田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

裏鹿沼(8)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-24 20:42:49 | Weblog
8

「あれっ!? 麻耶先生。ごぶさたしています」
春日部で乗りこんできたのだろう。
教え子の星公くんだった。
隣の指定席にすわった。
「こんなハプニングがあるんですね」
といまは人権派の弁護士となっている。
こわもての男がこの偶然の出会いに驚いていた。
翔太郎は驚かなかった。
近い将来また星弁護士には会うことになる。
能力が再覚醒したいまいろいろなものを引寄せているのだ。
わたしが磁場を形成している。
敵もくるが。
味方も集まってくる。

孫の美智子には幸せになってもらいたい。
ようやく女優業に復帰した。
その第一作で主演女優賞に輝いたのだ。
おもいっきり、好きな道を歩ませてやりたい。
そのためなら、どんなことでもしてやりたい。
そのためなら、どんな敵とも戦う覚悟だ。

ふいにイメージが麻耶の目前にうかぶ。
美智子が記者会見をひらいている。
グラスに手をのばす。「飲むな」麻耶には水は黒く見えた。
水を吐きだす。美智子。
こんなに鮮明に美智子のイメージが浮かんだことはない。
やはりオニガミの攻撃がはじまったのだ。
これはまだ脅しだ。
いまのうちに公の場で活動することを中止することを。
警告しているのだ。
いつでも、美智子の命はうばえるのだから。
という警鐘をならしているのだ。
オニガミが動きだしたのだ。
敵もまた、麻耶が目覚めたのを察知した。
いや、麻耶が目覚めるだろうことを、前もってしっていた。
手ごわい、あいてだ。
震えていた。
麻耶は震えていた。
武者震いだ。
なんとかして、心を落ちかせようとした。
震えはやまなかった。

暖房のきいた車中なのに。
麻耶は年甲斐もなく。
震えつづけていた。
「先生、どうかしましたか」
星が額に汗をふきだしている麻耶をいぶかった。
あいつらの攻撃が再開していたのだ。
おれははなんてバカだ。
もっと早くきづくべきだった。

「いや、だいじょうぶだ。暖房がききすぎている」

智子が万引き呼ばわりされた。
あの時、はっきりと気づかなければいけなかったのだ。
オニガミにのっとられた人格のひとがふえている。
どうしてわからなかったのだ。
もう、やつらの攻撃はないと安心していた。
油断していた。

なにがオニガミの関心をひきつけたのか。
なにがオニガミを怒らせてしまったのか。
麻耶にはわからなかった。

暖房が確かにききすぎている。
翔太郎は汗をかいた体で考えていた。
こんどは、星君が味方になってくれる。
彼とは近いうちに会うことになる。


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