がいいよ。百子」

と、美香&香世。

「はやくここに集まるように忍者笛をふいたほうがいいよ」

犬笛みたいな笛。忍びの者だけに聞こえる竹笛。
でも森の各所からもどってきたのは傷だらけの数人。あとは?
……。

「まだ戦っている。相手から離れられないにちがいない」

百子は不安だった。
ばっと、隣の教育園の森で焔がみえた。
異能部隊の火炎放射器だ。
よかった。父も到着した。あっちのほうにまで、吸血鬼がいたのだ。
百子は休む暇もなく、さらに森の奥に走りこんだ。

笛をふきつづけた。

「ダイジョウブ。まだ5人たたかっている。こっちよ」

美香&香世のテレパシー能力。スゴイ。すばらしい味方だ。
美香が長身を利してずんずん森の奥に走りこむ。
アンデイが恋人のようによりそっている。
美香が小太刀を抜いた。
わたしおもうように走れない。
こんなに疲れているとは。きづかなかった。
みんなの駆けつけるのが、いま少しおそかったら……。
わたしヤバかったかも。

テツとトオルが襲ってきた。圧倒的な数の吸血鬼。
トキコがいた。森の奥へ誘いこまれていた。よかった。まにあった。

「リーダー。百子。みんないま駆けつけてくるから」

えっ。なにいってるの。
わたしたち、トキコを助けるために森の奥に駈けこんできた!!
あたりには翔子たちはいない。
トキコと、ふたりだけだった。
森の外で戦っている。
一瞬幻覚をみた。
これから数分後に起きることを先取りしてイメージとして捉えた。

ふたりだけで、なんとかもちこたえなければ。
百子は生まれて初めてみたイメージに戦慄した。
ヘッドホーンが音を立てた。

「百子。いま行くね」

翔子だった。

「あっ!! みんな、きてくれた」

トキコが叫んでいる。
トオルが森に引きかえしていく。
退散する。逃げていく。
あきらめの早いヤツ。
よかった。こんどこそ、リアルだ。
わたしたち、命をかけて戦っている。
どうして? だれのために?


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マニアル人間がおおすぎる/麻屋与志夫

2011-01-16 07:14:39 | Weblog
プログです。 
 
●日曜日の朝。この地方としては、初雪。静かだ。

●朝薄暗いうちに起きた。玄関をでて、雪の庭を楽しんだ。寒いのでバラの鉢は屋内にこんである。狭い庭が広く感じられる。大谷石の塀の上には5センチくらい雪が積もっていた。

●庭石の雪が融けだしていた。雪の下で庭石の色が濡れたためにきわだち、白と薄墨色の石の対比が面白い。

●自然はいいな。昔と少しも変わらない。雪は雪だ。石はあいかわらず寡黙なままの石である。


        

        

      まだ残っていた烏瓜の上に綿帽子をかぶせてくれた雪
        


●ところが人の世は変転極まりない。

●ある大型店でのことだった。ドラッグストアー。薬屋。とか、薬局とはいわないのですね。閉店の9時を少しすぎていた。お母さん風の、子育て中という雰囲気の女性が駈けこんできた。まだ店にはシャッターは下ろされていなかった。

●「子どもが風邪をひいたのです。お薬を……」
みなまで言わせず「閉店でレジをしめたから、ダメです」と店員が返事した。
「だって、病院はどこもやっていない。いつもの風邪だから、いつものクスリを飲ませれば……」「だめです。明日来てください」「そんな……」見守るわたしたちのまえには、広い店内に整然と薬がならんでいる。きらびやかに飾られている。

●わたしは、呆然としてしまった。マニアル通りの受け答えしか出来ない。そこには、もう人間らしい感情はない。クスリ棚が一瞬真っ暗になった。

●母親は泣きだしていた。わたしは知り合いの街の薬局を携帯でよびだした。まだこの街になれていないらしい女性に地図を描いてあげた。

●その小さな街の薬屋さんも、いまは大型店に圧されてやめてしまった。

●雪景色を見ながら、あのときの母親の涙を思い出した。

●人の世はうつりかわる。だが、マニアル通りの行動しか出来ない。マニアルで暗記した言葉しかはなせない。まったく人情に疎い。そんな人間ばかりになったら、恐怖ですよね。

●寒くなった。部屋にもどって、このブログを書きだした。

●カミサンはまだ起きださない。ひさしぶりに何の予定もない日曜日。ゆっくりと朝寝を楽しませてあげよう。

●起きたら二人で千手山公園に雪見に行こう。


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復讐はわたしの願い/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-15 09:48:56 | Weblog
22

森の奥からヴァンパイアが悠然とでてきた。
それが、ごくあたりまえであるかのように――。
青緑の皮膚が変色する。

だれがみても人。
どうみても。
どこからみても人。

「なぜ、われらの生存権を侵す」
「なにいっている。アンタラが人を狩るからでしょう」
「人の生き血を吸う。人を殺す。許せない」

百子につづいてトキコが吸血鬼を叱責する。
こいつら、どこかいままでのVとはちがう。
どこかで、会ったことがある。
短い間にすっかり成長した。テツだった。
ミイマが人工の血液で飢えをしのぐことを勧めた。
テツだ。
やはり。
テツは進化系だった。まったく人と変わりがない。
変形はみについた。
だが……。

