田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

鬼沢組(6)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-29 04:18:42 | Weblog
6

「じぶんは、マヤ塾の卒業生です。
鹿沼の出なので呼び出されました。
なにか先生の身にあったのですか」
「いまのところは、なんともいえない。
ただだれかが家の中にはいりこんでいる。
ヘリの降りられる場所はありますか」
隼人はキリコのヘリの着地場所を配慮している。
「塾の横に広い駐車場があります」

「だめよ。
燃えてる。
煙で視界がきかない。
燃えてるのは、たぶんマヤ塾だわ」
キリコのほうから連絡がくる。
「隼人!!あとどのくらい?」
「もうすぐ着く」
「いそいでね。
炎の上がっているすぐそばに野球場がある」
キリコが焦っている。
急かせる。
ただごとではない。

「いそいで。隼人のほうがさきにつける」
「御殿山球場だったら着陸するのには危険はありません」
「それより塾が燃えてるらしい」と隼人は阿久津にいう。
「あれですね。方角がまさに塾のあるところです」

二人にも黒煙が見えてきた。
覆面パトカーは街の東側の台地にたどりついた。
町の中央に火の手があがっている。
まだ、それほど燃え上がっていない。
車はスピードをあげてJR鹿沼駅前の道を下る。
橋をわたった。
駐車場に人が群れていた。
騒いでいる。
楽しそうに火事見物をしている。
隼人は人垣をおしわけた。
「なにするんだよ。畜生」
すさまじい怒号をあびせられた。
彼らが吐く息が黒い。
粘つくような声が隼人にからんでくる。
挑発しているのだ。
なんという群衆だ。
人の災いをたのしんでいる。
すきがあれば暴力をふるう。
オニガミの影響をうけている。
狂気を目にやどしている。
隼人は相手にせず、さらに前にでた。
まだ燃え上がったばかりらしい。
教室の窓から火が外に向かって炎の舌を見せていた。


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