田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

地下テンプルへようこそ2/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-24 12:31:03 | Weblog
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「兆子、なかはどうなっている」

 入口に残った百子からだ。

「この穴、フェイクだったみたい。でも掘り方がおかしいの。土遁の術で、おおぜいで逃走路を掘った感じがする」

 穴に潜り込んだのは兆子のほかに、但馬姉妹と翔子だ。

「わたしもアイツラのテンプルではない、と思う。引きかえしておいで」
「このさきに、なにかある」

 兆子の照らすハンドライトのさきに。
 香世がいうように。
 朽ち果てた棺桶があった。

「やだぁ。ここカタコンベ」
「香世。カタコンベってなによ」
「オネエ。地下墓地のことよ。ゲームなんかによくでてくる」
「わたし、ゲームやらないシ」
「美香、なにかはいっている」
「兆子、ミイラだ」
「なにか……みたことあるみたい」
「香世。それってどういうこと」

 美香のほうが質問する立場になっている。
 きょうの香世の能力はさえざえとしている。 
 でも――美香にも死者の声がきこえてきた。
 ミイラには胸に新しいと思われる傷跡があった。
 刀傷というより、鉤爪で突かれたような――。
 血。血。……血が飲みたい。……血が欲しい。 

「コレって彼……」
「わたしもそうおもうよ。オネエ」
 
 美香は死者の声に感応した。
 死者の欲しがっている血をあげる。
 わたしの血をあげる。
 指先を浮船で少し切った。

「オネエ。オネエ。いいの、そんなことして」
「この若侍は、体をはってわたしを守ってくれたのよ」

 ふたりが話す間にも鮮血がたらたらと――。
 ミイラの口に赤い血がしたたった。
 唇が動いた。
 喉が鳴った。
 肉がもりあがる。

「ありがとう。美香ちゃん。こんなに早く復活出来るとは期待していなかった」

 闇法師だった。

「ホームレスの仲間をヤンキーの吸血鬼から守らないと」

 急いで入口までもどった。
 だれもいない。
 サテュロスの像まで消えている。

「穴はいくつもわれら伊賀組の同心がほった」
「だから……土遁術と感じたのね。法師はわたしたちのご先祖様かぁ」
 兆子が感激している。
「無念だったが、薩長連合の鉄砲隊にはかなわなかった」
「それで彰義隊は全滅したのね?」
 兆子が悲しい眼で聞く。
「それより、急がないとホームレスがみんな噛まれて吸血鬼の従者にされてしまう」
 闇法師ははしりだした。

 いくつも同じ形の洞窟がある。

「きこえた? 香世、百子の声よ」
「そうです。百チャンの声よ。戦っている」

 みんなで、洞窟に跳びこんだ。
 広い。

「こんな大きな穴はほらなかった。こここそ、舶来吸血鬼の牙城だ」

「地下テンプルへ、ようこそ。ウェルカムね」

 マスター・エイドリアン率いるロックバンド。
 4人のメンバーもそろっていた。
 
 ホームレスのひとびとをかばって百子たちクノイチ48がいた。
 先ほどの、雪の上で戦場の再開だ。
 首からすでに血をながしているホームレスもいる。
 吸血鬼は食事中。
 その気配。
 その血の臭い。
 を。
 感知して。
 百子たちが駆けつけた。
 だから、犠牲者はまだあまりでていない。 
 


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