田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

好きな言葉なので「万物流転」とまた、書いてしまった。 麻屋与志夫

2018-03-18 22:07:39 | ブログ
3月18日 Sun.

●前回のブログで、万物流転なんていう大きな言葉をつかってしまった。
万物流転(ばんぶつるてん)とはヘラクレイトスによって提唱された哲学の概念。ヘラクレイトスはこのような万物流転を「誰も同じ川に二度入ることはできない」という言葉で表現した。――Wikipediaより。

●出来るだけ大きな言葉は文章を書くときには使わないようにしている。全てのモノは移り変わるものだ。くらいの表現でも事足りる。それなのにどうして万物流転などと書いてしまうのか。それはわたしが昭和一ケタ生まれのGGだからだろう。漢文調の表現がすきなのだ。漢文調のひびきがすきなのだ。歳だけは内田さんより上だ。

●文学を志し、小説を書きだした時には確かに〈同じ川〉の流れにいたのだが、歳月の流れとともに、才能の如何により、到達する場所がちがってしまう。

●悲しいことだが、運命というにはあまりに残酷な結果となって、いまここに在るGGを嘲笑っている。

●もうひとつのこの大きな言葉を使った理由は、GGがこの言葉がたまらなく好きだということだ。

●ある文学賞に応募してある作品の出だしにも使っている考え方だ。どうせこの作品もトホホノホで落選するだろうから、冒頭だけここに載せてみますね。


   方舟の街 死可沼吸血鬼譚
                                  麻屋与志夫

……神はその光とやみとを分けられた。神は光を昼と名づけ、やみを夜となづけた。
                           創世記 第一章 四節―五節

1「アサヤ塾」のオッチャン先生、御成橋でペチャカバンの少女に会うこと。
 
うなだれて……死可沼市の中央を流れる黒川に架かる御成橋の欄干にもたれ、川面を見ているアサヤに、心配顔の女の子が声をかけた。
「オッチャン。ナニミテルノ」
 中学二年生くらい。この橋を渡って先の死可沼北中学の生徒だろう。スカートのベルトのあたりをまきこんで丈を短く、ミニだよ、という感じにしている。ミニスカート? から生足がスッキリとのびている。スーパーモデルも真っ青の脚線美をしている。制服の袖はまくりあげ、ボインちゃんなのにペチャカバン。
「もしかして、飛びこもうかなと……」
「それは、ない、ない。女の子のデカパイに見とれるくらいだから……それはない」
「それって、あたしのこと、ナンパしてるの」
「バカな。ロリコン趣味はない」
「なによ、それって」
「だから、少女に誘われても困ってしまってニャンニャンニャニャン」
「おもしろい、オッチャンじゃんか」
 川面を見ながら考えていたことを口ずさむ。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人と栖とまたかくのごとし。たましきの都のうちに棟を並べ、甍を争える高き賎しき人の住まひは、世々を経て尽きせぬものなれど、これをまことかと尋ねれば、昔ありし家は稀なり。」
「方丈記ジャン」
「すごい、きみなんていうの……?」
「それってヤッパ、ナンパっぽいよ」
「紫は灰さすものぞ 海石榴市(つ ば き ち )の八十(やそ  )の衢に(ちまた )逢へる児(こ )や誰(たれ)」――名前なんていうの? とアサヤが万葉集を朗唱してもういちど訊く。
 ところが、おどろいたことに――。
「カルイ。カルイ。万葉集。3102。たらちねの母が呼ぶ名を申さ(まを  )めど 道行く人(びと)を誰と知りてか」――お母さんが、わたしを呼ぶ名を教えてもいいけど。あなたのほうから、名のってよ。とペチャカバンが同じく万葉集の歌でカエス。見事な応答だ。
 万葉集で問いかけられては、こちらから名のらなければならない。
「手前、生国とはっしまするは関東です、関東、かんとう、といってもいささか広うござんす。北に男体、南に筑波 金波銀波の流れも清き、死可沼は黒川で湯あみした姓は麻屋、名は与志夫でござんす」
 アナクロな名のりにおどろいて。
「ござんす、でも、ございますでもいいけどさ、オッチャンこっちだいじょうぶ。だいぶユルンデいるみたい」
 頭のところで、定番のジェスチヤーでくるくると指を2度まわす。二重マルをもらった児童のようにアサヤが、ニッと唇をゆるめる。
「でもさ、オッチャン、タダモノデナイネ」
「おれは、アサヤ塾の塾頭、麻屋与志夫である」
「なに「男塾」の江田島平八郎をキドッテルノヨ。そのギャグ古すぎ。塾の頭ってことは、アタマモいいのね」 
「まだまだやってるアサヤ塾。やめてられないアサヤ塾。だって、やめたらクッテいけないんだもん。むかしの名前でやってます」
「ああ、お母さんから聞いている。死可沼の都市伝説となっている塾だ。ほんとにまだやってるの」
「そういうこと、だからここから飛びこむなんてことないから安心して――」
「生徒いるの? 何人いる」
「いない。七人しかいない」
「ソレッテヤバイジヤン。食っていけるの?」
「ダメダネ。ぜんぜんダメ」
「じゃ、やっぱ、ヤバイことかんがえていたのね」
「だからそれはナイッウノ」
 この年頃の女の子と話していると、なんだかこちらがおかしくなる。
ついつい彼女の音声とシンクロしてしまう。会話が混線して、ことばが乱れる。

