episode15 どうして勉強するの
いますこしだ。
いまにはじまる。
秒読み開始。
5,4, ホラ、ホラ、ホラ。
Kクンがすっくとたちあがった。
席を離れて教室の中を歩きだした。
両腕を横にぶらぶふりながらモウロウトシタ視線を虚空に向けて……。
まるでそこに――。
何かいるみたい。
誰かいるみたい。
「Kクン。Kクン。席について。受験生なんだよ。みんな、真剣にいま勉強しているのだよ。さあ、席について勉強しょうね」
先生はやさしく、諭すようにはじめのころは言った。
だが、あの質問に応えられなくなってからは、もうなにも言わない。
「どうして進学するの。どうして勉強するの。勉強って何ですか。どうしてぼくは、ぼくなんですか。どうして、ぼくはここにいるのですか」
先生にはそのひとつとして、質問にこたえられなかった。
Kクンの「どうして」に解答するとはできなかった。
それからとうもの、Kクンのなすがままだ。
Kクンは教室の巡行がすむと席に戻りすやすやと眠りだした。
席に着いたとたんに睡眠におちいる。
みごとなものだ。
「おやすみ。Kクン。いい夢をみてな」
その街のごみ屋敷の住人。
廃校になった中学から拾ってきた黒板が山積するゴミのなかにある。
ちゃんと壁に固定されている。
なにやら、文字らしきものがチョークで書いてある。
「どうして、勉強するの……」
彼は仮想教室のなかにいる。
真剣に答えようとしている。
黒板の前で、なにも言えずにいる。
立ち往生。
そうして、今日も一日――。
根本的な問題について。
解答をもとめる生徒と対峙している。
生徒なんていないのに。
教室でもないのに。
彼はもう先生ではないのに。
腰が曲がっているのに。
まだKクンの唐突な発問に応じられないでいる。
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だが、あの質問に応えられなくなってからは、もうなにも言わない。
「どうして進学するの。どうして勉強するの。勉強って何ですか。どうしてぼくは、ぼくなんですか。どうして、ぼくはここにいるのですか」
先生にはそのひとつとして、質問にこたえられなかった。
Kクンの「どうして」に解答するとはできなかった。
それからとうもの、Kクンのなすがままだ。
Kクンは教室の巡行がすむと席に戻りすやすやと眠りだした。
席に着いたとたんに睡眠におちいる。
みごとなものだ。
「おやすみ。Kクン。いい夢をみてな」
その街のごみ屋敷の住人。
廃校になった中学から拾ってきた黒板が山積するゴミのなかにある。
ちゃんと壁に固定されている。
なにやら、文字らしきものがチョークで書いてある。
「どうして、勉強するの……」
彼は仮想教室のなかにいる。
真剣に答えようとしている。
黒板の前で、なにも言えずにいる。
立ち往生。
そうして、今日も一日――。
根本的な問題について。
解答をもとめる生徒と対峙している。
生徒なんていないのに。
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私はいまだにはっきり答えられずにいます。
自分のためだとか、いい高校に入って、それからいい大学に、と言えないこともないのですが・・・・・・。
何か、ためらってしまいます。
これではいけないのでしょうね。
Kくんの未来が、脳裏に、はっきり思い浮かべられる先生になりたい、と思います。
教師なんてなんと因果仕事なのだろううとおもいます。懸命に励ましているのに生徒は侮辱されたおもってしまう。相手が子供ですから答えるのがむずかしいですよね。悩みはつきません。