「おれたちは、地下街を追われた。いまはこの森に生きている。血を吸うことは……おれたちの宿命。吸血を止めれば、おれたちは死ぬ。だから……邪魔すれば殺す」

吸血鬼からの宣戦布告だった。
吸血行為に従う。
そう決めたテツのことばだった。

宵闇色の恐怖のなかから現われたV。
太古からこの森に住んでいたかのような存在感。
闇の住人。
闇そのもの。

「あなたの仲間が……ヒカリを殺した。春を待っていた。それなのに、桜の開花もみずに散って行ったヒカリ。あれほど東京の桜をみることを楽しみにしていたのに。恋人のできることにあこがれていたのに」
「許せない」トキコがまたつづける。
 
百子は悲しかった。
わたしのために、わたしが力不足だから、散っていった。
仲間たち。
を。
おもった。
わたしたちの明るい未来のために。
ただそれだけのために、戦い、散っていったダチ。
明るい未来のために。
ただその達成を信じて……。

百子はうれしかつた。
散っていったヒカリやルイ。
そしてGGのためにも。
戦える。
こと。
が。
うれしかった。
そしてここには森がある。
自然がある。
アスファルトやコンクリートの街ではない。
自然の中でこそ忍びの技がものをいう。
樹木がある。木トンの術。
枯れ葉がある。木の葉がくれ。
土トン。木から木にとぶ、ムササビのわざ。
古い忍法は自然に守られていた。

だが、Vは集団となって森からわいてでる。
またなんにんかのメンバーがVの牙に、鉤爪に敗れた。
血を吸われた。
さいごの肉片まで。
咀嚼されている。
食われている。
ヤッラの胃袋に吸収された。


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ヒカル、初恋の花だよ/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-14 10:47:03 | Weblog
21

百子のレシーバに。

「いるわ。いるわ。ヴァンパイアが群れている」
「香世の声とどいている? 百子いまどのへんはしっているの」

こんどは美香の声だ。
よかった、赤毛のアメリカから来たVを倒したのだ。

「アイツとは引き分け。逃げられた。それより目黒の庭園美術館らしい風景。そこに吸血鬼がいる。香世のイメージに現われたの」

靴は警察で証拠品として押収したのだろう。
ヒカルの血らしい跡がのこっているだけだった。
ジョギングをしていた。
おそらく徒手空拳。
せめてなにか武器をもたせてやりたかった。
一矢報いたかったろう。
かわいそうなヒカル。
でも立派な最期。
相討ちだ。
街角公園のベンチはすぐわかった。
まだ人だかりがしていた。
百子たちはミイマの育てているバラの鉢から。
まだ咲いていたアイスバークを切り花してきた。

「ヒカル。初恋の花、アイスバークだよ。まだボーイフレンドもいなかった。厳しい修行にたえて、やっとクノイチ48の一員として上京できた。参加してくれたのに、ざんねんだよ。向こうでルイたち、散っていった仲間となかよく見守っていてよ。敵は、Vは、必ず倒してやるから……」

トキコたちもバラをベンチに供えている。
悲し過ぎて泣くにも泣けない。
悔し過ぎてこえもでない。
声なき声でおなじ想いをヒカルに伝えた。
さようなら。
ヒカル。

庭園美術館。

「入館はいましめきったところです。5:30分までです」

時間厳守なのだろう。受付のおばさんにガンとはねつけられた。
出口からはぞろぞろとひとびとが街にちっていく。
百子は仕方なく自衛隊の父に携帯した。

「こちらからも連絡入れようとしていたところだ。テレパスの隊員が二か所に反応した。一か所はGG刀エクササイズ。T能力を発信していたタジマ姉妹のことをいま確認したところだ。最高のサポーターだな。いや、百子のパートナーだ。そしてもうひとつがそこだ」

受付のおばさんは、自衛隊異能部隊長となのってもだめ。
ぜんぜん受け付けない。

「目黒署にれんらくする」

パトカーは直ぐにきた。
付近を巡行していたのだろう。
ぶっそうな事件があった後だ。

ようやく許可された。
警官と共にはいった庭園。
美術館へと通じる道。
庭園を照らすライトの光の中に大きなマントをひるがえしてVが現われた。
それもかなりの数だ。
百子たちだからこそ、かれらをVの群れと視認できた。
警官には閉園まじかなので出口へいそいでいるひとびとにしかみえていない。
Vの群れはこれから宵闇にまぎれて狩をする時間のだろう。

トワイライト。
人影が百子たちを取り囲んだ。
「なんだきさまら」警官が叫んだ。
陽光はなく、人工の明かりが、ともった。
庭園灯。庭をてらす灯りだった。
青緑の皮膚をした、樹木との保護色。
これがみえない。警官にはふつうの市民としてしか映らない。
首が飛んだ。
すいかした警官の首だ。

庭園はVに夜は占拠されていた。
それをしらずに警官は侵入したことになる。
ふたりのパトカーでかけつけてくれた警官。
またたくまに殺された。

百子の小太刀で斬り裂かれたV。
みるみる復元する。
回復力がビミョウにはやい。

「こいつら強いよ。ヒカルの敵だからね。こころして戦って」

百子の気合いがとぶ。

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