●次に前半の見せ場を載せたくなりました。


21 死可沼火葬場
 
〈家族葬〉だからというので、通夜の時刻は公にされなかった。それに学生たちは夜遅くなるからということで出席は制限された。ごくごく身内だけでとりおこなわれた。そのためもあって、レディースはお通夜と告別式の出席を拒まれた。だから、火葬場にミホの仲間が集まるという情報が流れた。ミホとの最後の別れをレディースが火葬場でする。絶好の取材チャンスではないか。
啓介は火葬場にかけつけた。ほかのプレスの仲間はすでに集まっていた。
火葬場にハイエナのマスコミ関係者が群れをなしていた。
このような猟奇殺人は、死可沼では、はじめてだった。
ミホチャン殺人事件は異常過ぎる。
ミホの先輩なのだろう。
ポニーテールや、ツインテールのU二十の女の子が火葬場には集結していた。サンタマリア・レディースを卒業していった仲間だ。もちろん、礼子もいた。集結と感じたのはバイクで来ている子が多いからだ。
「ミホはサンタマリアのレディースだったんだって」
顔見知りの東都新聞、宇都宮支局の倉持が近寄ってきた。
「啓介さん。なんですかソノ包帯は……。バイクでころびましたか」
「おれのことなんか取材しなくていい。それよりこの会葬者からなにか聞き出すのが、さきじゃないか」
「おくれてきて、なにいつてるんですか。もう皆、そんなことはすませていますよ」
「なにか新しいネタはあったか。内臓がぬかれていた理由は……」
「じぶんの耳と口でたしかめてみたら」
 アマチュアみたいなこというなという顔で倉持は会葬者のなかにまぎれた。
 骨になったミホが焼却炉からひきだされた。
ミホは白い骨の形だけになつていた。ミホの家は、母子家庭で、旦那寺がない。金もない。お坊さんのお経もあげてもらえない。マヤが消災陀羅にをあげた。あちらにいっても、災害にあわないようにという願いをこめた。短い間の塾生だった。あのときどきみせた恥じらうような笑顔が忘れられない。
さすがレディース。
涙をいっぱいに浮かべていた。
泣き声をあげるものはいなかった。
焼き上がった真白な骨。
「焼入れだよ」
リーダーのヒロコは悲痛な声。
気合いをこめて小さく叫ぶ。
「押忍」
「おす」
「オス」
異口同音。
レディースの面々が応える。
まだ熱い骨。
白い骨。
彼女たちは素手でとりあげた。
肉の焦げる匂いがした。
じぶんたちの体に、焼きを入いれることで、深くミホの死をキザミこむ。
その異様な行動に学校の先生は、極端な嫌悪感をあらわした。
彼女たちは最後の一人になるまで、ミホの骨を手でひろった。
彼女たちに残してくれたミホの想いでの形身。
きつく口をむすんで、無言で骨をひろった。
「ミホ。あんたの骨はあたいたちが確かにひろったからね。仇は討つ。それがどんなあいてでも、命を賭けて、かならず倒す」
墓地も仏壇もない。
ミホの想いでは、彼女たちが共有する。
いつも、ミホの骨を身につけている。
それでいいではないか。
 残りの骨は親族の手で箸で拾われ骨壷に納められた。
 二人一組二膳の箸で親族が骨を拾う。だが身内も知人も少ないのですぐにおわった。
「ミホさんを殺されて、いまどんな気持ちですか」
ヒロコに栃木テレビのマイクがつきつけられた。
サンタマリア・レディースのリーダ―・ヒロコは沈黙。
「親友に死なれた感想を一言どうぞ」
