田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

玉藻と翔太の恋3  麻屋与志夫

2010-04-10 08:19:39 | Weblog
part13 玉藻と翔太の恋3 栃木芙蓉高校文芸部(小説)


文子の日記。 

庭をのぞこうと顔を寄せた窓ガラスは、ひんやりと春の宵を溜めていた。
庭では成仏できない浮遊霊が恨めしそうに漂っている。
青頭巾にでてくる大中寺の僧侶の犠牲者だ。
僧侶は成仏したのに彼らはこの地にとどまったまま毎晩迷い出てくる。
この家にしてもひたすらに空虚化し続け、
廃墟となるはずだったのだろう。
それを救ったのは玉藻さんの翔太さんへの愛、
うらやましいわ。
でも、まさかの居候。
わたしも愛する龍のそばにいられるなんて思わなかった。

「龍。何かおかしい」
浮遊霊が渦をまきだした。
巨大な渦を巻きながらトルネードのように移動する。
みかも山の方に去っていく。
むごたらしい死に顔の重なりあった渦。
恨みのうねり。
凶兆だ。
みかも山で何か起きている。
「帰りが遅いと心配していた。
この辺の地理に明るい玉藻さんがついているから……
とおもっていた。
でもちょっと遅すぎる」
 
「オス番長だ」
携帯からは知美の快活な声がした。
植木の声音を使っている。
「番長のようすは?」
「かわったほうがよさそうね」
龍之介のただならぬあわてように、
知美が敏感に反応した。
「番長!! みかも山に文子のバイクでむかっている。
なにかおきてるらしい。
Gと玉藻さんが遭難したのかも……」
「わかった。
副番以下、グループの全員を動員する。
でもそれは番長にしかできない制約がある。
引きうけてくれるか」
「番長は政治家になれるよ」
「いいんだな」
「こんな、ぼくでよかったら」
「謙遜なんか……らしくないぞ」

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コメント
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