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田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

最終章 イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-20 08:30:02 | Weblog
9

「翔太」
「なんだよ」

ボクはミュウと話していた。
ミユの鳴き声をきく。
ミュウの心がよくわかる。
ことばが理解できる。
ボイスチェンジャーをつけているみたいだ。

「わたしをひろってくれて、ありがとう」
「ボクこそミュウとであえてうれしかった。神沼でのたったひとつのたのしい思い出なんだから……」
「わがはい猫である。名前はムック」
ムックも喉のあたりから血をながしていた。
猫の死骸。
チョウたくさんの猫が死んでいる。

ミュのよびかけに応じて集まってきた猫たちだ。
みんな死んでいる。

ミュウもムックもその仲間入りすることはわかっている。
これだけの裂き傷をうけてよくいままで戦ってくれた。
いままで跳び跳ねて人狼と戦っていたなんてウソみたいだ。

ムックがきどっている。
ぼくの悲しみをやわらげようとしているのだ。
けなげなやつだ。 

「これいちど、やりたかったんだ。わがはいは猫である」

そして、目を閉じだ。

ミュウがムックをぺろぺろなめていたが、やがてそれも出来なくなった。
ムックの背に頭をのせたまま動かなくなった。

「また……かわいそうな捨て猫をひろってあげて、翔太。オネガイ」

ミュウとの別れだった。
雄の黒猫がミュウをペロペロなめている。
かなしみをこめてなめている。

その目には涙がある。
涙をこぼしているよう見える。

ムックが死んだ。
ミュウも死んだ。      

狼と戦って死んだ。

勝てるはずのない人狼と戦いでおおくの猫が死んだ。

ぼくは、庭の隅に猫の墓をたてよう。
ミュウとムックの墓を、2匹の愛する猫を埋めてやる。
戦没した名もない猫たちの墓も作るのだ。

寒がりのミュウはぼくの服でくるんでやる。
いつまでもいっしょだ。

翔太は泣いていた。
泣きながら2匹をだきかかえると、父の待つ4駆動にちかよっていった。

「キャツ。ありがとう。みんな、みんなりっぱだったよ。ありがとう」

10

誠は必死で携帯をうちつづけていた。

「はい」
やっと妻がでた。
「美智子、なにかかわったことないか」
「そっちは大変ね、北小が燃えているわ。テレビでやってる」
「こっちはだいじょうぶだ。それより警戒するんだ……」
「ちょっとまって、こんな朝早くから宅急便かしら」
「でるな!!」
ピンポンとかすかなインターホンの音。
「でるな。だめだ」

勝平が血だらけの体で寄ってきた。
「どうした。誠、なにかあったのか」
かすかに東京のマンションで妻とふたりの娘たちがあげた悲鳴がきこえた。
それっきり携帯は切られてしまった。
なんど呼び出しても、こんどはつながらない。

「井波のやつが動きだしたのだ」
「おとうさんは? どうする」  
「心配するな。小野崎さんがいる」
小野崎がうなずく。  

「まかせてくれ」
「小野崎なにか話があったのだろう」
「ぼくは離婚した。そのことはあとではなす。誠はやく東京へもどれ」と小野崎。

勝平は思う。
おれは元気になったらここに住みつこう。
どうしてそのことに気づかずにいたのだ。
このを再生してみせる。                          
勝平はわかわかしい夢を見ていた。

おさない並子がの奥から走ってくる。
                      
                       完


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