田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

Vバスターズ/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-28 23:57:16 | Weblog
9

 ついてこなかった。
 闇法師は美香の誘いを丁寧にことわった。

「Vの犠牲となったものを弔ってやる仕事が残っているから。病院に運ばれた仲間を見舞う、こともある」
 
 公園の雪はとけていた。
 雪のなかでは見えなかったものが、眼につく。
 白い発泡スチロールの容器だ。
 温かな天ぷらそばのはいっていた容器だ。
 ホームレスのオジサンたちが、よろこんでそばをすする音が。
 まだ美香の耳もとに……のこっている。
 
 現実は次の瞬間なにが起きるか。わからない。
 なにが起きても適切に対応できるように、心と技を磨いておく。
 但馬家の家訓だ。
 
 あの温かいソバに涙ぐんでいたオジサン達。
 何人かは亡くなっていしまった。
 あの少年たちもおおかたはもうこの世にはいない。
 心が痛む。
 なにがテレパスだ。
 予知はできても、敵を倒しても、救えない人がいた。
 悲しい。
 悲しいことだ。
 
 通り魔。
 防げない。
 ナイフをふりかざす異常者。
 後を絶たない。
 
 加害者は変質的男性。
 被害者はほとんど女性。
 無防備な女、子ども。

「許せないよね」

 と百子も美香に同調する。
 みんなそろって美香&香世の部屋に凱旋してきた。
 たしかに吸血鬼との戦いには勝利した。
 つかの間ではあるが勝利の雄叫びを上げた。
 だが悲しみがのこった。
 何人も死んでいる。
 
 でも、唯一の救い。
 クノイチ48のメンバーには負傷したものがいなかった。

「いつもわるいはね」

 アツシ少年。
 だいぶ慣れてきた――動作。
 折り畳み式の座卓にテンプラソバを並べていく。
 剣道場をかねている部屋。
 ソバからあがる湯気で霞みがかかったようだ。
 この狭い空間が美香のすべてだった。

「だからオネエは広場恐怖になったのよ」
 と香世が美香のことを自慢する。

「死ぬほど、5歳の誕生日からここで、修行したのよ」

 クノイチのメンバーも伊賀の山野での厳しい鍛錬にうちかった女の子だ。
 共通の体験がある。
 はなしに華が咲く。

「いい機会だからみなさんにれんらくしとくわ、いままでどおり吸血鬼にたいするセルフガードてきなパトロールはつづける。ただなにか、虚しくない。みんなバイトでかすかすの生活してる。そこでビジネス。Vバスターズ――仮名だけど。会社を起業しようとおもうの。どうかしら」
 
 百子からでた起業提案。
 みんな食べかけのソバをのみこむのもわすれて、ポカン。
 みんな啜りかけのつゆをあわてのみこんだ。そして、ぽかん。



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