田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

玉藻と翔太の恋2  麻屋与志夫

2010-04-08 08:37:15 | Weblog
part13 玉藻と翔太の恋2  栃木芙蓉高校文芸部(小説)


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広々としたなだらかな傾斜にカタクリの花の群落があった。
「うわぁ、キレイ。夢にまでみた堅香子のお花畑」
華やいだ声で玉藻が詠嘆する。
カタクリの花の咲いていない場所をみつけてふたりはよこになった。

「カタクリの花に囲まれて幸せ。
いつかこういう日がくるとことを期待していた。
もうどこへもいかないよね……翔太」
「いくとしたら、
三途の川を渡って……地獄かな? 
吸血鬼とはいえ、あまりにおおくのものを殺し過ぎた」
「殺風景な話ししないで。
その話はあとでいくらでもきいてあげる。
このままの時間がいつまでも過ぎていくといいね。
はなればなれでいたからこれからはいつも一緒だから」
「死んだら、お九さんの棺にいれてくれるかな」
「ええどうぞ。バカいわないで。
なにか不吉な予感でもするの」
「ひとはあまり幸せすぎると、不安になる」

木漏れ日が翔太の顔にかかっていた。
「なに考えてるの」
「親が、
翔太なんて今風のわかわかしい名前をつけてくれたことに感謝していた。
これが嘉右衛門なんて古びたなまえだったらムードをこわす……」
「なにいってるの。
名前なんて人間につけられた符丁のようなものよ。翔太」
玉藻の顔に太陽がかかった。
「紫外線はお肌の敵なのよ」
ふたりは声をたてて笑った。
「愛してるよ、お九さん。
もう何処へもいかない」
「ずっと……一緒よ。
ああ……長生きしていてよかった」
ふたりはその玉藻の言葉の意味を考えてプッとふきだした。

お九さんのいう、長生きとはどれくらいの長さなのだろう。

でも、恋する者にとっては、
この瞬間も永遠に感じられる。
永遠も瞬間に思える。
時間はふたりの周囲でとまっている。

「こまりますよ。こんなところで寝ころばないでください」
公園の管理人の制服を着た女性に注意された。
玉藻が立ちあがった。

制服の女性が驚いて玉藻をみている。
「玉藻さま、玉藻さまでは? 
まちがいない。玉藻さまだわ」

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