田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

紅子、ほんとに裏切り者なの? /さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-23 06:45:23 | Weblog
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百人町。
『シナそば屋』にできた行列の人がギョッと顔を上げた。
迷彩服の自衛官が、整然と小走りに、路地を駆けぬけていく。
驚きながらも、彼らは素早く店のガラス戸に背をおしつけた。
なれている。動乱の地かこの日本に出稼ぎにきている。

「ロケだね。この日本治安いい。デモとかテロ、ちがうね」

みんながうなづいた。
だれもが、冷笑を浮かべた。
平和ボケの経済大国に――。

路地を通りぬけていった迷彩服。
迷彩服の色がほとんど黒。
『ninjya』の装束に似ていた。
百子の父が指揮する百々異能部隊だとは、だれもしらなかった。

だれも予知できなかった。
それから数分後。
またガラス戸に背をおしつけるとは――。
ゴウゴウ。
ドドドドット。
クノイチ48。
アキバ系の美少女がバイクで通過するとは――。

同じころ。
日名子が投身したあのビルの外壁面にヘバリツイタ外人。
勝則のVセクションのチームだ。
翔子と純がいる。

「百子たちもあの紅子たちのルーマニヤ協会の付近に忍んでいるはずよね」
「翔子。紅子に裏切られるとはおもわなかったのか。あいては吸血鬼のホンバモンだ」
「いまでも、信じられない。紅子が中近東のテロ組織のメンバーだなんて。そんなこと、信じられないよ」

翔子の視線の先には通りの向こう側。
『在京ルーマニヤ人協会』の瓦屋根がみえている。

勝則が携帯で時刻をみていた。
「GO」サインをだした。
一緒に突入することは許されていなかった。
銃器による戦闘になることを恐れての父の配慮だった。

翔子は衝動的に紅子の家のほうに走りだしていた。

紅子の悲鳴をきいた。
紅子の呼ぶこえがきこえた。
そう聴覚がしらせている。
共に闘ってきた紅子。
なんども危ないところを助けてくれた。紅子。
紅子がわたしを裏切るわけがない。
わたしは紅子を信じる。
信じている。

「翔子! ぼくもいく」
恋人どうしだ。
止められると翔子はおもった。
でも、純はわたしの気持ちを瞬時に悟ったみたい。
恋人どうしだ。
わたしのこころが理解できたのだ。
悟るとかる
理解する。
そんなものではない。
わたしたちのこころは、通底している。
通いあっている。
ふたりで一つのこころ。
一心同体。

ロマンチック。


 
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