田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

文子恋に死す2 麻屋与志夫

2010-04-30 01:47:27 | Weblog
part14 文子恋に死す2  栃木芙蓉高校文芸部(小説)


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凄惨な言葉になにもいえなかった。
それでも玉藻はおずおずといった。

「それほどまでにしてもらったら悪いわ」
「そんなことはない。
わたしは、玉藻さんをあのとき助けた気でいた。
でも、この土地から出られないように封印した。
それって……死ぬより辛いことがあったはずよ。
例えば、翔太さんを追いかけて上京できなかった。
ただこの土地で、
この家で待つだけしかできなかった。
さぞや辛かったことでしょうね」
「だからって文子さんがしようとしていることは、
あまりに犠牲が……おおきすぎる。
わたしはこれでいい。
翔太がこのまま死ぬようだったらわたしも死ぬ。
あまり長く生きすぎたからこの辺で死んでもいい。
さいごに翔太と暮らせてうれしかった。
生涯の幸せをこの短い日々の暮らしで味わった」
「いいえ、玉藻さんと翔太さんには、
これからも末長く生きていてもらいたい。
わたしは龍之介と人としての生活をまっとうする。
それでいいわね? 龍、それでいいわね」
「ああ、文子と同じ棺に横になる。
目覚めた時代でひととしての生涯を送るということだよな。
それでいいよ」

文子の下宿に隠してある棺はタイムマシンだ。
監察官文子はどこへでも神の思し召しのまま移動できる。
そう龍之介は文子から知らされていた。

「いつの時代でも文子と一緒なら、それでOKだ」


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