サブリーダのユカは無言。
コメントを求めた東都新聞の倉持を見ずに、マイクをネメツケテいる。
「みなさん。レディースの仲間ですよね。なにか、いいたいことはありませんか」
キララにマロニエ誌の記者が話しかけた。
「一言でいいですから」
「ねえよ」
キララが悲痛な声で一言応えた。
心臓がはりさけそうな苦痛。
悲しみ。
憤りがマグマのように吹きだしそうなのを耐えている。
わからないのか! 
わからないのか!
この激情を押さえるためのダンマリなのに――。
わかってよ、プレスのおじさんたち! 
メンバーの全員が、ミホの熱い骨を胸にだきしめて耐えている。
うつむいて、下唇を噛みしめ、血がにじんでいる。
一斉にバイクのエンジン音がひびいた。
このとき、会葬者の中から甲高い声がひびいた。
「骨なんかどうする気。返しなさいよ。あんたらがミホを殺したのよ。あんたらの仲間にはいらなければミホは死なずにすんだのよ」
 ヒロコの胸倉をつかんでいるのはミホの母親。大工の女房だっただけに、気が荒い。
 ヒロコは心を石のようにして耐えた。
ミホのお母さんだ。
逆らうわけにはいかない。
悲しみのためにこわれている母親になにをいってもとりあってはもらえない。
だまって頭を下げて、その場をあとにした。
「逃げるの。逃げるの」
 ミホの母親はまだ泣き声だった。
 母親の嘆きと苦悩の深さを思うと、会葬者たちは顔をふせて、うつむくことしかできなかった。
「イクワヨ」
 ヒロコが気合いをいれて叫ぶ。
「おーす」
「押忍」
「オース」
 レディースの面々の気勢が唱和した。
 バイクの一団が春の街に散っていった。
コメントを取れず記者たちは茫然としている。
「中学生がレディースかよ。バイクが許されているのか、この街では」
コメントをとれなかった腹いせを行政にブチッケテいる。
 ヒロコのポッケでミホの骨が熱い。
 ユカのポッケでミホの骨が布地を焼いている。
 キララのポッケでミホの骨が燃えている。
 
 アイドリングしてヒロコを待っていたバイクが一斉にスタートした。
 
レディースの仲間は唇を噛み復讐をこころでちかっている。
アタイたちのマブダチを殺したのは誰だ。
誰であれ、見つけだす。
こんなせまい死可沼だ。
この街に、犯人はいる。
まちがいなく、いる。
ナガシの犯行であるわけがない。
ミホをヤッタ犯人はこの街で息をしている。
潜んでいる。
いちばん、うたがわしいのはV男だ。
吸血鬼だ。
この街に、キュウケツキがいる。
なんてこと、世の常識の代弁者。
プレスのひとや、サツカンに訴えても、バカにされるだけだ。
だから、なにもいえない。
いいたいことは、かずかずあるが、いえない。
復讐はわたしたちにゆだねられている。
犯人をあぶりだし、逃げたら地の果てまでも追いかける。
おいつめてトドメをさす。
レディースはパイプの先を斜めにカットした。
そして磨いた。
いままでのほかのグループとの乱闘なんてお遊びだった。
必殺の決意だ。
エンジンの咆哮も高らかに――。
レディースはモノウイ春の街に二人一組で散っていった。

●テーマは教師による、セクハラです。かなり自信があるのですが――。どうなるでしょうね。発表は今月末です。




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